【声劇台本】最後のチェックメイト
───公演時間:25〜35分
──男3:女1:不問2
■配役
●ジョーカー:男
・『冷血のマジシャン』と呼ばれる大怪盗。クイーンとタッグを組み世界各国を飛び回っている。
●クイーン:女
・『冷血の懐刀』と呼ばれる女性。ここ数年でかなり力をつけてきたが、たまにやらかす。
●ローグ:男
・全身に蛇の刺青が入っている。イタリア出身の殺し屋。ローグをみたら最期…。というフレーズがある。
●雷豪 銅傑(らいごう どうけつ):男
・裏社会を統べる者。ジョーカーの殺害を目論んでいるらしい…。静と動を具現化したような人物。
●エース:不問
・以前キングとバディを組んでいた新人。今や立派な警官となった。
●クラウン:不問
・エースとバディを組んでいる新人警官。エースを心の底から尊敬している。
──────────────────────
※ SE とは効果音です。読まなくてOKです!
【N】は独白です。
SE:(ドアのノック音)
雷豪「入りたまえ」
エース「…失礼します。雷豪様。」
クラウン「……」
雷豪「奴の尻尾は掴めたか?」
エース「いえ、まだこれといった情報は…」
雷豪「チッ(舌打ち)…」
エース「申し訳ありません。」
雷豪「ロンドンから遥々来ておきながらこのザマか。使えぬゴミ共め」
エース「おっしゃる通りです。」
クラウン「……」
雷豪「私には、時間がないのだ。わかっているな?」
エース「はい。」
雷豪「この命が燃え尽きぬうちに、奴の息の根を止めねばならん。」
(間をあけて)
雷豪「…あと3日だ。それで成果を出せぬのであれば……殺す。」
エース「御意。」
雷豪「早う行け。酒が不味くなる。」
エース「…失礼しました。」
エースとクラウンは【王の間】を後にする。
雷豪「……(酒を一気飲みする)」
雷豪「冷血のマジシャン…貴様は今、どこにいるのだ」
エースとクラウンが廊下を歩いている。
クラウン「雷豪銅傑。噂通り妖怪のような男でしたね。」
エース「そうだね。」
クラウン「それにしても、何故俺たちがあの男にペコペコしなくちゃいけないんですかねぇ」
エース「………」
クラウン「エースさん?」
エース「…金だよ。」
クラウン「えっ?」
エース「5年前、イギリス警察は雷豪に買収されたんだ」
クラウン「えっ、ば、買収?!そんな話聞いたことないです…」
エース「知らないのは当たり前だよ。当時雷豪がメディアに圧力をかけたのさ。だから表向きには報道されなかった。」
クラウン「そんな…」
エース「…今やイギリス警察は、雷豪の犬同然さ。」
クラウン「…俺、小さい頃から警察になるのが夢で、やっとの思いで警察になれたのに…」
エース「…キングさん、戻ってきてくださいよ。僕じゃ、キングさんの代わりなんて…」
SE:(電車の音)
クイーンは静かに寝息を立てている。
ジョーカー「クイーン」
クイーン「ん、んん…」
ジョーカー「いいかげん起きろ」
クイーン「もう、朝なの…?」
ジョーカー「いや、もう昼だ」
クイーン「そう…。」
クイーンは大きく伸びをする。
クイーン「おはよう、ジョーカー様」
ジョーカー「ああ、おはよう。」
(少し間をあける)
ジョーカー「昨日《きのう》撃たれた傷はどうだ?痛むか?」
クイーン「ええ、少しね」
ジョーカー「弾は取ってある。だがしばらくは安静だ。戦闘はできるだけ避けろ」
クイーン「わかってるわよ。でも大丈夫よこのくらい」
ジョーカー「ダメだ!無茶をすると傷口が開く。それに…」
クイーン「それに?」
ジョーカー「とにかく、俺の言うとおりにしろ」
クイーン「ん〜気持ちは嬉しいけど、この稼業に血はつきものよ」
ジョーカー「…」
クイーン「このぐらいの傷、明日には塞がってるわよ」
ジョーカー「…(少し笑って)変わったな。クイーン」
クイーン「そりゃ変わるわよ。あの夜から5年も経つのよ?いつまでも子供じゃないの!」
