【声劇台本】 INFERNO EYE
男1:女1:不問1
■概要
ジャンル:ホラー
公演時間:10分
■配役
・琉香(るか):アイドルを志す男子
・栞(しおり):アイドルを志す女子
・原田(はらた):2人のマネージャー
(ニュースキャスター 兼役)
原田:はい、1、2、3、4! 1、2、3、4!
琉香:はぁ…はぁ
栞:もう、限界ッ…
原田:あとワンセット!
N)琉香:俺の名前は、琉香。幼なじみの栞と一緒に、アイドルを目指している。
原田:はい、今日のレッスンはここまで!
栞:あ、ありがとう…ございました。
琉香:今日もハードだったな
栞:うん。もう動けない…
琉香:お前ホントに体力ねぇな〜
栞:うるさい
原田:はいはい、さっさとクールダウンのストレッチをする!20時にはここ出ないといけないんだから
栞:は〜い
琉香:すいませ〜ん
原田 はける。
琉香:よっこいしょっ…と。
栞:ねぇ、ストレッチは?
琉香:後でやるよ
栞:どうせやらないくせに
琉香:やるって…うるさいなぁ
栞:筋肉痛なっても知らないよ?
琉香:はいはい。
栞:琉香。
琉香:ああ?
栞:前に私が言った、アイドルに必要な三原則覚えてる?
琉香:顔、才能、情熱?
栞:違〜う!1つしか合ってない!
琉香:覚えてねぇよ
栞:いい?必要なのは、努力、夢、情熱よ!
琉香:ん〜。よくわかんねぇ。
栞:ぐぬぬ…いいよねぇ、アンタは。イケメンで高身長で、才能もあるし。おまけにもうスカウトもらってるし!
琉香:まぁ、俺天才なんで
栞:自惚れんな、クソが
琉香:そのうち、栞にもスカウトくるって
栞:うぅ…くるかな…
琉香:大丈夫!絶対くるって!
原田:そろそろ出るよー?支度して〜
(間)
原田:ホントにここでいいの?家まで送ってくよ?
栞:いえ、大丈夫です?すぐそこなので
原田:そう?じゃあまた来週ね。
琉香:じゃあな、栞。後でLINEするわ
栞:うん。
2人 はける。
N)栞:焦燥に駆られる、とはこのことなのだろう。最近、琉香との距離がどんどん遠くなっている気がする。私がどんなに全力で走っても、琉香に追いつくことはない。…私は、琉香に嫉妬していた。
原田:琉香。
琉香:はい?
原田:あなたから見て、あの子はどう?売れると思う?
琉香:無理だと思います。今は…
原田:つまり、これからの努力次第では、光るってこと?
琉香:はい。
原田:どのくらいかかりそう?
琉香:…3年。ですね
原田:微妙な数字ね…
琉香:大丈夫ですよ。
原田:琉香….。
琉香:俺、わかるんです。アイツはいずれ俺を超えるような、すげぇアイドルになりますよ
原田:あなたがそう言うなら、そうなのかもね
琉香:ええ。では、私はここで
原田:お疲れ様。ちゃんと寝るのよ?
N)琉香:それから、3年が経った。俺は、休日を利用して、あるアイドルのライブに行くことにした。そのアイドルとは…
栞:みんなー!今日も来てくれて、ありがと〜!!!
大歓声があがる。
栞:それじゃあ、聴いてください…。新曲…『INFERNO EYE』!
大歓声があがる。
ニュ:今大注目の大人気アイドル、ソルにゃんさん!独特の世界観で会場を支配するその圧倒的な『表現力』が魅力なんだとか!
N)琉香:栞の活動名、ソルにゃん。『しおり』の『しお』を英語し、猫好きであることから『にゃん』をつけた。誰でも覚えやすく、そして推しやすいアイドルでありたい。栞はいつも、そう言っていた。
琉香:栞…。変わったな、本当に
原田:今や全世界が注目するトップアイドル。芸能界でも引っ張りだこ…
琉香:俺なんて、簡単に超えられちゃいました
原田:結局は、才能なんかじゃなく、努力した者だけに、神は微笑むのかもね
ライブ終了後。
栞:お疲れ様で〜す!ありがとうございました〜!
