フェルディナンド1世(Bust mic)とその収集のポイント
個人的に2番目に好きなルーマニアの普通切手が、1920年から1928年頃にかけて使用されたフェルディナンド1世(Bust mic)です。ミディアム・ヘッドなどと呼ばれるフェルディナンド1世の肖像をデザインにした切手です。数え方にもよりますが、実に23種の切手(メインナンバー、切手カタログの大分類上の種類)が約7年のあいだに発行されました。
書状15Bani時代(1920年)発行の5Leu Green
実に書状33通分の高額面切手だった
戦後の混乱期に使用されたBust mareに比べると、切手の残存数が多くなりますが、それでも平時に製造された切手だけに、変化がやや乏しく、バランスのとれたコレクションを形成するには、それなりの年月と手間暇をかけなくてはなりません。
当初はラージ・ヘッド(Bust mare)と同じ時代から併存して、1923年頃からもっぱらこの切手だけになりました。1927年7月にフェルディナンド1世が崩御したのち、孫のミハイ1世(1921-2007年・在位1927-1930, 1940-1947年)の切手に代わりました。
わずか6歳で国王となったミハイ1世(1928年)
切手用紙の分類
Bust mareと比べて紙の品質に大きな差はなくなり、カタログ上では白紙と呼ばれる紙が使用されています。しかし、もう少し細分類すると、白紙の中にもクリームがかった紙があり、自分ではYellowish Paperとして区別しています。
上が25Bani Brownの白紙、下2枚が白紙(Yellowish Paper)
また、白紙の中には、無地紙と縞紙(横縞・縦縞)があります。縞紙はあまり特徴が明瞭ではないのですが、夜に白色系の蛍光灯の下でみると、「菱型状の模様」を観察することができます。横に波打っているようにみえば横縞、縦であれば縦縞と呼んでいます。
ざらざらして見える横縞が観察できる6Lei Carmneの一例
目打の分類
フェルディナンド1世(Bust mic)には、13,5(A)、11.5(B)、11.5-13.5(C)、13.5-11.5(D)、13.5-14(K)の5種の目打があります。
「A,B,C,D,K」という目打の分類は、ルーマニア切手収集上の慣例であり、国際的に通用するルールではありません。もっとも珍しい目打は(C)で、他の目打の切手の10倍あるいはそれ以上の価値があります。Bust micの場合だと、(B)が珍しい額面も多いです。もっとありふれているのは、(A)と(K)です。
50Baniの11.5-13.5(C)珍目打。横の目打が粗く、縦に細かい。
額面の数字による分類
フェルディナンド1世(Bust mic)の場合、額面を示すボード(タブレット)の部分の書体が異なるタイプがあります。もっと細かく分類する研究者もいますが、1シート内に1~2枚程度しか存在しないものも独立して別のものと扱っている例もあるため、筆者自身は下記の分類がもっとも合理的ではないかと考えています。
3Lei BrownとSalmonの中には、タイプ1とタイプ2が同一シート上に存在した例がわずかに存在します。これはフェルディナンド1世のシリーズを収集する上で、急所ともいえるアイテムです。ここには、タイプ1とタイプ2が併存していますが、目が慣れてくるとすぐにわかります。(タイプ1が9枚、タイプ2が3枚あります)
もっとも高価な切手
6Lei Carmine
1924年から1926年にかけて少量発行されたのが6Lei Carmineで、メインナンバー上はもっとも珍しい切手となっています。もともと外国宛郵便はがき用に発行されたのですが、短期間で6Lei Oliveに代わってしまいました。フェルディナンド1世はBust mareとBust micを合わせて35種ありますが、圧倒的な少なさで、35種セットを組むときにいつも苦労させられます。
2Lei Wine Red
マイナーな分類ではありますが、2Lei Redの中に紫味を帯びた変種がごくわずかに存在します。一般にWine Redと呼ばれ、ルーマニアの専門切手カタログのほか、フランスのイベールカタログに採録されています。2003年以来、このWine Redを入手する機会に恵まれたのは、わずか3回です。入手の機会自体めったにないので、みつけたら、ぜひものにしたいところです。
ちなみに、下が通常の2Lei Redです。
もっともありふれた切手
50Bani Orange
1922年に国内郵便はがき用の切手として発行されてから、実に3つの額面の数字の変遷をたどりながら、概ね1929年頃まで使用された切手です。両大戦間の時代のルーマニアの切手としては7年間でもかなり長寿な切手といえるでしょう。この切手がもっとも多く、次いで国内書状用の1Leu Purpleが多く残されています。
これらのありふれた切手をどのようにこだわりをもってアレンジするかが、ルーマニア切手収集家としての腕の見せどころでもあります。
ここまでが、すべての色や額面の切手に共通して言える部分です。これから個々の種類の切手について、詳しくご紹介していくことにしたいと思います。
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