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【声劇台本】拳(フィスト)

※ 物語を崩さない程度のアドリブ OKです!
───公演時間:25〜30分
──男3:女1:不問1

■ 配役
ジェイク・アロー:男
全戦ぜんせん無敗むはいという戦績せんせきつプロボクサー。

長谷川  琴音(はせがわ ことね):女
不治ふじやまいおかされた女性じょせい

ポラリス・キラー:男
●ジェイク専属せんぞくのコーチ。心優こころやさしく、とき熱血ねっけつ

ダリア・コロー:男
【兼役:実況者(じっきょうしゃ)】

だるそうなこえするど特徴とくちょう医者いしゃ

レオ・ペトラ:不問
ジェイクのきつけのBARのマスター。

────────────────────

病室びょうしつとびらひらく。
と、1人の偉丈夫いじょうふはいってきた。

ジェイク:琴音ことね

(間)

ジェイク:体調たいちょうほうはどうだ?わりないか?

長谷川:うん

ジェイク:そっか、ならいいんだ。
………そうだ、今日きょう琴音ことね大好だいすききなメロンを

長谷川:ねぇ、ジェイク

ジェイク:…なに

長谷川:ジェイクってさ、わたしをどうおもってる?

ジェイク:そうだなぁ、大好だいすきなひとかな

長谷川:そうじゃない。わたし病気びょうきのこと、どうおもってるの?

ジェイク:ど、どうって…

長谷川:病名びょうめいもない。治療法ちりょうほうもない。世界的せかいてきても、この病気びょうきわずらっているのはわたしだけ…。

ジェイク:……

長谷川:毎日まいにち毎日まいにちくかもからないくすりまされて、検査けんさ検査けんさ検査けんさ連続れんぞく

ジェイク:琴音ことね…。

長谷川:こんなことになるなら、わたしなんて、まれてこなきゃよかった。

ジェイク:琴音ことね!そんなことっちゃいけない

長谷川:どうして?

ジェイク:きっとなおるから!

長谷川:きっと?"きっと"って…いつ?

ジェイク:……

長谷川:わたしイヤよ?モルモットにされるのだけは。

ジェイク:されるかもしれないし、されないかもしれない。人生じんせいなにがあるかわからないだろ?

長谷川:御伽噺おとぎばなしはやめて。反吐へどる。

(間)

長谷川:わたし気持きもちなんて、ジェイクにはかんないよ。

ジェイク:琴音ことね…。

長谷川:いいかげんにしてよ!

ジェイク:っ!…

長谷川:かえって。

ジェイク:……ごめん、気持きもちわかってあげられなくて。
……メロン、ここいとくから、あとべて。それじゃ…

ジェイクは病室びょうしつていく。


M)ジェイク:いつからだろうか。
彼女かのじょわってしまった。2ヶ月前、突然とつぜん彼女かのじょが、
目眩めまいがするといって、仕事しごとやすんだのがはじまりだった。
目眩めまいはよくなるどころか、どんどん悪化あっかしていった。
そこからは、なにもかも一変いっぺんした…。
彼女かのじょ入院にゅういんまり、ずっとたきりになってしまったのだ…。
どうして、こうなってしまったんだろうか。

N)ジェイク「拳(フィスト)…(タイトルコール)」


──ボクシングジムにて。

ポラリス:ジェイク!もっと脱力だつりょくしろ

ジェイク:はい…!

ポラリス:それではひだりサイドがおろそかだ!

ジェイク:ぐっ…

ポラリス:もっと集中しゅうちゅうしろ。基礎きそわすれるな!

ジェイク:はい!

ポラリス:今度こんどぎゃくサイドがおろそかだ!

ジェイク:クソッ…うぐッ!

ポラリス:(溜息ためいき)ジェイク、一旦いったん休憩きゅうけいだ。

ジェイク:(あら呼吸こきゅう)

ポラリス:どうしたんだ、ジェイク。今日きょうはやけにキレがないぞ

ジェイク:すいません…

ポラリス:食事しょくじ睡眠すいみんとう指導しどうどおりにしているんだろうな?

ジェイク:ええ。

ポラリス:そうか。

ジェイク:ただ…

ポラリス:ん?

ジェイク:いえ、なんでもありません。

ポラリス:ってみろ、ジェイク。

ジェイク:いえ、いいんです。

ポラリス:おれじゃ不満ふまんか?

