【短編台本】帷の怪盗
男2:女2:不問0
■ 概要
ジャンル:恋愛
公演時間:15分
※ ()の中の文は動作や描写
■配役
N)クイーン:夜の帷が降りる。私は今日も、大好きなあの怪盗を待っている。あの怪盗に早く会いたい。惹き込まれるような甘い声と…香水の匂い。もしも、今この瞬間に会えたなら…。そんなことを思っていると、闇夜から1枚のトランプが飛んできた。
クイーン:え、トランプ?…
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※ジョーカー役が独白
針交わる刻...
愛しき宝を
頂きに参る
怪盗ジョーカー
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N)クイーン:そのトランプを見た時、あの怪盗と初めて会った日のことが鮮明に蘇ってきた。そうだ、あの日は、たしか────
■5年前…
ジョーカー:Good evening…ロンドン。
(ジョーカーはビルの屋上に降り立つ。)
ジョーカー:待ってろよ…漆黒の金剛石…
●クイーン家:PM22時50分
【✿】電車の音
クイーン:〜♪(鼻歌)だいぶ涼しくなってきたな〜。
(間)
クイーン:もうすぐ、秋ね…
ニュース:ここで速報が入りました!なんと先日、セカンド博物館に怪盗ジョーカーから予告状が届いていたとのことです!
クイーン:えっ?!ジョーカー様?!
二ュース:情報によりますと、ジョーカーは本日セカンド博物館に展示が開始される、漆黒の金剛石が目的とのことで、警察は厳戒態勢で…
クイーン:あのジョーカー様が、ついにこの街に…もしかして、奇跡的に見れたりしてっ…きゃぁぁぁぁ♡
●セカンド博物館:PM23時00分●
キング:おいエース!遅いぞ!
エース:す、すみませんっ
キング:まったく、最近たるんでるぞ!
エース:たるんでなんていませんよ…
キング:いいや!たるんでる!なんだそのヨレヨレの制服は!
エース:ほえ?!…ほ、ほんとだ
キング:(大きなため息を吐く)
キング:あのなぁ、今日はなんの仕事を任されたか、忘れたのか?
エース:え、えーっと…博物館の守衛、ですか?
キング:うむ、概ね正解だ。
エース:やったぁ!私って天才〜
キング:馬鹿野郎!一番大切なことを忘れてるってんだ!
エース:一番、大切なことですか?
キング:(また大きなため息を吐く)
キング:先日、ここセカンド博物館に怪盗ジョーカーから予告状が届いた。
エース:え、あの【冷血のマジシャン】とまで呼ばれるジョーカーからですか?!
キング:あぁ、そのため国内外問わず、総勢6000を超える警官たちが集まった。
エース:確かに、街のいたるところに警官がいますね。
キング:そして、予告状にはこう書いてあった…。【帷が満ちし時、【漆黒の金剛石】を頂きに参上する。守れるものならば、守りきってみるがいい。 怪盗ジョーカー。】とな。
エース:かなり挑発的ですね。
キング:あぁ、完全に警察を舐めてやがる。俺はなんとしてでも、あのクソ野郎を逮捕し、豚箱の中に放り込んでやりたいんだ。お前も俺の相棒ならこれだけは肝に銘じておけ。「自分がジョーカーを捕まえてやる」とな。
エース:先輩…カッコイイです!私、精一杯頑張ります!
キング:やっと、わかってくれたんだな。
エース:はい!ジョーカーが現れたら、すぐ先輩に連絡できるようにパズルゲームは控えますね!
キング:…もう貴様とは相棒解散だ。
●ビッグ・ベン付近:PM23時30分
【✿】電車の音
ジョーカー:満月…か。今宵の舞台にピッタリな月だ。風向きも上々。さあてと…
(ジョーカーは指を鳴らす)
ジョーカー:レッツ…ジョーカータイム…♪
●セカンド博物館前
エース:ジョーカー、まだ来ませんね。
キング:焦るな。奴はいつどこから来るかわからない。常に気を引き締めておけ。
エース:わかりました…。
(間)
エース:先輩?
キング:あ?
エース:先輩は、ジョーカーを見たことはあるんですか??
(間)
エース:あれ?先輩?
