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私の答えを聞いて宰相は足を止め、振り返った。
「成る程 そう来ましたか 然しそれも当然か」
一頻り一人で頷いて
「では、トングだけ準備してきますね」
と再び船倉へと向かい、その姿を消した。

「さて、こうなったからには私のやることは一つですな」
公爵は羅針盤の針を12回クルクルと時計回りに回すと、それを近くにあった大砲(20門ほど備え付けられていた)に装填した。
そして私たちが良く分からないまま見守る中で、彼は諸々の作業を行い、そして、轟音と共に羅針盤を発射した。

白煙で遮られた視界が回復した時、水平線に黒いものが見えた。
「何をしたのだ公爵。島だか船だか知らんがどういうまじないをしたのだ?」
「トリップというやつです。そろそろ時空間を移す頃間と思いましてな」
「で、ここはいつの何処だ?」
「ワンスアポンアタイムの海です」
「・・・・・・ではあの黒いのについても何も情報はないと」
「いえ、あれは恐らく船です、それもこちらに敵意を持っている」
それを聞いて慌てて私は黒いのと反対方向へ船を全速力で走らせるよう指示した。
楽師団長、大司教、輔弼大官、内大臣がマストに昇って全部の帆を張る作業に向かい、私と明文と公爵は操舵室に移った。

「何故あれが敵意を持つ船とわかる?」
「女王は娯楽を好むからです」
公爵は舵に取っ付きながら答えた。
「戦闘というのは古来より最も優れたエンターテインメント 女王は恐らくそこのお二人をさっさと戦わせたかったのでしょうが どっちかが女王の面前を場所指定してしまったものですから 別の戦闘要素を突っ込んでくるはずです」
「ではあの羅針盤を艦砲射撃したのは?」
「あれで嵐が呼べます」

本当に嵐になった。
帆を張っていた四人が戻ってきた。
三羽の鳥も一緒だった。
大司教が懲りずにまた鍵盤ハーモニカを取り出してきて、どっちに渡そうが随分悩んだ顔をした末に元通りしまい込んだ。
「この嵐は大丈夫なのか?」
「女王とて我々をこんなところで終わらせることはないと思いますがねエ」
「追っ手はどうなっている?」
「まだ射程外ですがだいぶ近づいてますね」
「ボートはあるのか?」
「未確認ですな 他の方は?」
他の方も未確認だった。

宰相が船倉から出てきた。
右手に相変わらず赤い液の入ったワイングラスを持ち、左手にトングを二つ持っていた。
一本は所謂火ばさみで、もう一本はパンを挟む用だった
「お好きな方をお取りください」
そういって彼は台にトングを置くと、ワイングラスに口を付けた。

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