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026_琅玕
時間調整を駅でしていると偶然Kと会った。
ちょうど実家から帰ってきたところで、
今朝、海を歩いていたら翡翠を拾ったのだと。
実家近くの海岸は翡翠海岸とも言われていて、
観光客や地元の人たちで賑わっているらしい。
特に大雨の翌日は川から大量の礫が海に流入するので
早朝から海岸に人が集まるそうだ。
深く、透き通るグリーン、艶やかな光沢。
冷たい石、とろみのある緑。
ここまで良質なものは初めて拾った、
本当にラッキーだった。
乳白色との対比が綺麗だ。
油膜のように光るのは希少で
深海のような濃い緑。
そこまで言うのならと、それを見せてもらう。
大事そうにリュックから出されたのは
手のひらサイズの石だ。
ただの石。
言っているような翡翠には到底見えない。
むしろ線路に敷かれているような粗雑な石に見える。
え、と顔を見あげるが、
変わらずぶつぶつ喋っている。
Kってこんな顔だっただろうか。
この男は誰だろう。
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