2020年大統領選挙は「好感度」の戦いになるか
ミソネソタ州のエイミー・クロブシャー上院議員が2020年大統領選挙への出馬を表明した。
日曜日、雪の降りしきるミネソタ州ミネアポリスの野外集会は気温約マイナス9度。以前から大統領選挙出馬がうわさされていたクロブシャー上院議員がアナウンスに選んだ舞台だ。
クロブシャー議員は弁護士・検察官出身。来年の大統領選には民主党の女性がこれまで四人立候補していたが、2007年から上院議員を務める彼女の政界でのキャリアは随一。超党派で粘り強く仕事をしてきて、中西部の人らしいおっとりした口調で安定感がある。ミネソタ州での人気は抜群で、二度の再選も余裕で勝ち取り、大統領選挙のカギを握ると思われる中西部での集票力に期待が集まる。
礼儀正しく、自己主張をしすぎず、意見が合わなくてもはっきりした対立を避けるという典型的なミネソタ州の人を「ミネソタ・ナイス」という表現があるが、彼女の政治スタイルはミネソタ・ナイスそのものと言われてきた。
本人も親やすいイメージが売りで、2015年に出版した自伝のタイトルは「ご近所の上院議員」(The Senator Next Door)。その中で、自分は「相手に不快感を与えずに反対を唱えよう心がけている」と書いている。
その一方で、「ああ見えて実はキツイ」という話がじわじわと広まっている。Huffington Post誌が掲載した「クロブシャー議員のスタッフいじめが理由で彼女の大統領選挙を仕切る参謀のなり手がいない」という記事が話題なのだ。
スタッフへの要求が厳しく、叱責するメールを他の大勢スタッフにもCCして見せしめにする。個人的なアポ取りの電話や自宅での皿洗いやドライクリーニング店から服を取ってくるなどの個人的な用事をさせる。実際、クロブシャー議員のオフィスはスタッフの退職率が全上院議員の中で三番目に高いそうだ。
でも・・・。
私も今までいろいろな(上院議員どころか町の議員でさえない)上司に仕えたが、上司の個人的な用事のアポ取りの電話、自宅での皿洗いや掃除、ドライクリーニング屋に行かされる・・・全て経験がある。いいことだとは思わないが、「だから何?」という感じ。彼女の大統領選出馬の寸前にこんな記事が出て、それを他の媒体も取り上げる騒ぎになっているのはなぜか。
既に五人もの有力な女性候補が出ている今度の大統領選挙は、英語でいうlikability、「好感度」の選挙になるとも言われている。
選挙に勝つには当然いろいろな要素があるが、女性候補の場合は、likable、つまり「好きになれるかどうか」が大きくものを言う。前回、ヒラリー・クリントンは、ドナルド・トランプを相手にした選挙戦の間中、unlikable「好きになれない」候補と言われ続けた。男性の政治家を評価するのには能力や経験が第一に問われるのに、女性の場合は「好かれなければ」ならない、というのだ。
それが本当なら、五人、あるいはさらに増えるかもしれない有力な女性候補の、立場や政策はそれぞれ違うのに、最終的には「誰が一番好感度が高いか」という話になるのだろうか。
昨年末にマサチューセッツ州のエリザベス・ウォーレン上院議員が大統領選挙への出馬を考えていると発表した時、ポリティコ誌は真っ先に「ウォーレンは『好きになれない』クリントンの二の舞を避けられるか」とツイートした(そして批判を浴びた)。
ウォーレン議員は早口でまくしたてる元大学教授。ちょっととっつきにくい感じを意識してか、自宅のキッチンでビールを飲むビデオをインスタグラムで公開して庶民派アピール/好感度アップをねらったようだが無理してる感が強すぎて笑いものになってしまった。
「ミネソタ・ナイス」でふんわりした感じのクロブシャー上院議員は、五人の中では過去のミスも出ていないし、かなり好感度も高い・・・と思っていたら、Huffington Postの記事だ。
民主党サイドはこれからも有力な候補が出てくる見込みだが、一方、共和党はトランプ大統領が再選を目指す。優秀な女性候補は過去の発言、政策のひとつひとつ、それに好感度まで問われる中、トランプ大統領はご覧のとおりの仕事ぶりで、好感度が高いとも思えない。このハードルの高さの違いが現実だ。
参考にしました
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