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蝉の羽化を見る

 初めて羽化をしている蝉を見た。

 こんなに近づいても微動だにしない蝉は見たことがない。蝉とは騒がしいか動き回っているかどちらかの生き物だと思っていた。
 流石にこの状態では動けないと言うことだった。この後飛べるようになるまでに数時間かかるという。その頃までには体も乾き、お馴染みの茶色いボディになるという。

 静かなる蝉を見ながら思った。

 海老っぽい。


 目のあたりと、胸の前の足にスポットが当たり、そこから海老が連想されてしまった。羽が有るか無いかなんて些事である。一瞬にして海老を思い出してしまった。
 茶色一色の姿からは絶対に結びつかない別の生き物が、淡い色となった途端、自分の中で同類項としてまとめ上げられてしまった。

 他に緑色で綺麗な虫はたくさんいるけれど、思い出されたのはなぜか海老であった。カゲロウとか、そういう美しい緑系グラデーションの虫を思い出さなかったわけでは無い。やっぱりつぶらな瞳の破壊力ということだろうか。

 格好が似ていて、無脊椎。生き物としてなんだか近そうだ。ということは蝉って美味しいのだろうか。きっと体はタンパク質でできているだろう。蝉の抜け殻は漢方薬になると聞いたことがあるし、食べられないわけでは無いのかもしれない。

 調べたら、蝉は美味しいらしい。

 たくさんある蝉の抜け殻をお皿に盛っておいたら何かの料理に見えるんじゃないかと思えてきた。

 だからといって食べる勇気はない。

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