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ニューヨークの難関2:友達1人でいいからできるかな・・・
私のニューヨーク生活は2020年8月から始まった。
世界がコロナパンデミックの渦中にあった時。
ニューヨークはようやく屋外飲食のみ解禁され始めた時だった。
もちろん、私が通う大学院は全てZoomのオンライン授業。最初の1年目はクラスの半分以上がニューヨーク外から授業を受け、クラスメイトが集まる機会はほとんどなかった。
そして、ニューヨークに住んでいた日本人の知り合いたちは、全員日本に帰国するかニューヨークを離れて郊外に引っ越してしまったのである。
そして私は気づく。
リアルに、マンハッタンに友達が1人もいない。
天気の良い日に公園に行っても1人。
宿題が終わっても1人。
タピオカ買って飲みながら帰る道も1人。
つい1ヶ月前まで、仕事のお昼休憩に先輩とゴンチャに行ってたのに。
すれ違う全ての、誰かと一緒に歩いている人が羨ましくて仕方なかった。
思い返してみると、私はそもそも友達作りが苦手で、日本でも友達と言える人は10人くらいしかいない。30年生きているのに。
つまり3年に1人しか友達が作れない。
これじゃあ、留学期間中なんて、1人も友達ができないのではないか。。。
そんな時、知り合いの人が私を心配して、ニューヨークに最近引っ越して、コロンビア大に留学している人を紹介してくれた。
早速、ブライアントパークで会ってくれることになった。
やっと、生身の日本人に会える。
その人はどうやって、コロナと戦っているんだろう。
どうやって、ニューヨークで生き残っているんだろう。
ようやくこの孤独から解放される方法を見つけられる、と安堵する。
張り切って待ち合わせの時間より早く到着。
そして、遠くから、日本人らしい背格好と服装の男性が現れた。
その隣には、
奥さんと、ベビーカーに乗った赤ちゃんがいる。
その人は私に向かっていう。
「すみません、3人だからウーバー待ってたら、なかなか来なくて遅くなってしまいました。」
眩しい。
眩しいすぎる。
孤独でいつも以上にひねくれた私の心がつぶやく。
「あぁ、この人は私とは違うんだ。」
そのご夫婦は、旦那さんが社費留学でコロンビア大学に入り、奥さんは会社を休職し子供と旦那さんと一緒にニューヨークへ引っ越し。弁護士のため、オンラインで友人の会社の顧問などを続けている。
私は彼らを直視できなかった。
8年勤めた会社を辞め、
自分の貯金(と親の老後の蓄え)は学費に消え、
夫と離れ、
孤独で公園にいるリスに話しかけている私にとって
目の前にいる素敵なご夫婦は、私が失った(と感じている)ものを
全て持っている。
彼らは、コロナ禍1人で引っ越してきた私を、「私たちにはできない」と褒めてくれたし、おすすめスーパーや、レストランなどニューヨーク生活を充実させるための方法をたくさん教えてくれた。本当に優しいいい人たちだった。
しかし、完全に拗ねている私の心はこう言っている。
「この人たちは優しくて当たり前。なぜなら、この人たちは何も失ってない。」
ひきつった笑顔が限界になる前にこのランチを切り上げ、その後そのご夫婦に会うことはなかった。
よく考えると、コロナでいつも以上に治安が悪いニューヨークの中心部に小さい子どもを連れて来るのはとても大変なことだったと思う。それでも来てくれたのは、初めて会う私にも、気を遣ってくれて、力になってあげたいと思ってくださっていたからだと思う。
私はもっと感謝を伝えるべきだったのに。
でもそんなこと、その時の私には考える余裕は全くなかった。
帰り道、私は自分に言い聞かせた。
「留学に友達も家族もいらない。私は、ミュージカルを書くためだけにここに来たんだから。」
こうして、ニューヨークの孤独な生活は、
プライドと劣等感でできた1人のイタい三十路おばさんを生み出したのであった。
つづく