ジェイク:いえ、そういうわけでは…

ポラリス:なやみの解決かいけつはやほうがいい。ってみろ

ジェイク:しかし…

ポラリス:ジェイク。リングのうえは、ガキのあそじゃない。たましいたましいのぶつかりいの

(間)

ポラリス:おれは、生半可なまはんか気持きもちでボクシングをするやつ絶対ぜったいゆるさない。

ジェイク:…すいません。

ポラリス:つぎ試合しあいてば、おまえはチャンプなんだ。

ジェイク:わかっています。

ポラリス:今日きょうはもういい。かえれ。

ジェイク:はい…。おつかさまでした。

──そのよる

ジェイク:……今夜こんやも、むか。

ドアのすずおと
マスターの姿すがたえる。


レオ:いらっしゃいませ…おや?ジェイクさんではないですか。

ジェイク:どうも

レオ:今夜こんやえますね。

ジェイク:そうですね

レオ:"いつもの"  ですか?

ジェイク:…はい。

レオ:かしこまりました。

(間)

ジェイク:(溜息ためいき)

レオ:どうされましたか?

ジェイク:いえ…なんでもないです。

レオ:こちら、"いつもの"でございます。

ジェイク:(カクテルを飲む)やっぱり、マスターのカクテルはいつんでも最高さいこうだよ…

レオ:おさけは、ときひとこころやすらぎをあたえてくれます。

ジェイクはふたたおおきくためいきく。

ジェイク:おれって、なんなんですかね

レオ:と、いいますと?

ジェイク:自分じぶんのこともおろそかなくせに、ひとのことをにかけれるほど、おれ器用きようじゃないみたいです。

レオ:入院にゅういんされている琴音ことねさまのことですか?

ジェイク:はい…。

レオ:かるめてしまったんですね。

ジェイク:(苦笑)…マスターはなんでも見抜みぬいてしまうんですね…。

レオ:ふふふ…。何年なんねんもバーテンダーやってると、自然しぜんとわかってしまうんですよ

ジェイク:魔法まほう使つかいみたいだ…

レオ:ジェイクさんは、琴音ことねさまになんとおこえをかけたんですか?

ジェイク:きっと、よくなるから。と…はげましの言葉ことばを…

レオ:そうですか…。

(間)

レオ:おさわるようでしたら、もうわけありませんが…それははげましなどではありませんね。

ジェイク:えっ?!

レオ:病人びょうにんたいして、"きっと" という言葉ことばはいけませんね。とくに、琴音ことねさま場合ばあいは…

ジェイク:………

レオ:不治ふじやまい何時いつ悪化あっかするかもからない恐怖きょうふ。それははかれないでしょう。

(間)

レオ:これはわたし持論じろんぎませんが、いま琴音ことねさまもとめているのは、『はげまし』などではなく、『ぬくもり』なのではないでしょうか

ジェイク:『ぬくもり』…ですか

レオ:はい。言葉ことば一時いっときしか存在そんざいしませんが、あいとは、永遠えいえんのこつづけるものです。やさしく、きしめてあげてください。

ジェイク:マスター…ありがとうございます。

レオ:いえいえ。あとこちら、わたしからのサービスです。

ジェイク:このカクテルは、なんという名前なまえですか?

レオ:サイドカー…。ブランデーベースです。カクテル言葉ことばは、『いつも2人で』……。

ジェイク:………(ゆっくり飲む)

(間)

ジェイク:ふぅ…美味うまい。


──翌朝よくあさ病院びょういんにて

病室びょうしつとびらひらく。

長谷川:……

ジェイク:琴音ことね

長谷川:なに?

ジェイク:昨日きのうはごめんな。

長谷川:べつに…

ジェイク:琴音ことね気持きもち、全然ぜんぜんかってなかった…

(間)

ジェイク:ごめん!

長谷川:もういいの。あやまらないで

ジェイク:うん。

長谷川:わたしほうこそ、ジェイクにたりして…ごめん。

(間)

長谷川:ジェイク。

ジェイク:なに…?

長谷川:こっち、て。

ジェイク:え、う…うん。

長谷川:ん…!

ジェイク:こ、琴音ことね!?

長谷川:ギューって…して

ジェイク:こ、こう?

長谷川:もっとつよく!ギューって、して?

ジェイク:う、うん。

長谷川:……うっ、うぅ…

ジェイク:琴音ことね?…

長谷川:うわぁぁあぁぁぁん!(号泣)

ジェイク:こ、琴音ことね?!

