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三羽の論争は続くにつれて姦しさを増した。
私は大司教に責める目を向けた。
大司教は今度は鍵盤ハーモニカを取り出すとそれを私のもとに持ってきた。
「これで、プロヴァンス民謡の三王行進を演奏してください そうすればあの鳥たちは言うことを聞きます」
まじかーと思いながら、私は演奏を始めた。
御器齧りサイズの鍵ハからでる音は、それでもちゃんとガラスを超えて外に響いているらしかった。

吹き終わると、なるほど三羽とも口を閉じてこちらを見ていた。
影の方は頭上の言葉の渦にほとほと疲れ切っていたようで、もうどうにでもなれといった感じの顔をしていた。
私は調理台の隅で逃げるでもなくうねうねしているノーチラスに声をかけた。
「お前はどう調理されたい?」
ノーチラスは感情の感じられない声で答えた。
「私は私が調理されないことを望みます」
「では海に戻してやろうか?」
「それは私の望むところではありません」
私はそれを聞いて少し苛立った。
「ではお前はこの船で生きながらえて何をしたいのだ?」
「私はただ、死なないことを望みます」
私はよほどそいつをかち割って食ってやろうかと思ったが、それを実行に移すにはそいつはあまりにぬめぬめしていた。
「よろしい、お前の望みをかなえよう」
そういったとたん、ノーチラスの形が変化した。
そいつは私がキノコを齧って御器齧りになる、その前の私の姿になった。
そして私が入っているワイングラスを手で押さえた。
ワイングラスは机の上に伏せておかれていたので、私を閉じ込める格好になった。
そうしてそいつは実に嫌な笑顔をこっちに向けると、
「では私は今からフィギュアヘッドを見つけて捕まえてきますので」
と言って、去った。

私はキレた。
鍵盤ハーモニカで、私が演奏できる最も戦闘的な曲であるところの“パイレーツオブカリビアン”の曲を繰り返し鳴らした。



効き目はあった。
例の三羽がそれぞれ
くわぁ
ぱぉ
じゅぅん
と声高く啼いたかと思うと、窓から数えきれないほどの鴉、雀、鳩が突っ込んできた。
鳥たちは器用に私をグラスごと持ち上げて上から下から支え、ノーチラスのもとへと空中輸送することに成功した。

私はその間中ずっと鍵ハを鳴らしていたが、鳥たちに主の上へと降ろされると、こちらへ向かってくるそいつに対して一声
「明文の無礼者!」
と叫んでやった。

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