ジョーカー「そうか…もう5年か」
クイーン「そう。だから"懐刀"の名に恥じぬ働きをしないとね〜」
ジョーカー「そのわりには銃弾はかわせない、白兵戦もまずまず…」
クイーン「う、うるさい!」
ジョーカー「おまけには、ドジときた。"懐刀"には程遠いな」
クイーン「ど〜せ私はドジですよ〜だ!」
ジョーカー「そう拗ねんなよ〜(笑)可愛い顔が台無しだろうが」
クイーン「む〜、私だって…いつかジョーカー様みたいに…」
ジョーカー「(小声)へっ、まだまだ子供じゃねぇか…」
クイーン「ん?なんか言った?」
ジョーカー「なんでもねぇよ。ほら、飯にすんぞ」
クイーン「はーい」
クイーンが食事をしている間、ジョーカーはコーヒーを飲みながら、雑誌に目を走らせている。
クイーン「んっ、これおいしい」
ジョーカー「……」
クイーン「ジョーカー様」
ジョーカー「なんだ?」
クイーン「今日もご飯美味しい」
ジョーカー「そうか、よかったな」
クイーン「ん〜これもおいしい!」
ジョーカー「言っておくが、来週の飯当番はクイーンだからな?」
クイーン「んぐっ!忘れてた…」
ジョーカー「まったく…。食べ終わったら、明日の作戦会議だ。」
クイーン「は〜い」
N)ジョーカー「最近、俺は逡巡している。たしかにクイーンは、強くなった。5年前まで恐怖でピーピー泣いてたあのクイーンが、今じゃ喧嘩自慢のチンピラ程度なら、完封できるほどにまで成長しやがった。ただ、自信がついてきたからなのだろうか。最近無茶をすることが多くなった気がする。昨日の銃創だってそうだ。クイーンには援護に回ってもらうべきなのだろうか。それとも今までどおりにするべきか……。どうすればいいんだ」
クイーン「ごちそうさまでした!じゃあ、さっそく始めましょ」
ジョーカー「ああ。資料を持ってくるから待ってろ」
ジョーカーは雑誌と数枚の資料を広げる。
ジョーカー「今回のターゲットは、『聖剣ジュピター』だ。」
クイーン「せーけん じゅぴたぁ?」
ジョーカー「17世紀にフランスで発掘された秘宝だ。かつてフランスの帝都で、英雄と呼ばれた男が邪龍を撃退する際に使用した剣らしい。」
クイーン「へぇ〜伝説の剣ねぇ…」
ジョーカー「その剣が先週オークションに出品され、60兆円で落札された。」
クイーン「ろ、ろくじゅっ?!一体誰が…」
ジョーカー「落札者は、裏社会のフィクサーである『雷豪銅傑』。」
クイーン「えっ?!雷豪って、超ビッグネームじゃない!」
ジョーカー「そして明日、奴は会社のクルーズ船で秘宝の展覧会を行うらしい」
クイーン「そこを叩くのね」
ジョーカー「ただ、ひとつ問題がある。」
クイーン「裏社会主催ってところ?」
ジョーカー「そうだ。当然護衛がいるだろう。」
クイーン「面倒ね。まぁ私たちなら大丈夫よ」
ジョーカー「雷豪クラスともなれば、護衛は全員武闘派の可能性が高い。」
クイーン「…戦闘は極力避けた方がよさそうね」
ジョーカー「ああ。だからこいつを使う」
SE:(コトッとなにかを置く音)
クイーン「これって、煙玉?」
ジョーカー「違う。…これは『パラライズA4』っていうんだ。」
クイーン「ぱらら、何?」
ジョーカー「パラライズA4」
クイーン「痺れさせるってこと?」
ジョーカー「そういうこと。ローリスクに遂行するなら、これが最適解だと俺は思う。クイーンはどうだ?」
クイーン「賛成よ。それでいきましょ。」
ジョーカー「決まりだな。」
クイーン「う〜!ワクワクしちゃう!早く明日にならないかしら。今から武器のメンテナンスしておきましょ!」
ジョーカー「(少し笑って)そうだな。」
N)ジョーカー「俺はこの時、微かな胸騒ぎを覚えていた。そして、その胸騒ぎは…最悪な形で現実となってしまうことを、この時知る由もなかった。」
SE:(ドアのノック音)
雷豪「入りたまえ。」
エース「失礼します。雷豪様。」
雷豪「さて、何か掴んだか?」
