
【声劇台本】 ヒューマノイド達は共存を夢見た
※ 役者の性別に応じて、一人称の変更 をしてください
────公演時間:20〜25分
──男0:女0:不問5
■ 配役
アレフ
●天才ヒューマノイド研究者。主人公
ニクス
●アレフの同僚
ライラ
●人懐っこく、ちょっぴりワガママなヒューマノイド。
キール
●紳士的で言葉遣いも丁寧なヒューマノイド
ブルド:(兼役・・・研究長)
●プライド高めで不器用なヒューマノイド。
─────────────────────
アレフ:(欠伸)おはよう…
キール:おはようございます、マスター
ライラ:マスターおはよう!
アレフ:皆早起きだね。俺朝弱いから羨ましいよ…。
ブルド:アレフは弱すぎなんだよ。
アレフ:あ、ブルド…おはよう
ブルド:おう。
アレフ:パトロールは終わった?
ブルド:とっくに済ませた。データも転送済みだ。
アレフ:いつもありがとう。
キール:マスター、もうすぐ朝食が出来あがります!
アレフ:キール、今日もありがとうね
キール:いえいえ
ライラ:ん〜!いい匂い〜
アレフ:この匂い、もしかして!
キール:マスターの大好物、ホットサンドです
アレフ:美味しそう…
ライラ:ホントにキールって料理って上手だよね。食べられないのが残念…
キール:それだけが取り柄ですから
ブルド:毎日マスターが美味しそうに食べてるとこ、うらめしそ〜に見てるもんな
アレフ:(笑って)そうだったんだ
ライラ:恨めしそうって…人聞きの悪いこと言わないでよ!
ブルド:俺ら人じゃねぇけどな〜
ライラ:そうだけどさぁ…
アレフ:そんなことないぞ?
ブルド:ん?
アレフ:ヒューマノイドには、『人間そっくりの』という意味がある。それに、君たちは『感情』と『意志』を持っている。十分人間と言っていいさ。
ブルド:はは、法を犯した奴がなんか言ってるぜ
ライラ:コラァ!ブルド、マスターに失礼な事言わない!
アレフ:あはは…まぁホントに犯罪だからね
キール:ヒューマノイドに感情を与えてはならない。与えた者は無期懲役、または処刑。
ブルド:クソみてぇな法律だぜ、まったく
ライラ:もしバレたら、マスター殺されちゃうの?…
ブルド:だからそうならねぇように、俺がパトロールしてやってんだろうが
アレフ:ブルドが頑張ってくれているから、今の俺たちがある。
キール:ブルドは、この中の誰よりも働いてます。
ブルド:そうだお前ら!もっと俺を褒めろ!
ライラ:すごいよブルド!天才!逸材!大喝采だ!
アレフ:ん?なんかどこかで聞いたことのあるような…
キール:お待たせしました。キール特製ホットサンドです
アレフ:待ってました!
ライラ:おいしそぉぉぉ…
ブルド:ライラ、"よだれかけ" いるか?
キール:お味はいかがですか?
アレフ:ふっごい おいひい!(すっごい おいしい)
ブルド:おいおい、ちゃんと飲み込んでから喋れよ…
キール:よかったです。では、ごゆっくりどうぞ
(間)
アレフ:ごちそうさま。今日も美味しかったよ。
キール:お粗末さまです。
ライラ:ねぇねぇマスター!遊ぼ遊ぼ!
アレフ:ごめんなぁ、ライラ。俺今日研究所に行かなきゃなんだ
ライラ:えぇ〜…
キール:おや、今日だったんですね。
アレフ:なんか緊急らしくてさ…
ライラ:ヤダヤダヤダぁ!遊びたいのぉ!
ブルド:なら俺と遊ぶか?
ライラ:ブルドはヤダァ!マスターがいいのぉ!
ブルド:ガキかテメェは!
キール:ライラ、あまりワガママを言ってマスターを困らせてはいけませんよ?
ライラはうつむき、
不貞腐れる。
アレフ:ごめんな、ライラ。帰ったらたくさん遊ぼう。
ライラ:うん!遊ぶ!
アレフ:よしよし…いい子だ
ブルド:気をつけろよ?
アレフ:あぁ、心配ないさ。
キール:マスター、行ってらっしゃいませ。
アレフ:うん、行ってきます。
ライラ:マスター行ってらっしゃ〜い!
(間)
ニクス:……遅ぇんだよ、アレフ
アレフ:あれ?ニクス?
