【声劇台本】封印された2体の妖怪は暇すぎて死にそうだそうです
男0:女0:不問3
■概要(がいよう)
ジャンル:シリアス
公演時間:4〜5分
■配役(はいやく)
・御狐(おきつね):暇すぎるキツネ。幼稚。
・狛郎(こまろう):薄情な狛犬。知的。
・兎仙(とせん):元陰陽師。ボケてる?
御狐:狛郎
狛郎:なんだ
御狐:暇。
狛郎:知るか
御狐:…狛郎
狛郎:なんだ
御狐:返しが冷たい。僕悲しい
狛郎:黙れ。
御狐:もしかして…まだ怒ってる?
狛郎:さあな。
御狐:怒ってるよね。
(間)
御狐:狛郎?
狛郎:なんだ?
御狐:怒ってる?
狛郎:…怒ってるさ。
御狐:(沈黙)そろそろ許して、くれる?
狛郎:無理。
御狐:お願い!
狛郎:無理。
御狐:お〜〜ね〜〜が〜〜い〜〜〜
狛郎:無理。
御狐:薄情者
狛郎:黙れ化け狐
御狐:(間をあけて)…は?
狛郎:合ってるだろ。俺は化け犬、お前は化け狐。神社にいるような品のある存在じゃない。
御狐:否めない…
狛郎:それに、封印されたのは誰のせいだと思ってる
御狐:……僕。
狛郎:だよな?俺の指示通りに動いていれば、こんな事にはならなかった!全てお前のせいだ!
御狐:で、でも…『アレ』に引っかかったのは狛郎だろ?
狛郎:っ!…う、う、うるさい!
御狐:動揺しすぎ。
狛郎:黙れ。もう過ぎたことだろうが。
御狐:狛郎も過ぎたことで僕のこと恨んでるじゃん。
狛郎:………
御狐:不毛な言い争いはもうやめよ!僕《ぼく》と楽しいことしようよ〜
狛郎:黙れ。
御狐:ねぇってば〜、狛郎〜
狛郎:黙れ…
御狐:狛郎〜。
狛郎:黙れって言ってるだろ!
御狐:ひっ!
狛郎:耳障りなんだよ!
御狐:………
狛郎:やっと静かになったか。
御狐:ねぇ。
狛郎:(無視)
御狐:ねぇ、狛郎
狛郎:テメェ、いいかげんに…
御狐:なんか、外にいる…
狛郎:あぁ?外だぁ?
兎仙:さてさて、行くとしますかな。
狛郎:あのヒョロっとした体躯、銀色の錫杖…まさか、兎仙か!
御狐:兎仙?!
狛郎:何しにきやがった、あの野郎。
御狐:お参り、かな
狛郎:わからん。
御狐:あ、来た!
兎仙:おーい、御狐や〜い、狛郎や〜い、こっちへおいで〜
狛郎:いくぞ、御狐
御狐:う、うん!
兎仙:おーい、出ておいで〜
狛郎:神聖な境内で騒ぐな。ボケジジイ。
兎仙:ほぉ、主の口から『神聖』などという言葉が出るとはな…。この60年の賜物かな?
狛郎:ぬかせ。60年前、俺たちをこの場に閉じ込めたのは、貴様だろうが!
兎仙:ほっほっほ、啖呵を切れるまで回復しているとは、結構結構。
狛郎:そのニタニタ笑いだけは変わらねぇな。兎仙。
兎仙:ほっほっほ。主らはすっかり変わったな。とくに御狐。
御狐:えっ?…僕!?
兎仙:さよう。昔は『僕』、ではなく『俺様』だったろう?
御狐:そう、だったっけ?
兎仙:ほっほっほ。よほどこの封印期間が堪えたのだろうな。うんうん、御狐はもう出してよかろう。
御狐:ほんと!?
兎仙:ああ。
御狐:わーい!暇で暇で死にそうだったよぉ
兎仙:ほっほっほ。それじゃあ、また封印をかけるとするか。
狛郎:ちょ、ちょっと待て。
兎仙:んん?
狛郎:俺も出してくれよ!
兎仙:何をぬかしておる。お前はもう永遠にその中だ。
狛郎:なっ!
兎仙:御狐は十分罪を償った。だがお前はどうだ?
狛郎:なにぃ…?
兎仙:60年で学んだことは啖呵の切り方だけか?ワシの目をごまかそうなど、200年早いわい
狛郎:このジジイ、噛み殺してやる!
兎仙:できるものならやってみぃ。そら、やってみせぃ。
狛郎:ふざけるなぁァァァァァァ!
兎仙:いくら知識を蓄えようと、根本が変わらねば、総て無意味なのだよ。
狛郎:ここから出してくれぇぇぇぇぇ!
兎仙:泣こうが喚こうが、貴様の味方なぞおらぬわ。
狛郎:あ、あ、ああああああ!
兎仙:さらばじゃ、狛郎よ。
門が固く閉ざされる。
と、狛郎の断末魔が、境内に響いた。
fin……