幼少期男の子編

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ここは、祖父母の家。数日前に、成田遥人は、父より勘当を言い渡されてしまう。その後、紆余曲折あって、祖父母の家に引き取られる事になる。医師の診断の結果、双極性障害という事で、大人しく自宅療養を送る日々。祖父母からは、自由にしていいからねと優しく言われる。親戚のお姉さん達からは、美味い手料理が振る舞われる。何から何まで、至れり尽くせりで、幸せだった。そんな悠々自適な生活の中、遥人は幼き日々に、想いを寄せた。

記憶は、一歳の頃まで遡る。母親に連れられて、車で買い物をしていた。その帰り道に、母親が「ほら!遥人見てよ。川だよ」と声をかける。まだ、乳幼児だった遥人はおもむろに、座席の窓の外から見上げる。すると、巨大なクレーン車を、見上げ思わず、息を飲んだ。あまりの存在感に、それを川だと、勘違いするくらい圧倒されたものだ。

時は流れて、幼稚園の頃。甘えん坊盛りだった遥人は、鉄道好きな幼稚園児だった。機関車弁慶号が好きで、鉄道博士と呼ばれる程の博識ぶり。保育士さんも、それを素直に褒める事で、内向的だった遥人は、懐いた。そんなある時、醜いアヒルの子のビデオを、鑑賞するということで、園児みんなが呼び寄せられる。他の園児達が、ビデオ鑑賞を、今か今かと楽しみにしている。だが遥人は、「いやー、みたくないー」と泣きながら飛び出した。醜いアヒルの子のイジメを受けるシーンが、苦手だったのだ。しかし、保育士さんは、外へ飛び出した遥人を、元いた場所に、無理に連れ戻そうとしなかった。むしろ一緒に、側にいてくれており、それがありがたかった。

それから、少しして、ピーターパンの劇が、行われる事になる。そんななか、遥人はフック船長の手下に、回されてしまう。悪役であるフック船長と手下たちの末路はというと、なんとワニに追いかけられた末に食べられてしまうというもの。この結末を知った遥人はいくら劇の中とはいえ、ワニに食べられてしまうのは嫌だという思いから外へ飛び出してしまう。

それを見かねた保育士さん達はよく話し合いをした結果、フック船長と手下たちをピーターパンとワニが協力して倒しに行くことに改変され、その末に全員が恐れ入りましたという結末には、私のようなワガママな園児一人のために、そうした改変をされた保育士さんは本当に素直に凄いと思った。

続く

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