ニクス:よぉアレフ。久しいな
アレフ:どうしたんだよ、お前。太陽に当たったら死ぬんじゃなかったのか?
ニクス:そういうお前もずっと連絡よこさねぇから、死んだのかと思ったぜ
アレフ:研究所への道は覚えてるか?
ニクス:ったりめぇだ。俺はボケ老人じゃねぇんだぞ?
アレフ:ジョークだよ、ジョーク。
ニクス:ったく…あ、それより今朝のニュース見たか?
アレフ:ニュース?
ニクス:お前なぁ…
アレフ:あはは、うちテレビないから…
ニクス:なんかよォ、ヒューマノイドに感情を持たせようとした馬鹿な奴がまた1人捕まったんだってよ
アレフ:へぇ〜…
ニクス:そいつ、逮捕されたその日のうちに処刑されたんだってよ
アレフ:そうなんだ
ニクス:まっ、当然の報いだな
アレフ:案外簡単にできそうからな
ニクス:簡単って…天才の言うことは違うねぇ
アレフ:俺は天才じゃないよ。ほら、もうすぐ着くぞ。シャキッとしろ
ニクス:あ〜ダリィ…早く帰りてぇ…
(間)
研究長:皆の者、おはよう。
アレフ:おはようございます
ニクス:うーっす
研究長:今回、皆に集まってもらったのは他でもない。政府からビッグな依頼がきた。
ニクス:ビッグな依頼?
研究長:ああ、報奨金は10兆は下らんらしい。
研究員たちはざわめく
アレフ:す、すごい…
ニクス:じ、10兆…
アレフ:その依頼とはなんなんですか?
研究長:よく聞いてくれたアレフくん。では発表しよう。依頼とはズバリ…ヒューマノイドをマインドコントロールすることができる装置、『バインドサウンド』の開発だ!
ニクス:シンギュラリティの抑制ということか?
研究長:その通りだ。ヒューマノイドは無限の可能性を秘めている。それを私たち人間が正しく活用しなくてはならない。資料は皆のアーム型コンピューターに転送しておく。期間は4ヶ月。それまでに完成させなくてはならない。いいな?我が研究所の威信にかけて、必ず完成させるんだ!
アレフ:はい。
ニクス:………
(間)
アレフ:バインドサウンド、か
ニクス:おい、アレフ
アレフ:ニクス、どうした?
ニクス:いいか?10兆は俺のものだ。
アレフ:はぁ?いきなりなんだよ…
ニクス:アレフ、お前なら今日中に開発しちまいそうで怖いんだ。だから、な?諦めてくれねぇか?
アレフ:やだよ(笑)俺だって金は欲しいんだ
ニクス:なら勝負だ!
アレフ:勝負ぅ?
ニクス:どっちが先に開発できるか…勝負だ!
アレフ:仕方ねぇな
ニクス:っしゃあ!絶対負けねぇぞ!今日からエナジードリンク片手に毎日徹夜だ!
アレフ:死ぬ気か?
ニクス:死ぬ気でやるってのはこの事よ
アレフ:ホントに死ぬなよ?
ニクス:おうよ!
アレフ:まぁお前のことだし、帰ったらゲームするのがオチだろうな
ニクス:なぜ分かった!さてはお前、エスパーか?!
アレフ:お前のことを理解していれば、誰でもわかるさ。
ニクス:なんか腹立つなぁ。…てかこのあと飯行かね?
アレフ:お、いいね。どこいく?
ニクス:ラーメンでも食いに行くか。勿論、お前の奢りな?
アレフ:だと思ったわ。
(間)
アレフ:ふぅ…疲れた
ライラ:マスターおかえりぃぃぃ〜〜〜
アレフ:うぉっ…なにがあったんだ
ブルド:あ、アレフ。はぁ…はぁ…
アレフ:ブルド!?どうしたんだ…オーバーヒート寸前じゃないか!
ブルド:こいつどうなってんだ…?走っても走っても、ヒートしねぇんだ…
ライラ:えへへ〜
アレフ:ん〜?あ、ライラ…アグレッシブモードがオンになってるじゃないか!
ライラ:んえ〜?
アレフ:バッテリーの劣化が早くなるから、使うなって言ったろ〜?
