母の贈り物
実家を出たが、一人暮らしの部屋のカーテンを買うことができない。
思いついたように母が送ってきた何の役にも立たないガラクタの中に腐るほどの手拭いと大きめのスカーフが入っていたからそれを吊るして日を遮ることにした。
そういう作業は不器用で苦手だから隙間ができて、そこから漏れる日にイライラした。でも、直す気も直せる気もしないから放っておいた。一年経つと布はどれも色褪せて模様が分からなくなってせいせいした。
不器用さは仕事にも人間関係にも発揮されて、なかなか長く勤めることもできないし、友達もできなかった。
やっと友達を部屋に呼んだけれど、こちらが飲み過ぎてしまって大喧嘩になった。
友達が出て行ってから考えた。毎日飲んでいるけれど、もうアルコールが効く気がしない。さっきのだって酔ってしまえばあんなにはならなかった気がする。ただ気分が悪くなるからああなった。
でも、飲まずにはやっていられない。
これがずっと続くなら死んだほうがいい。
死のう。今すぐ死のう。
窓のスカーフを外して天井から出ているコードに結びつけ、ローテーブルの上に立ってスカーフの端を首に巻きつけ、ローテーブルを蹴った。
次の瞬間、頭をがんっ、とぶつけた。痛すぎてのたうち回った。起き上がってみると、首に巻きつけたスカーフが劣化して千切れていた。
「ふざけんな! 何の役にも立たねえクソが!」と罵って机をバンバン叩きながら泣いた。
scarf/スカーフ