長谷川:わたし、怖《こわ》いよ…。

ジェイク:琴音ことね

長谷川:こわくて、こわくて、たまらないの…
わたしだけさきにさよならなんてヤダ。ジェイクと、はなれたくない。これからも、ずっと一緒いっしょにいたいよ…。

ジェイク:っ!…

長谷川:にたくないよぉ、もっと、もっときたいよぉぉ…

ジェイク:ぐっ…うぅぅぅ…(泣)

長谷川:ジェイクぅぅ…

ジェイク:…なに?

長谷川:大好だいすきだよ…これからも、ずっと、ずっと!

ジェイク: …おれも、大好だいすきだよ!

────ボクシングジムにて。

ジェイク:しゅっ…!

ポラリス:いいぞジェイク!

ジェイク:しゅっ!しゅしゅっ…!

ポラリス:そうだ、その調子ちょうしだぞ!

ポラリス:ここ!

ジェイク:がぁぁぁぁぁ!

ポラリス:そこまで!

ジェイク:(深呼吸)…ありがとうございました。

ポラリスは拍手はくしゅをする。

ポラリス:すごいぞジェイク!今日きょうはいつにもしてキレがある。

ジェイク:ありがとうございます!

ポラリス:なやみはもういいのか?

ジェイク:はい!なんとかえれそうです。

ポラリス:それならよかった。この調子ちょうしでいけば、ジャパンのチャンプ、柳田やなぎだをぶちのめせるぞ!

ジェイク:いえ、自分じぶんはまだまだです。あのジャパンの選手せんしゅは、ほとんどの試合しあいをKOちしています。油断ゆだんはできません。

ポラリス:その意気いきだジェイク!おまえはまだまだつよくなるぞ!

───BARにて。

ジェイク:よっ!マスター、今日きょうみにたぜ

レオ:いらっしゃいませ。"いつもの" ですね

ジェイク:いや、今日きょうはマスターのオススメをたのむよ

レオ:かしこまりました。

(間)

レオ:ほほぉ、琴音様ことねさまあつ抱擁ほうようを…

ジェイク:やめてくれ、ずかしいだろ

レオ:これは失礼しつれい

ジェイク:マスター、つぎおなじものを」

レオ:はい、かしこまりました。

M)ジェイク:まっていた歯車はぐるまうごしたがした。琴音ことねは、わらうことがおおくなった。
大好だいすきなメロンも一緒いっしょべた。あさ琴音ことねと、他愛たあいのないはなしわらい、ひるから夕方ゆうがたまでは、ボクシングジムであせながす。
よるはマスターとはなす。そんな毎日まいにちごしていた。ただ、試合しあい明日あしたせまのことだった。


───病院びょういんにて。

ジェイク:め、面会めんかい謝絶しゃぜつ?!どういうことですか!

ダリア:昨日きのうよる容態ようだいわるくなってね。

ジェイク:琴音ことねは、琴音ことね大丈夫だいじょうぶなんですか?

ダリア:いてください。ジェイクさん、こちらへおはいりください。

ジェイク:はい…。

(間)

ダリア:いいですか、ジェイクさん。

ジェイク:はい…。

ダリア:いて、いてください。

ジェイク:……はい。

ダリア:結論けつろんからもうげますと、琴音ことねさんは…もうながくありません。

ジェイク:えっ…?!

ダリア:余命よめい、1ヶ月もないでしょう…。

ジェイク:ち、ちょっとってください!昨日きのうまで、琴音ことねは、元気げんきわらってたんですよ?!

ダリア:やまいとは、いつなにがこるかかりません。とくに、琴音ことねさんの場合ばあいは…。

ジェイク:…いま琴音ことねはどうしてますか?

ダリア:現在げんざいは、意識いしきがない状態じょうたいです。

ジェイク:……

ダリア「ジェイクさん?」

ジェイク:こんなのって…ねぇだろ。

ダリア:ジェイクさん?

ジェイク:やっと、まえみたいにわらってくれるようになって、やっと…おれもボクシングにめるようになって…すっごい、しあわせで…それを、いきなり…あんまりだろ…

ダリア:ジェイクさん!

ジェイク:…はい。

ダリア:まだまったわけではありません。我々われわれも、最善さいぜんくします。

ジェイク:はい…おねがいします。琴音ことねを、よろしくおねがいします……!

(間)

ジェイク:1ヶ月…か。

ジェイク:どうしろってんだよ…

ポラリス:こんなとこにいやがったか、ジェイク。

ジェイク:っ?!ぽ、ポラリスさん!どうしてここに…

ポラリス:オメェがいつまでっても、ジムにねぇんでな。もしかしたら、とおもってな。

ジェイク:……

ポラリス:オメェに以前いぜんなやごとがないかいたことがあったろ?
そのときおれはてっきりオメェがなにかおおきな病気びょうきかかったんじゃないかとおもったんだ。だが、事態じたいはそれよりもっと深刻しんこくだったみたいだな


(間)

ポラリス:ジェイク、テメェ…なんでもっとこのことはやわなかった。こたえろ。

ジェイク:………

ポラリス:そんなにおれ信用しんようなんねぇか?