琉香:よっ!お疲れ
栞:お、琉香じゃん。やっほー
琉香:今回のライブも、キラキラしてたぜ
栞:ふふふ、そう言ってもらえると嬉しい
琉香:飯行くか?
栞:うん!
琉香:まさか、この俺が越えられるだなんて…
栞:どんなもんだい!
琉香:マジで腹立つ(笑)
栞:えへへ(笑)
琉香:纏うオーラは変わっても、性格だけは変わんねぇな
栞:アンタにだけは言われたくない
琉香:おやおや?なかなかオーディション受からなくて枕を何度も濡らしたのはどこのどいつかな?
栞:…それ言わないでくれる?ホントに恥ずかしい。
琉香:あはははは!
栞:笑うな!
琉香:そうだ、飯でも行こうぜ。俺奢るよ
栞:マジ?やった〜
(間)
栞:琉香。
琉香:ん?どうした?
栞:最近ね、握手会に変な男が来るの
琉香:変な男?
栞:うん
琉香:どんなかんじなの?
栞:なんか、ずーっとニヤニヤして、握手してる時も無言でずっとニヤニヤしてるの
琉香:それシャイなだけだろ。
栞:シャイなわけない。だって自分から手を握りに来るんだよ?
琉香:まぁ、そう気にすんなって。いくら変でも大切なファンの1人だろ?
栞:うん…
琉香:ほら、今日は飲むぞ!
栞:………
N)琉香:たらふく食べ、酒を嗜み、他愛のない話で笑う。最高の夜だった。この時までは───
琉香:───ん?で、電話?……はい、もしもし
原田:琉香!大変なことが起こった!
琉香:どうしたんですか?
原田:琉香、落ち着いて聞けよ?
琉香:は、はい。
原田:さっきな、ニュース番組を見ていたら、速報が入って…
琉香:はい。
原田:栞が、自宅近くの路上で…滅多刺しにされて、殺されたって……
琉香:………………………………は?
原田:琉香?
琉香:それ、ホントですか?
原田:テレビをつけてみろ
琉香:リモコン、!リモコンどこだ!?あった!
ニュ:ソルにゃんさんの体には200ヶ所以上の刺傷があり、強い殺意をもっての犯行と思われます。警察は───
琉香:…
原田:琉香?
琉香:おい、原田
原田:な、なんだ?
琉香:栞の、握手会に来ていた者の中に、ニタニタ笑いを浮かべた男がいたか、調べろ
原田:そんなことを調べてどうする
琉香:殺す。
原田:そんなことをしてなんになる!
琉香:アイツのいない世界なんて、生きてても無意味だ。
原田:琉香……
琉香:徹底的に調べろ。原田
原田:……わかった。
琉香:ありがとうな。
原田:事が済んだら、一緒に自首しよう。な?
琉香:ああ。
───2日後。
琉香:みぃつけた。
男はギョッとする。
琉香:探したよ…クソ野郎
男は後ずさり。
琉香はゆっくりと距離を詰める。
琉香:………おらぁ!
深々とナイフが、男に刺さる。
琉香:返せっ!栞を!返せっ!返せっ!返せぇぇ!
琉香は男を滅多刺しにする。
琉香:死ね、死ね!死ね!死ね!
N)琉香:その後は、何も考えずにひたすら刺した。刺して、刺して、刺して、刺しまくった。…パトカーのサイレンが近づいてきた。
琉香:敵は、取ったよ。栞…
N)琉香:そして俺は、ナイフを自分の心臓へ突き刺した。
ニュ:ここで速報が入りました。一世を風靡した天才男性アイドル、ルカさんが、事務所近くの路地裏で死亡しているのが発見されました。遺体の前には、滅多刺しにされた男性の遺体があり、警察はルカさんが男性を殺害後、自殺したものと見ており、容疑者死亡のまま書類送検する方針です。
fin……