キング:答える必要はない。いいかげん私語を慎め。
エース:さっきまで先輩も喋ってたくせに。
キング:あ?
エース:……はい、すみませんでした。
(少し長めの間)
エース:先輩?
キング:なんだ?
エース:お、お…
キング:なんだよ、ハッキリ言え
エース:…おしっこ。
キング:とっとと行ってこい!(怒)
エース:はい!
(エースは博物館内に入る)
キング:まったく…。アイツは忍耐力といい責任感といい、警官に必要な要素が何一つ感じられん。
(と、そこに警官が歩いてくる。)
警官:お疲れ様です!キング警官!
キング:ん?失礼だが、君は誰だ?
警官:はい!フランス パリより参りました!シリウス・カースと申します!
キング:カース君だね。
警官:よろしくお願いします!
(2人は握手する)
キング:いい返事だ。カース君はここの警備担当かな?
警官:はい!入ったばかりの新人ですが、よろしくお願いします。
キング:入ったばかりで館内警備?!若いのに優秀だな。
警官:優秀だなんてそんな…あ、これ身分証です。
キング:少なくとも俺の相棒よりは優秀だ。うむ、通ってよし。
警官:あはは…。では、失礼します!キングさんも頑張ってください!
(警官 館内に入る)
キング:いやぁ…実に誠実な青年だ。未来は明るいなぁ…
●セカンド博物館内:PM24時00分●
ジョーカー:…侵入成功。
(間)
ジョーカー:キング・エバンズ…。武闘派という噂があるため警戒していたが…。期待はずれだったな。さてと…
ジョーカー:いよいよチェックメイトだ。
(ジョーカーは走り出す!)
エース:ふぅ…スッキリした。
エース:先輩、トイレぐらいで怒らなくてもいいのに…。
【✿】走る音
エース:ん?先輩かな?…
ジョーカー:げげっ…
エース:あ、あ!あぁぁ!
ジョーカー:クソっ!こんなとこにもサツが
エース:と、とまれぇぇ!(エースは警棒をブンブン振り回す)
ジョーカー:最短で漆黒の金剛石まで行くしかねぇか!
エース:と、とまれぇぇ!
ジョーカー:互いに視界をゼロにするか。おらぁ!
(煙玉が爆ぜる)
M)エース:け、煙玉?!
エース:きゃぁぁぁ!
ジョーカー:じゃあな。
エース:ヤバいヤバい!先輩に早く伝えないと…
●セカンド博物館前PM 24時03分●
キング:遅いな、エースのやつ。まさか迷子になってるわけじゃねぇよな。いや…アイツならありえる。一応…連絡してみるか
エース:た、た、大変ですぅ〜!!
キング:みっともない走り方をするな!
エース:ジョーカーです!ジョーカーが現れました!
キング:なに!?
エース:だからジョーカーです!
キング:馬鹿野郎!!なぜここに戻ってきた!なぜ追跡しなかった!
エース:だって、煙玉で視界を奪われて…それに私じゃ捕まえることなんて
キング:もういい!ジョーカーは今どこにいる!
エース:展示室かと!
キング:エース!援護しろ!拳銃の準備だ!奴を止めるぞ!
エース:は、はい!
ジョーカー:悪いが、もうお宝は頂いたぜ?
エース:あ!
キング:逃がすかァ!怪盗ジョーカー!
(キングはナイフを抜き、ジョーカーの前に立ち塞がる)
ジョーカー:どけ、邪魔だジジイ
キング:怪盗ジョーカー。ここで無力化する…
ジョーカー:まぁ、そう簡単には逃がしてくれないよな。
エース:っ!(銃を向ける)
ジョーカー:ん?
キング:エース!撃てぇ!
エース:っ!
【✿】銃声
ジョーカー:シュッ…危ねぇな…
キング:かわした、だと?!
エース:そんな…
(雰囲気が変わり、ジョーカーの声が低くなる)
ジョーカー:戦闘は嫌いなんだが。そっちがその気なら…死んでも文句言うなよ?
キング:な、なんて殺気だ。さすがは"冷血"…。凍てつくような眼してやがる…
ジョーカー:5秒で終わらせる。(突進)
M)キング:は、はやい!
