個人で働ける時代にお店がある意味はなんだろう
美容業界でもフリーランスの働き方が一般的になりました。
お客様は担当者に着いていくことが多いため、お店が変わるたびに転々とする。どんな場所でお店なのかは大事ですが、それ以上に誰に切ってもらうかが最重要だと感じています。
美容師のフリーは、好きな時間に働けるし給与も高いのがメリット。それでいて正社員の時とやることは変わりません。むしろお店の業務や後輩への指導がないため拘束時間も短くなります。
そんな美容師のためのフリーランスサロンも増えているため、それなら場所だけどこかで借りて自由にやった方がいいよねとなっています。
こんな感じで検索すればたくさんです。
そんな時代に通常の美容室を作ろうと思いました。それは自分自身が正社員とフリーランスの両方を経験し、関わる人たちにこんな美容室があったらいいなと感じたからです。
フリーランスの敵は孤独と焦り
正社員8年、フリーランス7年やってみた大きな違いはひとりでやるのはなかなかしんどいこと。アシストしてくれる人が充実していることがどれだけありがたいかを痛感しました。
体力的な面もですが、困った時にサポートが少ない働き方は精神的に大変でした。
美容師は目の前の人を幸せにすることが仕事です。そのため、働く本人が楽しんでいなければそれは叶えられないのではと考えています。
体力のある20代は精神的な疲れもカバーしやすいが、低下していく30代からはそれだけで続けるのは大変だと実感しました。
そんな時にすぐ相談したりサポートしてくれる環境ではないため、孤独感や焦りを感じ楽しむ気持ちが度外視されやすい。
目の前のゲストを喜ばせようという発想が欠けてしまったデザインは誰がやっても同じものになってしまう。それでは長く美容師を続けにくい。
全て自分のことを管理するのは向き不向きがあります。ストイックに追い込める人はどの環境でもやっていけますが、そうでない人は誰かに助けてもらう環境が好ましいと感じます。
空間と価値観は満足度に直結する
フリーランスはその人たちが集まる美容室で働きます。いわば個人の集団です。さまざまな考えがあり、いうなら美容師の多様性を感じます。
考えは人それぞれあっていいですが、一緒の空間を過ごすとなれば根底の価値観が同じ方がいいと思っています。
音楽性の違いで解散することアーティストのように、そこが合わない人同士では互いにストレスを感じてしまう。美容室の人間関係トラブルはほとんどこれなんじゃないかと思う。
価値観が同じだと仕事のやり方やゲストへの対応が似ますが、違うとそれがバラバラになる。なので似ている方が居心地のいい空気感を作ることができます。
似た価値観の集まりは、サロンの空気感を統一してよりよいものにしてくれる。ゲストに美容室を楽しんでもらうためにかかせないものだと思います。
スタッフからしてもお店にいけば気の合う仲間がいるだけで気持ちが楽になる。それだけで働きやすさは格段に上がると感じています。
普通に働けることが一番大切
何事もなく毎日働けることはとても貴重だと思います。キラキラしなくても死ぬ気で頑張らなくても、ただ美容師をする。長く続けていくには一番大切なことです。
ゲストも毎回心地よく通え、似たような価値観のスタッフや他のお客さまの中で髪を切る。自分の居場所だと感じてくれたら、もっと気が楽になると思う。
やはり自分の考え方と合う働き方が一番大切。
普通に働く。これはそれぞれ違う基準です。明確なものはないけれど、美容は無理をして追い込んで短期的にやるものではないとは感じています。
そんな当たり前のことを続けるには個人では難しく、それが店舗を構える意味なのかなと考えています。