エース「いえ、これといったものは…」
雷豪「ちっ(舌打ち)…」
エース「申し訳ございません、」
雷豪「ふん…貴様の謝罪も、もう聞き飽きたわ。」
クラウン「………」
雷豪「貴様らには深く失望した。」
エース「ただ…」
雷豪「ただ…なんだ?」
エース「雷豪様宛に、これが。」
雷豪「なにぃ?私宛だと?」
雷豪はエースから1枚の紙を受け取った。
そして読み始めた。
─────────────────────
(ジョーカー役 独白)
残光消えつつありし夕刻
聖剣ジュピターを 頂きに参る
怪盗ジョーカー
──────────────────────
雷豪「くくく…はーっはっはっはっは…」
(雷豪はしばらく笑う)
雷豪「私も随分と舐められたものだな…。笑いが止まらんよ…」
雷豪は予告状をくしゃくしゃに丸める。
雷豪「明日が奴の命日。女諸共消し去ってくれるわ」
N)クラウン「クソ怖ぇ…つか殺気エグすぎる…」
雷豪「さて…もうお前たちは用済みだ」
エース「えっ…?」
クラウン「は?…」
雷豪「失せろ」
エース「ど、どういうことですか?!」
雷豪「私が嫌いな言葉は【不必要】。奴から予告状が届いた今、もはや貴様らは不必要なのだよ。」
クラウン「…んだとテメェ!」
エース「クラウン、やめろ」
クラウン「もう我慢ならねぇ!テメェ、もういっぺん言ってみろ!」
雷豪「不必要。そう言ったのだよ。」
クラウン「ふざけるな!俺たちがどんだけテメェに尽くしたと思ってんだ!」
雷豪「尽くした?笑わせるなよ小僧。この世は結果が全て、貴様らは糠に釘も同然。」
クラウン「こんの野郎…っっっ」
と、【王の間】にひとりの男が入ってきた。
ローグ「働かざる者食うべからず。成果無き者存在するべからず。」
N)クラウン「なんだっ!?コイツっ!足音も気配もない!」
N)エース「この男は、まさか…」
ローグ「失礼致します。雷豪様…」
雷豪「よく来てくれた、ローグよ」
ローグ「貴方様のご依頼ならば、たとえこの身が爆ぜようと任務を遂行致します。」
雷豪「頼もしいな。そこの無能たちとは違う」
クラウン「ちっ…」
エース「クラウン。帰るぞ」
クラウン「えっ、エースさん?!」
エース「もう、僕たちがやることはない。」
クラウン「しかし!」
ローグ「四の五の言わず、早々に立ち去れ」
エース「………行くぞ。クラウン」
クラウン「エースさん!」
エース「……」
ローグ「(鼻で笑う)やはりキング・エバンスは無能だったようだ」
エース「…っ!(立ち止まる)」
ローグ「イギリス最強…なんとも低レベルだ。後輩がまるで育っておらん。」
クラウン「(小声)好き放題言いやがって…」
エース「おい。」
ローグ「んん?」
(間をあける)
エース「今、なんていった?先輩が…無能だって言ったのか?」
ローグ「そうだ。怪盗ごっこをしている輩に手も足も出なかったそうではないか」
エース「…取り消せ。」
ローグ「なぜ取り消す必要がある。教育者が無能ならば、教え子も無能…」
エース「ローグ。言っていいことと悪いことがあるぞコラ」
ローグ「何も間違ったことは言っていない。私はただ、事実を述べたまで。」
エース「ローグ…それ以上先輩のことバカにしたら…どうなっても知らねぇぞ」
ローグ「愚かな。私と殺り合おうというのか…」
エース「殺しはしねぇ。ただ、無力化する!」
エースはナイフを抜いた!
ローグ「警告する。四肢を失いたくなければ、直ちにこの場から去れ。」
エース「はいそうですかって去るかボケ。先輩バカにされて黙ってられるか」
クラウン「……エースさん。」
エース「クラウン、下がってろ。」
ローグ「雷豪様。神聖な【王の間】での無礼を、お許しください。」
雷豪「構わんよ。不必要なゴミは処分しなさい。」
ローグ「承知しました。」
N)クラウン「っ!なんだアイツ…なんでナイフ構えないんだ?! 」
ローグが瞬間移動のように距離をつめる!