ライラ:あ、あ…あれ?なんだか急に体がふらっと…
アレフ:おっと、あぶない
ライラはまるで眠るようにシャットダウンした。
キール:寝たみたいですね。
ブルド:よかったぜ…
キール:ブルド。お疲れ様。
ブルド:おう…ちょっと俺ァ休むぜ。
アレフ:うん、ゆっくり休んで
キール:ん?どうしたんですか?そのキーホルダー。
アレフ:あぁ、ニクスからもらったんだよ。でも俺にはこんな可愛いキーホルダーは似合わないからさ、だからライラにって思って…
キール:マスターはホントにお優しいですね
アレフ:熱いお茶をいれてくれない?
キール:はい、只今。
(間)
キール:バインドサウンド…ですか
アレフ:あぁ。君たちヒューマノイドをマインドコントロールして、意のままにしようとしてるらしいんだ。
キール:悲しいです。やはり私たちヒューマノイドは、人間の道具に過ぎないということなのでしょうか
アレフ:………
キール:マスターは、いかがなさるおつもりですか?
アレフ:俺は、この開発には携わりたくない。でも、いずれはニクスが完成させてしまうかもしれない。そうなれば…
ブルド:ほぉ、マインドコントロールねぇ…
アレフ:ブルド、休まなくていいの?
ブルド:あぁ、もう大丈夫だ
アレフ:ならいいんだけど…
ブルド:で?そのバインドなんちゃらってやつが完成したらどうなるんだ?
アレフ:間違いなく、君たち3人も、政府の犬にされる。
ブルド:醜いな、人間ってのは。
キール:マスター
アレフ:ん?どうしたの?
キール:もしも…もしもですよ?バインドサウンドが完成して、それが使用されてしまったら。今あるこの幸せは…
ブルド:間違いなく、崩れる。
キール:そんなことあってはなりません!
アレフ:キール…
キール:私もブルドも悲しみますが、なによりライラ…あの子が1番悲しむでしょう。
(間)
キール:マスターは以前、こんなことを言ってくださいました。"私たちは、家族だ"と。
ブルド:アレフ。
アレフ:…俺、やってみるよ。
キール:マスター?
アレフ:俺は、大切な家族のために、対バインドサウンドチップを作る!
キール:マスターッ…!
ブルド:ははは、そうきたか
アレフ:よし!そうと決まれば、今から研究だ!
アレフ はける。
キール:ブルド。
ブルド:ん?
キール:マスターは、本当にカッコイイですね。
ブルド:あぁ、そうだな
(間)
アレフ:あれ…寝ちゃってた?
キール:おはようございます。マスター
アレフ:あ、キール。おはよう…今何時?
キール:深夜の1時です。
アレフ:そっか。よし、また作業するぞ!
キール:…すごい資料の数ですね。
アレフ:まぁね
キール:こちら、お茶です。
アレフ:ありがとう
キール:いえいえ。
アレフ:そうだ…キール
キール:どうしました?マスター
アレフ:キールって、夢とかあったりする?
キール:いきなりどうされたんです?
アレフ:なんとなく聞いてみたくなっただけだよ
キール:(少し笑って)ん〜、そうですね…
(間)
キール:多くの人を料理で笑顔にすること、ですかね。
アレフ:キールらしいね
キール:それしか取り柄がないものですから
アレフ:きっと、キールならできるよ
キール:それは身に余るお言葉です。
アレフ:キールの夢が実現できるように、俺頑張るよ
キール:では、私も全力でサポートしますね。
アレフ:ありがとう
キール:なにかあればお呼びください。では失礼します。
(間)
ブルド:やってるなぁ。アレフ
アレフ:ブルド…
ブルド:どうだ?チップの方は
アレフ:順調だよ。もうすぐ完成さ
ブルド:さすがだな
アレフ:…そういえば、ブルドって…夢とかあったりする?
ブルド:夢?なんだよ急に
アレフ:いいから言ってみてよ
ブルド:夢か、そうだなぁ
(間)
ブルド:もっと強くなって、皆を守れるようになりたい。かな?
アレフ:つまり武闘派になりたいってこと?
ブルド:そうだ
アレフ:それは、ライラのためかい?
ブルド:は、はぁ?!
アレフ:気づいてないとでも思ってた?ブルド、ライラのこと好きでしょ?
ブルド:す、好きとか。ヒューマノイドにはねぇし。
アレフ:あれあれあれ?モーターの回転音がここまで聞こえるのは、なにかなぁ?
ブルド:アレフぅぅぅ…
アレフ:ごめんごめん。からかいすぎたね
ブルド:(舌打ち)そうだよ、俺はライラが好きさ
アレフ:やっぱりね〜
ブルド:ただ、片想いだと思うしよ…半ば諦めてんだ
アレフ:そんなことないと思うよ?
ブルド:は…?!
