1/31 5年ぶりに髪を切った日

気づいたらどこにも何も文章を書かないまま、何か月も過ぎてる気がするな。

ここ最近は何にともなく「追われる」生活をしていて、ただ生きるだけでいのちのMPみたいなものがガツガツ削られているような、一升瓶ひと瓶分を飲んでも0.1しか回復しないポーションを惰性でラッパ飲みし続けるような、そんな感覚で暮らしていた気がする。
まあ年が明けて一ヶ月経って、一番ダメな期間を抜けたような気も、するといえばする。でもその感覚がすっかりなくなったと言うにはいまひとつ足りないかな、という感じ。

これが世の大人たちが言う、「年を取ると全回復ってしなくなっちゃうんだよね~」なのだとしたら、恐ろしすぎるな。それではないと思いたいな、どっちかというと大学生の頃の「俺ってこのまま社会人になっちまっていいんだろうか」の感覚の延長に近いというか。いやそれはそれで問題があるといえばあるけど。

もどかしいな、人生。まあしかたねえか、人間一周目だしな。受け入れて生きていこう。



長いこと切っていなかった髪を、このたびばっさりいった。
長さにして実に75センチ。

自分はどちらかというと髪が長い期間の方がたくさんある生き方をしていた。
理由もこだわりも特にないけど、強いて言うならとことん不精な性格をしているということに全てが詰まっていると思う。

パーマを当てたことはあるけどカラーリングは一切していない(パーマは巻かなければ自然と落ちてまたいつも通りにもどるだけだけど、髪を一度染めると染めた髪と新しく生まれた髪の境目が決定的に生まれてしまって遅かれ早かれ定期的に染めの必要に迫られるから)ということしかり、ロングの期間が長い(というより一回切ったら次に行ったとき「次の長さはどうしますか?まだ伸ばす、それともどこをどのくらい、どんなふうに切る?」の設定を話し合うのが面倒で年単位で足が遠のき、次行く頃にはすっかり伸びて「毛先の調整をお願いします」の一言で説明が済むから)ということしかり。

ということで、伸ばしていたというより伸びるのに任せてきたというほうが正しい私の髪だったが、ここ5年くらいは「伸ばしていた」が正解。

人生で一回くらいは、手間暇かけてきれいに伸ばしてみたくなったんだ。


まず、だいたいひと月~二か月に一度の頻度で美容室に通った。トリートメントをしてもらい、前髪を整え、痛みはじめた毛先はその都度摘んでもらった。

家でのケアも力を入れた。
髪に良さそうなシャンプーをこまめにチェックしては買い、トリートメントをし、ドライヤーを変えてできるだけ熱ダメージを減らした。
その段階でブラシも変えた。美容師さんにおすすめを聞いて、ちょっとお高いブラシでせっせと髪のもつれを取った。
(1時間も2時間もかけたわけではないけどね。でも今までの私からしたらとんでもないことだった)


そんなこんなで気づけば5年経った。髪は低めに結べば椅子の座面に毛先がつくまでの長さになった。

私はこの長さの髪を気に入っていたし、なんなら切りどきを失ってすらいた。
そんなある日、ふと思った。
これって、今切ったとしてもまた5年経ったらこの長さに伸びるってことじゃん。
なーんだ、そんなら切っちゃお!

思い立ってすぐに、二週間後の予約を入れた。


それがこの前の話。
切りに行ったのが今日だった。

どうせなら切った髪はドネーションしようと思ったので、そういうふうにお願いして切ってもらった。

長い長い髪は水色のゴムできれいに束に分けられて、よく研がれたハサミでしゃりんしゃりんと私の頭から離れて行った。
あまりに長すぎたのと量が多すぎたのとで、切られてただの毛束になったわりにやたら生き生きしていた。「髪」すぎて笑った。

全ての髪の毛が毛束になって、ひとまとまりになった髪を持たせてもらった。全長75センチ、重さ推定約1000グラムのりっぱな人毛。
つやつやして元気そうで、なんとなく「こいつらなら、どんなウィッグになっても楽しくやっていくんだろうな」と思った。
ぜひともその長さを生かして、いろんなヘアアレンジのできるウィッグになるんだぞ、と心の中で私は野菜を見送る生産者の気持ちになっていた。
寄付用毛髪育成家になろうかな。


店の外に出たら思いのほか外気が首に当たって寒かった。主にうなじの辺りが。
そらそうか、君にとっては五年ぶりの直(じか)外気だもんな。
髪が育ってくるまでは、首元あったかめの洋服を意識して選んでやろうかな。

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