ローグ「己の凡庸さを思い知れ…」
エース「何っ?!」
N)エース「み、見えない!」
ローグ「しゅぅぅぅぅぅう…(息を吐く)」
エース「ぐぅっ?!」
N)エース「いきなり深手だ…」
クラウン「エースさん!」
ローグ「斬撃とは、繋がるもの…」
エース「っ!…させるかァッ!」
SE:(ナイフがぶつかる音)
ローグ「ほう…なかなかやるな。だが、ナイフに気を取られすぎだ」
エース「っ!?」
ローグ「発勁だ…爆ぜるがいい!」
エース「がぁぁぁぁ!」
エースは激しく転がる。
クラウン「エースさん!」
エース「ごはっ…(吐血)」
ローグ「肋骨が4本折れたな。これ以上は命に関わる。大人しくロンドンへ帰れ」
エース「く、クソ…がはっ…」
ローグ「そこの青二才。」
クラウン「な、なんだよ」
ローグ「この死に損ないを連れ、ここから消えよ」
クラウン「…は、はい。」
雷豪「ご苦労だった。ローグ。」
ローグ「このぐらい、赤子の手をひねるようなものです。」
雷豪「ふっふっふ…明日も頼んだぞ…」
ローグ「おまかせください。冷血のマジシャンは、私が必ず葬ってみせましょう……。」
SE:(電車の音)
ジョーカー「Good evening…東京…」
クイーン「いよいよですね。」
ジョーカー「ああ。今夜は朧月…。いいねぇ…。」
クイーン「護衛は、うわ…めちゃくちゃいるじゃない…!」
ジョーカー「問題ない。これがある。」
クイーン「ふぅ…(息を吐く)」
ジョーカー「気合い入れろよ?相棒」
クイーン「ええ…もちろん。」
ジョーカー「それじゃあ、行くか。」
ジョーカーは指を鳴らす。
そして、2人同時に…
※ 2人同時に!(せーの で言ってもOK)
ジョーカー「Let's JOKER TIME…」
クイーン「Let's JOKER TIME…」
2人は降下する…。
ジョーカー「くらいな!パラライズA4 投下!」
クイーン「こっちも投下!」
甲板から悲鳴と怒声が聞こえる。
ジョーカー「よし、クイーン行くぞ!」
クイーン「ええ!」
ローグ「愚かな…」
クイーン「っ?!」
ジョーカー「クイーン!避けろ!」
ローグ「まずは女からだ…」
N)ジョーカー「まずい!」
ジョーカー「おらぁぁ!」
ローグ「しゅぅぅぅぅ…(息を吐く)」
ジョーカー「ぐぅ!?」
クイーン「ジョーカー様!」
ジョーカー「大丈夫か!」
クイーン「ええ…ジョーカー様のおかげで無傷です。」
ローグ「今夜は仏滅…。貴様を屠るには良い日だ」
ジョーカー「……なっ!お前は…まさか、ローグか!?」
ローグ「飛んで火に入る夏の虫とはこのこと。今宵、裏社会の歴史が動くことだろう…。」
ジョーカー「おい、クイーン。」
クイーン「なに?」
ジョーカー「お前は、ジュピターを取りに行け。」
クイーン「え?…」
ジョーカー「コイツは、俺が相手をする…」
クイーン「ジョーカー様?…」
ジョーカー「恐らく中には護衛はいない。雷豪1人のはずだ。」
クイーン「…できるかしら。私に」
ジョーカー「できるさ。自分を信じろ」
クイーン「……ええ。ベストを尽くすわ」
ジョーカー「…頼んだぜ、相棒」
ローグ「何をコソコソと話している。時間稼ぎなど無駄だ。2人まとめて骸と化す。」
ジョーカー「行け!クイーン!」
クイーン「やぁぁぁぁ!」
ローグ「無謀な特攻だ…我が刀の錆となれ…」
ジョーカー「お前の相手は俺だよ!これでもくらえ!」
ローグ「しゅっ…」
N)ローグ「クナイか…」
ジョーカー「ばぁ!どうも〜!そしてさよなら!」
ローグ「しゅっ…それでは太刀筋が丸わかりだ。」
ジョーカー「ばーか、本命はこっちさ!」
ローグ「ぐっ!」
ジョーカー「ふっとべ!」
ローグは吹き飛ぶ。
ローグ「…いい蹴りだ。並の戦士ならば内臓破裂だな。」
N)ジョーカー「手応えがなかった。恐らく自ら後ろへ飛びやがったな…」