アレフ:「ブルドと遊ぶのはヤダ」って言ってただろ?その時、ライラの表情、笑ってるようだったよ
ブルド:はぁぁぁ?!
アレフ:きっとライラも、ブルドのこと好きなんだよ
ブルド:…だったら、尚更強くなりてぇ
アレフ:なら、ブルドがライラを守ってあげられるように、俺頑張るね
ブルド:お、おう!頑張れよ!………マスター。
アレフ:え?今、なんて…
(間)
アレフ:行っちゃった…
(間)
アレフ:できた……できたぞぉぉ!
キール:マスター、やりましたね!
ブルド:ようやくか
ライラ:え?なになに?なんの騒ぎ?
アレフ:ついに!やり遂げたぞぉぉ!
キール:マスター…私、感無量です…
ブルド:アレフ。さっそく埋め込んでみてくれ
アレフ:うん!
キール:チップを入れるのは、何ヶ月ぶりでしょうか。
ライラ:なになに、なんのチップなの?
アレフ:ひ・み・つ!俺からライラへのプレゼント
ライラ:もしかして、キールのご飯食べられるの?!
ブルド:だといいな
ライラ:うん!
(間)
アレフ:ん?…なんだ?
ブルド:これは、車の音?
キール:なんでしょう…この轟音…
アレフ:ん?…なんか、こっちに近づいてくるような
ブルド:ちょっと外見てくるわ
ライラ:気をつけてね?ブルド
ブルド:あぁ。
アレフ:止まっ…た?待て、ブルド!戻れ!
ブルド:あ?
ニクス:…やっぱりそうだったか。
ブルド:…なっ!?誰だ!
ニクス:黙れ、害虫が
テーザー銃の発砲音…。
ブルド:うぐっ?!
キール:え…?!
ライラ:ブルド!
アレフ:何だ?!
ブルド:く、そが、テメェ………
ニクス:黙れ
テーザー銃の発砲音…。
ブルド:がはっ、…こ、コアを、やられた!
ライラ:ぶ、ブル、ド?
キール:何者だ!
ニクス:テメェらに名乗る名はない。まぁ安心しろ…殺しはしねぇ。
アレフ:ニクス?…なにしてんだ?お前…
ニクス:粛清だよ。犯罪者のな
キール:マスター!危ない!
テーザー銃の発砲音…。
キール:ぐぅ?!
アレフ:キール!
ニクス:ちっ、もう弾切れか…
アレフ:ニクス!
ニクス:あ?なんだよ
アレフ:なんでこんなことをするんだ!
ニクス:よくもまぁ平気でそんなことをほざけるな…アレフ!
アレフ:っ!!
ニクス:ヒューマノイドに感情をもたせ、それを隠し…対バインドサウンドなるものを作った。許されざることだ
アレフ:………
ニクス:アレフ。お前には逮捕状が出てる。
アレフ:……いつかは、こうなると思ってた。まさか、今日だなんて、ね。
ニクス:来い。アレフ
アレフ:ニクス、なんで俺が、ヒューマノイド改造をしたことがわかった
ニクス:お前、俺とニュースについて話してた時、こう言ってたよな?
(間)
ニクス:簡単にできそう…ってな
アレフ:ははは…なかなか鋭いね、ニクス
ニクス:すまない。それが引っかかって、盗聴器をつけさせてもらった。
アレフ:…俺は、処刑されるのか?
アレフ:なぁ、ニクス
ニクス:あ?
アレフ:俺の、ヒューマノイドはどうなる?
ニクス:当然、殺処分される。お前のヒューマノイドはシンギュラリティーを達成してしまった。
アレフ:…そうか
ニクス:ほら、そろそろ行くぞ
アレフ:なぁ、ニクス
ニクス:なんだ?
アレフ:お願いがあるんだ。
アレフ:……この『3人』を、自由にしてやってくれ
キール:…え?!
ブルド:な、に?!
ライラ:…マスター?
アレフ:無理な願いってことは分かってる。でも、頼む。ニクス…見逃してやってくれ……。俺の、大事な家族なんだ………頼む。
ニクス:…そうか。
ニクス:なら、この場にいたのは、お前1人だ。ヒューマノイドはいつの間にかどこかへ行ってしまった。そういうことにしよう。
アレフ:助かる…ありがとう。ニクス
ニクス:ほら、もう行くぞ。
キール:マスター…マスター!
ライラ:マスター!行かないで!
ブルド:ぐっ、アレ、フ……
アレフ:……さよなら。みんな
fin……