ジェイク:ちがいます。

ポラリス:じゃあ、なぜいままでだまってた。

ジェイク:それは…ポラリスさんに…

ポラリス:あ?なんだって?

ジェイク:ポラリスさんに、迷惑めいわくをかけたくなかったからです。

ポラリス:テメェ、それ本気ほんきってんのか?

ジェイク:ほっといてくださいよ。これはおれだけの問題もんだいです。

ポラリス:ジェイク

ジェイク:はい…?

ポラリス:馬鹿ばか野郎やろうがァ!

ジェイク:がはっ?!…うっ、ぐぅ…(悶絶)

まわりがザワザワする。が、
ポラリスはジェイクのむなぐらをつかむ。


ポラリス:テメェ、なに一丁前いっちょまえ戯言たわごとかしてやがんだゴラ!

ジェイク:ぽ、ポラリスさん?!

ポラリス:いまのテメェは、クソだ。最低さいてい最悪さいあくのボクサー、いや!おとこして最低さいてい

ジェイク:なっ、なんなんですか!?

ポラリス:テメェにはねぇのか。『愛人あいじんしんじるこころ』が

ジェイク:しん、じる。こころ

ポラリス:そうだ。ジェイク。おまえは、愛人あいじんはもうたすからないとでもおもってやがるんだろ?

ジェイク:…っ!

ポラリス:全部ぜんぶわった、そういうかおをしてやがった。

ジェイク:ぐっ…

ポラリス:そんなこと、簡単かんたんおもうんじゃねぇ。

ジェイク:………

ポラリス:それにな、おれには重要じゅうよう責務せきむがある。
アメリカ最強さいきょうのボクサー…
ジェイク・アローというおとこを、
"世界せかいチャンプ" にする、というな。

ジェイク:ポラリスさん…

ポラリス:コーチってのは、選手せんしゅ心身しんしんともにささえてこそってもんだ。だから、テメェのメンタルケアもおれ仕事しごとなんだよ。遠慮えんりょしねぇで、すこしはたよれ。1人でかかんでんじゃねぇ

ジェイク:ポラリスさん…

ポラリス:なんだ?

ジェイク:ありがとうございます。おかげでめました。

ポラリス:おう。わかりゃいいんだ。試合しあい明日あすだ。からだつかれをのこすな。

ジェイク:はい!

ポラリス:今日きょうはもう、かえってやすめ。

ポラリスはっていく。

M)ジェイク:そしてついに、試合《しあい》当日とうじつをむかえた。


──朝。

ジェイク:ふぅ…ついにたか…

ポラリス:お、ジェイク!やっとやがったな

ジェイク:ポラリスさん、おはようございます!

ポラリス:もうアップはませたのか?

ジェイク:はい!バッチリです!

ポラリス:よし、ならとっとと受付うけつけませてこい!

ジェイク:はい!

N)ジェイク:琴音ことねててくれよ。

実況者:レディース エーンド ジェントルメーン!今夜こんや対戦たいせんカードはこれだぁぁ!

大歓声だいかんせいがる。

実況者:ジャパン・レッドシャーク!柳田やなぎだ久也ひさやーーーー!!!

大歓声だいかんせいがる。

実況者:そして、われらアメリカがほこ偉丈夫いじょうふ!ジェイク・アローーーー!

大歓声だいかんせいがる。

ジェイク:ふぅ〜…(大きく息を吐く)

ポラリス:ジェイク!

ジェイク:はい!

ポラリス:ここまで、よく頑張がんばったな。

ジェイク:はい…

ポラリス:相手あいてつよい!そしておまえつよい!そして…そして……

ジェイク:どうしました?ポラリスさん

ポラリス:かぁぁ!もう!感極かんきわまっちまった!

ジェイク:あははは…

ポラリス:よし!もうこうなれば、おまえうことはなにもねぇ!おまえつよい!おまえならできる!かならず、ってこい!

ジェイク:はい!

実況者:両者りょうしゃがリングへがった!今夜こんやあつ試合しあい期待きたいできそうだぁ!そして、いま

カーン!(ゴングの音)

実況者:ゴングがったぁ!

ジェイク:がぁぁぁぁ!

実況者:ジェイクのストレート!が、柳田やなぎだかわしたぁ!