ジョーカー「面白くなってきたぜ…」
その頃…。
クイーン「はぁ…はぁ…うぐっ…」
N)クイーン「変に回避したから、傷口が開いたわね…」
クイーン「はやく、秘宝を見つけないと…」
(間をあける)
クイーン「ん?…ここかな」
クイーンは扉をあける。
雷豪「…やはりここへ来たか。クイーン・ペトラ。」
クイーン「っ?!あ、貴方はまさか…」
雷豪「いかにも。私は…雷豪銅傑。」
クイーン「やはり、ってことは私を待っていたってことね」
雷豪「話が早くて助かる。」
クイーン「何が望みなの?私の命?」
雷豪「……私の望みは、奴の死。冷血のマジシャン、ジョーカーの死だけだ。」
クイーン「ふぅん、だとしたらその望みは叶わないわ。あの人が死ぬはずないもの。」
雷豪「ふっふっふ…どうかな。」
クイーン「さぁ、死にたくなかったら、ジュピターの在処を言いなさい!」
雷豪「まぁそう焦るでない。銃を降ろして少し、話をしよう。」
クイーン「貴方と話すことなんてないわ」
雷豪「知りたくはないかい?」
クイーン「…?」
雷豪「ジョーカーの、真の顔を…」
クイーン「っ?!…ジョーカー、様の?」
雷豪「君が生粋のジョーカーファンだったということは調べがついている。」
クイーン「いいえ、私は騙されない!そうやって私を誘惑して、不意打ちする気なんでしょ!」
雷豪「…下半身不随の私に、君が殺せると思うかい?」
クイーン「…歩けないの?」
雷豪「私は、もう長くないのだよ。」
クイーン「……」
雷豪「ステージ4の膵臓癌でね…。余命1年と宣告されたよ。」
クイーン「1年…」
雷豪「だが、私には悲願があった。」
クイーン「…悲願?」
雷豪「冷血の…いや…雷豪恭平を殺すというな…」
クイーン「ら、雷豪?!」
雷豪「驚いたかい?まぁ無理もあるまい。」
クイーン「と、いうことは…貴方は…ジョーカー様の…お父さん?!」
雷豪「…もう20年以上も前の話だ。」
雷豪「恭平は、家系で唯一の男の子
だった。
将来は私の後を継ぎ、雷豪一族の恐ろしさを裏社会に轟かせるものだと思っていた。
恭平が、18になるまでは…。」
恭平(ジョーカー)「もうウンザリなんだよ!」
雷豪「恭平!」
恭平(ジョーカー)『もうほっといてくれよ!』
雷豪「奴は、一族を裏切り、怪盗などという低俗な者になりおった…。」
クイーン「………」
雷豪「…私は、許せなかった。息子が与える側ではなく、奪う側になってしまった、ということが。」
クイーン「……」
雷豪「だから、殺そうとした。それが今夜達成される。」
クイーン「…バカみたい。」
雷豪「なにぃ?」
クイーン「親だからって、子供の将来を決めていいわけないじゃない。」
雷豪「バカめ。血筋には、従うべきなのだよ。」
クイーン「…」
雷豪「ましてや、怪盗なぞ笑止千万。奴は一族の顔に泥を塗った。死んで当然…」
クイーン「…いいかげんにしなよ。」
雷豪「あぁ?」
クイーン「ジョーカー様は、貴方を、裏切って正解だったわ。」
雷豪「…」
クイーン「血筋がなんだのと言って、ジョーカー様を縛りつけて、裏切られたら殺す?なにそれ、バカみたい。」
雷豪「なにがいいたい」
クイーン「ジョーカー様は、かっこいいの。貴方と違って、金や権力で人を支配したりしない!ほんとうに死ぬべきなのは、貴方よ!」
雷豪「そうか。なら、引き金を引け。ジュピターなら隣の部屋にある」
クイーン「…ええ、そうさせてもらうわ。」
雷豪「ふっふっふ…先に、地獄で待っているぞ。」
SE:(銃声)
その頃…。
ジョーカーとローグは、上裸で
死闘を繰り広げていた。
ジョーカー「………がはっ」
ローグ「…ごふっ。」
ジョーカー「へへへ、ほらどうしたぁ?ローグゥ、もう終わりかぁ?」
ローグ「まさか、これほどとは…冷血のマジシャン…。」
