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『論理的キュービット』:DXデイリーワード

用語

論理的キュービット

分類

科学技術/ハードウェア

要約

量子コンピュータの誤り訂正機能を使い、複数の物理的キュービットをまとめて1つの安定したキュービットとする仕組み。

解説

論理的キュービットとは、量子コンピュータで使われる物理的キュービット(実際の量子ビット)を複数まとめて誤りを訂正しながら、一つの安定したキュービットとして機能させる概念です。量子ビットは非常に繊細で、周囲のわずかな振動や温度変化など、日常生活でいうと「スマホを落としたときに起こる誤作動」のように、ちょっとした衝撃でエラーが起きやすい存在です。しかし、複数の物理的キュービットを束ね、データの誤りを検出・修正するアルゴリズムを導入することで、より安定的に動作させることができます。これが誤り訂正の考え方であり、その安定的に使えるキュービットを論理的キュービットと呼びます。

私たちのオフィス業務に置き換えるなら、一人の担当者だけに全責任を負わせるとミスが出た際に大問題になるかもしれません。しかし、複数のメンバーがチェックし合う体制をつくれば、多少のミスがあっても全体として正しい成果物が保たれるでしょう。この「複数の人によるミスの補い合い」が、物理的キュービットを集めて一つの論理的キュービットを成立させる仕組みに近いイメージです。

実際の企業事例として、IBM QuantumGoogle Quantum AIなどが論理的キュービットの研究や技術開発をリードしています。たとえばIBMでは、「IBM Quantum System One」という量子コンピュータをクラウドで提供しており、このシステム上でも論理的キュービットを形成するための誤り訂正手法が試験的に導入されています。また、IonQRigetti Computingなどの新興企業も物理的キュービットの安定度向上や誤り訂正アルゴリズムの開発を進めており、いずれは論理的キュービットを使った大規模な量子アルゴリズムの実行が期待されています。

関連トピック

論理的キュービットが注目を集める背景には、「大きな問題を解決できる可能性」を秘めているからという理由があります。例えば、製造業における材料開発や金融業のリスク解析など、従来のスーパーコンピュータでも膨大な時間を要する計算を、量子コンピュータなら短時間でこなせると言われています。ただし、実際に有用な大規模計算を行うには多数の論理的キュービットが必要で、今はその実用レベルに達するまでの道のりの最中です。

現在は、量子ゲート(量子演算の基本単位)の制御技術や物理的キュービットの品質向上など、まだ基礎研究を中心として各企業・研究機関が競争を繰り広げています。たとえばGoogle Quantum AIは「Sycamore(シカモア)」チップを使い、量子超越性を達成したと報告していますが、これも物理的キュービットをより高度に制御した成果です。将来的には、これらの技術をさらに高めて多数の物理的キュービットを組み合わせ、強固な誤り訂正による論理的キュービットを多数実現することで、革新的な計算能力を発揮し、化学・金融・医療など幅広い分野の問題解決に活用されると期待されています。

関連用語

  • 量子コンピュータ: 従来のコンピュータでは扱いが難しい大規模な計算を、量子力学的な性質を利用して高速に解く装置。

  • 量子ビット: 量子コンピュータで扱う情報の最小単位。0と1の重ね合わせ状態が可能。

  • 誤り訂正: データや計算結果の誤りを検出・修正する技術。量子では複数の物理的キュービットを組み合わせる。

  • 物理的キュービット: 実際のハードウェアで実装された量子ビット。イオン捕捉や超伝導など、実現方式はさまざま。

  • IBM Quantum: IBMが提供する量子コンピュータの研究・実用化プラットフォーム。クラウドで実機にアクセス可能。

  • Google Quantum AI: Googleが進める量子コンピュータの研究プロジェクト。Sycamoreチップの開発で知られる。

  • 量子ゲート: 量子ビットを操作して演算を行う際に使われる基本的な演算。

外部参照リンク



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