ジョーカー:イギリス最強も、こんなもんか。
キング:ぐぅっ!?
M)キング:いつナイフを抜いたんだ?!
エース:先輩!
ジョーカー:ほら、燕返しだ…もう一撃くらっとけよ
キング:がはぁぁぁ?!(吐血)
エース:先輩…!
ジョーカー:もう終わりかよ。つまらねぇなぁ…
キング:ま、てぇ…
(ジョーカーの声色が戻る)
ジョーカー:待たねぇよ。じゃあなキング・エバンズ。
キング:逃が、すか!エース、銃を貸せ…
エース:は、はい。
キング:くらえ、ジョーカー…
【✿】発砲音
【✿】金属音
ジョーカー:なにっ?!
M)ジョーカー:クソっ、翼が!だが、これならまだ飛行できる!
(ジョーカー 飛び去る)
キング:クソ、やられた…。
●クイーン家PM24時15分●
クイーン:なんか、外が騒がしいな…
【✿】ドサッ!と落下音
クイーン:え?!
ジョーカー:いてててて…
クイーン:え?…ええぇぇ?!
ジョーカー:あ?何見てんだお前
クイーン:あ、う、その…
ジョーカー:クソ、翼が折れかかってやがる。めんどくせぇ…
クイーン:も、もしかしてジョーカー様ですか?
ジョーカー:だったらなんだ?警察にでも通報するつもりか?
クイーン:いやいや!そんなことしませんよ
ジョーカー:ふぅん。変わった奴だな。
クイーン:…
ジョーカー:あ、あとちょっとの間、屋根貸してくれ。すぐいなくなる。
クイーン:え?!あ、はい。
ジョーカー:……(作業をする)
N)クイーン:ジョーカー様…綺麗な目。映像よりめちゃくちゃイケメン!それにいい匂い…
ジョーカー:おい
クイーン:は、はい!
ジョーカー:さっきから何ジロジロ見てんだ?
クイーン:あ!ご、ごめんなさい!
ジョーカー:(見つめる)
クイーン:う、あ。
ジョーカー:お前、意外に可愛いじゃん
クイーン:えっ…
ジョーカー:(羽の修理に戻る)
N)クイーン:可愛いって言われちゃった!きゃぁぁぁ!
ジョーカー:…体くねくねさせて、変なやつだな。
クイーン:あ、あの。
ジョーカー:あ?
クイーン:私、ジョーカー様のこと…
ジョーカー:無理
クイーン:答えるの早い…最後まで言ってないのに…
ジョーカー:当たり前だろうが…年齢とかそれ以前に、俺は怪盗だ。一般人と恋なんてできねぇよ。
ク:そんなことないです!
ジョーカー:さすが子供。考えが短絡的だ。
クイーン:…(じっと見つめる)
ジョーカー:それに、俺の女になるってのは、自分の人生を全て棒に振るってことだぞ?命の危険もある。
クイーン:そんなこと分かってる!でも私、ジョーカー様が好きなんです!
ジョーカー:(無言)
ジョーカー:…そうか
クイーン:…?
ジョーカー:冷血のマジシャンとまで言われた俺が、こんな気分になるなんてなぁ。
クイーン:え?
ジョーカー:この、なんともいえない胸の、フワリとする感覚。悪くない。
クイーン:ジョーカー、さま?
(間)
ジョーカー:予告する。
【愛しき宝成人迎えし時、闇夜より頂きに参上する。】
クイーン:え…それって
ジョーカー:じゃあな。
(ジョーカーは飛び立つ)
クイーン:あのー!それって嘘じゃないんですよねー?!(叫ぶ)
ジョーカー:(微笑む)
クイーン:…(見上げる)
※ 「行っちゃった…」等 付け加えてもOK
■現在
クイーン:思い出したら…ますます会いたくなっちゃった…
ジョーカー:よぉ、何シケた顔してんだ〜?
クイーン:えっ?!
ジョーカー:元気だったか?
クイーン:え、えっ?!
ジョーカー:約束通り来たぜ…お嬢さん(ニヤッと笑いながら)
クイーン:ジョーカー、様…
ジョーカー:行こう、クイーン。
N)クイーン:私は、静かに、愛しい怪盗と唇をあわせた。
Fin……