ジョーカー「俺ァ、まだ2パーセントしか、力出してねぇぜ?…」
N)ジョーカー「とかなんとか言ってっけど…かなりシビアだな…。チャンスはあと1回か…」
ローグ「雷、豪様の…ために…私は!負けられないのだ!」
ジョーカー「いいねェ!正々堂々やるかァ!」
※ ジョーカー と ローグ 同時に
ジョーカー「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
ローグ「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ローグ「もらった!」
ジョーカー「がはっ……っ!テメェも貰っとけぇ!」
ローグ「ごぉっ!ぉぉ…あぁ……」
ジョーカー「燕返しだ!」
ローグ「しぃぃぃ!…当たるかぁ!」
ローグ「おらよっ!チャクラムをどうぞ!」
ジョーカー「そんなん、当たる方が難しい…」
ローグ「なっ!」
ジョーカー「終わりだ!」
ローグ「ぐぅぅ!…かはっ…ぁぁぁ」
(間をあける)
ジョーカー「はぁ…はぁ…はぁ…」
ローグ「ジョーカー、ごふっ…そろそろ…決着つけるか…」
ジョーカー「ああ、そのつもりだよ!」
ローグ「ふぅぅぅ…(息を吐く)」
ジョーカー「さぁてと…」
ジョーカー「そろそろ…チェックメイトだ!」
ローグ「かぁぁぁぁ!」
N)ジョーカー「…見える。太刀筋が…」
ローグ「死ねぇぇぇぇ!」
N)ジョーカー「ここだ…」
SE:(刀がぶつかり合う音)
ジョーカー「イタリア最強の殺し屋…ローグ・ロヴァニス…。」
ローグ「ぐぅぅ…」
N)ローグ「押し込まれっ、」
ジョーカー「じゃあな…。本当に強かったよ…」
ローグ「う"っ…ぁ…がはっ………」
ローグは、倒れ伏す。
ジョーカー「やった、やったぞ…」
クイーン「ジョーカー様ァ!」
ジョーカー「あぁ、クイーンか…」
クイーン「えっ?!血だらけじゃない!…」
ジョーカー「あはは…思ったより苦戦しちまってさ」
クイーン「は、早く闇医者に行きましょ!」
ジョーカー「ああ。そうだ、ジュピターは?」
クイーン「……(少し笑って)ええ。ほら!」
(間をあける)
ジョーカー「そうか…盗めたか。よかっ、た…(気絶)」
クイーン「ちょ!ジョーカー様?!待って、待って待って待って!い、急がなきゃ!」
N)ジョーカー「それから俺は、三日三晩眠ったらしい。眠っている間、クイーンはずっと俺の傍にいてくれたらしい…。目を覚ました瞬間、抱きついてきやがった。」
クイーン「ホントによかったよぉ!」
ジョーカー「お前何回言うんだよそれ」
クイーン「だって、だってぇ…」
ジョーカー「(少し笑って)やっぱ、まだまだガキだな」
クイーン「ガキじゃないわよ…(泣きながら)」
(間をあける)
ジョーカー「なぁ、クイーン」
クイーン「…にゃに? (何?)」
ジョーカー「俺、怪盗やめるよ」
クイーン「……え?なんで急に…」
ジョーカー「お前、雷豪殺しただろ?」
クイーン「え、まぁ、うん」
ジョーカー「それがキッカケで裏社会が大きく動いたらしくて。支配下にあった、世界中の警察が解放されて、急激に力をつけてきたらしいんだ。」
クイーン「そうなんだ。」
ジョーカー「もう危ないことはごめんだし、俺もう戦えないからさ」
クイーン「片目、見えないんだっけ?」
ジョーカー「あははは…」
クイーン「笑い事じゃない!」
(間をあける)
ジョーカー「……なぁ、クイーン。」
クイーン「なに?…」
ジョーカー「俺と、結婚してくれないか」
クイーン「え、え?!え、えええええええ?!」
ジョーカー「これからは、平和にお前と暮らしたい。」
(間をあける)
ジョーカー「クイーン。俺と、結婚してください。」
(長めに間をあける)
クイーン「はい!お願いします!」
fin……