ジェイク:へぶっ?!

実況者:カウンターの強烈きょうれつなジャブがジェイクをとらえたぁ!

N)ジェイク:はえぇ…はえぇなんてもんじゃねぇ…しかも、なんておもいパンチだ…

ジェイク:がぁっ?!ぐっ!あ"っ?!がはっ!

実況者:柳田やなぎだにもまらぬ連続れんぞくパンチ!たまらずジェイクたおれたぁ!

ポラリス:ジェイクゥ!

ジェイク:クソッ…やってやらぁ!

実況者:たァ!ジェイクの必殺ひっさつパンチだぁ!

ジェイク:べぇぇぇ!

実況者:なんと、柳田やなぎだここで神速しんそくのスウェイバック!

ジェイク:ごほっ…
実況者:そしてカウンターがはいったぁ!
ジェイク:ちっ、クソつええ…

M)ポラリス:柳田やなぎだはスピードがた選手せんしゅくわえてカウンターの精度せいどがやたらたかい…

ジェイク:テメェも、1発ぐらいもらっとけぇ!

N)ジェイク:この角度かくどはっ、はいった!

実況者:ついにジェイクの必殺ひっさつパンチが柳田やなぎだとらえたぁぁぁぁ!

ポラリス:いいぞ、ジェイク!

ジェイク:い!柳田やなぎだおれ全存在ぜんそんざいを、このこぶしせる!

実況者:これは、すさまじいたましいのぶつかりいだぁぁ!どちらがってもおかしくないぞぉぉ!?

N)ジェイク:っ?!なんだ?きゅうに、景色けしきが…ゆっくりに…。ん?…こいつ、『サイドががらき』だ!……いける!いけるぞ!

ジェイク:(大きく息を吐く)

実況者:なんとここでバックステップ!

ジェイク:これで、わりだぁぁぁ!

(少し長めの間)

実況者:な、な、な!なんとーーー!!
柳田やなぎだ失神しっしんしたぁぁ!
ここではげしくゴングがらされたぁ!優勝者チャンピオンは、ジェイク・アローだぁぁぁぁ!優勝者チャンピオンは────


ポラリス:やったなぁ!ジェイク!

ジェイク:はい!ポラリスさん

ポラリス:愛人あいじんもよろこんでることだろう!

ジェイク:そうですね!

ポラリス:ほら、その勝利しょうり勲章くんしょうはやぬぐえ!記者きしゃどもがおまえにインタビューしたくてウズウズしてるぞ

ジェイク:はい!


───しばらくして…。

ポラリス:いやぁ、まだ実感じっかんかねぇぜ。おまえ世界せかいチャンプだなんてよぉ

ジェイク:ははは…そのセリフ何回目なんかいめですか

ポラリス:だってよぉぉ…

電話の着信音が鳴る。

ジェイク:ん?…なんだ?

ポラリス:おぉ、病院びょういんからじゃねぇか

ジェイク:病院びょういん?…はい、もしもし

ダリア:ジェイクさん、ですね。

ジェイク:はい。なんでしょうか…

ダリア:琴音ことねさん…が

ジェイク:琴音ことねが、どうかしたんですか?

ダリア:いて、いてください……

ジェイク:はい…

ダリア:琴音ことねさんの…意識いしきが、もどりましたよ!

ジェイク:え?!

ポラリス:どうした!?ジェイク

ダリア:病状びょうじょうも、回復かいふく傾向けいこうにあります。

ジェイク:(泣きそうな声で)そう、ですか!

ダリア:そして、ジェイクさん。

ジェイク:はい。

ダリア:優勝ゆうしょう、おめでとうございます!

ジェイク:ありがとう…ございます…!

電話でんわれる。

ポラリス:ジェイク

ジェイク:ポラリスさん。琴音ことねの、意識いしきが…もどりました。

ポラリス:(少し笑って)そうか。よかったな、ジェイク。

ジェイク:はい…!

ポラリス:ってこい!愛人あいじんもとへ。そして、そのベルトをせつけてやれ!

ジェイク:はい!ポラリスさん!ってきます!

M)ポラリス:ジェイク。おまえは、本当ほんとうに…おれの、自慢じまんのチャンプだよ…。おめでとう。ジェイク……


───病院びょういんにて。

ジェイク:……琴音ことね

琴音:あ、ジェイク。試合しあい結果けっか……いたよ。チャンピオン、おめでとう。

きそうなこえで、ゆっくりんでください。
ジェイク:琴音ことね……。おれっ……ったよ……!


fin………

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