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絶望的に車中泊に向かないムーブキャンバスを快適な住環境にしてみた


10年近く勤めた会社を辞めて、北海道に移住した。
幸いなことに移住先で良縁があり、ムーブキャンバスという車を譲り受けた。

放っておけば毎週ペースで山に行ってしまう私は、会社を辞めたら時間をかけて車中泊しながら旅したいと、かねてから思っていた。

しかし、である。

譲り受けたダイハツのムーブキャンバスは4WDの箱型コンパクトカーだが、車中泊にはめちゃくちゃ不向きだ。

           

ダイハツ工業株式会社


そもそも車内が狭いうえに後部座席がバックドアに当たって倒れない。
この記事のように、ムーブキャンバスで寝ようとする試みはあるものの、どれも「う~ん」という感触ばかり。



とはいえ、他の車を買う資金的余裕もなく、ムーブキャンバスは所与の条件と割り切り、知恵を絞りつつこの絶対的不利な状況を打開しようと決意した。




何のために車中泊するのか


まず考えるべくは、車中泊の目的である。
目的が明確になれば、求められる車中泊のスペックも決まってくる。

私は、毎月の給料と引き換えに自由な時間を手にすることで、

  • 日本中を登山しながら車で旅したい

  • 山スキーしたい(日の出とともに雪山にいって、フレッシュパウダーをがぶがぶしたい)

と、常々思っていた。

要するに、好きな時に好きなところに行きたい、という単純なことなのだが。

これらの目的に合う車中泊のスペックは、

① オールシーズン、日本中を1人で長期間快適に旅でき、
② 厳冬期の北海道でも寝泊りができるレベル

とした。

結果から言うと、身長177cmの私でも、①のレベルはクリアできた。

今後は細かい課題をあぶりだし、改善したのち、②のレベルまでもっていきたいと考えている。

さて、仕様は決まった。

その後は具体的にどんな装備を付けていくのか、研究が始まった。
車中泊系の雑誌や書籍を読みあさり、稀にあるムーブキャンバスの車中泊動画を繰り返し拝聴しつつ、装備品をネットショップで探しまくった。

1週間くらいだっただろうか、寝ても覚めても車中泊を想う日々が続いた。その弊害か、ちょっとした隙間や空間を見かけると、「ここ寝れるじゃん」と反射的に口ずさんでいる自分がいた。

それを見た妻は、深いため息をついた。


フルフラットと遮光に全振り


長期の旅を想定する私にとって、車中泊で身体を十分に休められるかどうかは極めて重要な問題である。

「夜を明かすためにちょっと休めればいい」では、やがて疲労が溜まっていき、旅が苦痛になっていく。

いろいろ調べた結果、車内をちゃんとした休息地にするためのポイントは2つ、

  • 寝床をフルフラットにすること

  • マットレスには妥協しないこと

である。



「ビジネスクラスはフルフラットじゃないと勝負にならねえ」

前職の航空会社で、商品企画の部署にいる方がこんなことを言っていた。
もはやビジネスクラスの座席がフルフラットというのは当たり前と認識されている。

ビジネスクラスの価値の本質は、乗客の疲労をいかに軽減させるかにある。

高いお金を払ってビジネスクラスに乗ったからといって、エコノミークラスよりも早く目的地に到着するわけではない。

そうなると、高い運賃を買ってもらうための謳い文句として、快適性が大きな差別化ポイントになってくる。

「飛行機の到着後すぐに仕事ができるくらいには快適ですよ」、というのがビジネスクラスなのである。

だからこそ、エアライン各社はこぞって、自社の座席がいかに優れているかをアピールする。

フルフラットになるかどうかは、機内の快適性を左右する最重要項目の一つなのだ。



翻ってムーブキャンバス。何としてもフルフラットを実現したい。
そのためには段差を解消しなければならない。

思案した結果、以下の解決策に至った。

まず、段差解消マットで大きな隙間を埋め、小さい段差はざぶとんやクッションで埋めていく。



大事なのは上半身を極限までフラットにすることだ。
下半身は多少の段差や傾きがあってもさほど問題はない。


次にマットレス。

運転席の背もたれを倒さずともマットレスを敷けるようにしたい。

巻尺で測ったところ、敷けるマットレスの幅は50cm程度が限界だった。
長さはスペースと身長の兼ね合いから180cm程度が理想。
厚みは、単に寝ることだけを考えれば厚い方が良いが、あまり厚すぎると天井までの距離が短くなり、マットの上で座ることができなくなる。
となると5cmくらいがちょうど良いところか。

あとは折りたためること。
エアーマットは空気の出し入れが面倒だし、寝心地が良くないためできれば避けたい。

これらの条件に合うマットを探していたところ、ひとつだけ見つかった


(↑ もうこれ、コンパクトカーで車中泊するために作られたものでしょ)


最後に遮光。

サンシェードかカーテンで悩んだが、結果的にはすべての窓にサンシェードを付けることにした

カーテンは開閉が楽なのが良いが、光漏れは最小限にしたかったし、断熱性も考慮すればサンシェードに軍配が上がった。

結果、こちらのサンシェード(フルセット)を購入した。



実際に車中泊してみた


まず、助手席のヘッドレストを外し、シートを少し前に出し、背もたれを倒す。



このままで寝れる人もいるかもしれないが、私の場合は頭部と足先がつっかえるし、段差が気になって、とてもではないが寝れない。

次に、段差解消マットを助手席と後部席に設置。
これではまだ少々段差があるので、薄手のざぶとんで微調整。



最後にマットレスを敷く。
上で紹介したマットレスがシンデレラフィットして快感。



寝っ転がってみると、これはもう、ビジネスクラスを超えたと言っても過言ではない

文句なしのフルフラットに、程よい硬さのマットレス。あずましくてわや。

そして、後部座席の段差解消やマットレスの厚みの恩恵により、バックドア側への奥行に数センチの余裕ができ、足元と頭部の圧迫感がなくなったのは嬉しい誤算であった。

身長180cm以下の人なら圧迫感なく寝転がれるだろう。

あとは毛布を敷いてサンシェードを取り付け、USB充電のできるランタンを車内にぶら下げれば完成。





試しに一晩寝てみたが、自宅よりも早く入眠できた。これは暮らせる。

私はやり遂げた。


二律背反こそ人生


ムーブキャンバスはそもそも車中泊向けに開発されていない。
言うなれば、今回の試みは開発者への挑戦であっただろう。

車中泊の願いをカネで解決することは簡単だ。大きい車を買えばよいだけだから。

しかし、(この世界にどれほどいるかわからないが)どうしてもコンパクトカーで車中泊せざるを得ない方もいるだろう。
が、あきらめるのはまだ早い。

今回、ムーブキャンバスでできたことは、おそらくどんな車種でもできるはずだ。

大事なことは、「快適な車中泊がしたい、でも車が小さすぎる。」というような二律背反を抱えても、最適解を見出そうとする態度ではなかろうか。

どんなに不利な状況であっても、工夫と努力次第で納得いく解決策にたどり着ける。
ムーブキャンバスはそのことを教えてくれる車だ。

そんなこいつの良き相方に、私はなってあげられそうだ。




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