2024年: 念願ハドソンバレー旅②
ハドソンバレーの素敵な1軒家で朝を迎えたのんちゃん、あいさん、私は朝から早速食べ物を探しに出かけた。
どうやら、歩いて5分もしないところにカフェがあるらしい。
家を出ると、雲一つない青空、人っ子一人いない街。
本当にこんなところカフェなんてあるのだろうか。
しかし、Google Mapの言うとおり、5分歩いてみると確かに可愛らしいテラスのある白い一軒家が見えてきて、前に数台の車が止まっている。そして、中に入るとびっくり。
人通りの全くない街とは打って変わって、カフェの中には、人、人、人。
そして、どれも可愛くて美味しそうなパンが並ぶ。
ハンバーガーとチャイを頼んだ私は、カフェに集まる人たちを見て、
"あぁ、これが週末アップステートにいくニューヨーカーの暮しかぁ"
と悦に浸る、完全なおのぼりさんと化した。
朝ごはんを食べ終わると、
前日に作っておいたおにぎりを1人2つずつリュックに入れて
私たちはハイキングへ向かう。
ネットで調べたところ、
「インスパイアポイント」という場所が絶景ポイントで、そこに向かう道が有名なハイキングコースらしい。
のんちゃんの車で、ハイキングコースへ向かう途中、
黄色く染まった紅葉の森の中を走っていると、まるで絵画の世界に迷い込んだようだった。
そして絵画といえば、私は水彩画を始めるために、ホルベインの水彩絵の具を日本から取り寄せたくせにまだ一度も開けていないことを思い出し、打ち明けた。
するとのんちゃんは、編み物を始めようと思い、かぎ針と毛糸を買って満足した、と打ち明けてくれた。
あいさんは、今からでも遅くないから旅行から帰ったら始めればいい、と励ましてくれたが、その後も絵の具は棚の上で眠っており、おそらくのんちゃんの毛糸もベッドの下の棚にでも収納されたままだろう。
私たちは、インスパイアポイントに向かうハイキングコースの駐車場と思わしき場所についた。
そこから沼地を歩き、砂利道を歩き、時に岩場を登ったが一向に"インスパイアポイントこちら"という標識さえ見当たらないまま、また別の駐車場にたどり着いた。そこで交通整備をしているお姉さんに、インスパイアポイントはどこか、と聞くと、私たちの服装を見るなりため息をつき、
「インスパイアポイントはこの道を右に向かってこっから90分ほど歩いてかかる」と言った。
もうすでに30分も歩いているのに、さらに90分なんて…という私たちの反応を待っていたかのようにお姉さんは、
「でも、左に向かえば5分でハドソンハウスという別の絶景ポイントに行ける」
と言われた。
生粋のオフィスワーカーの私たちは、迷いなく左へ曲がった。
その後もただ平な砂利道が続き、本当に5分歩いただけで絶景ポイントが見えるなんて半信半疑だった。
しかし、突然目の前が開け、
視界一面の青空と、地平線のギリギリまで広がるハドソンバレー全体が眼下に現れた。
私たち、こんな高いところにいたんだ。
この時ようやく気づいた。
私たちは早速その景色を前に腰をおろし、おにぎりを頬張った。
やっぱりこれが一番美味しい。
気分は、小学校の時に行った山中湖の林間学校だ。
はるばるハドソンバレーまできて、結局山中湖を感じ落ち着くところから、私たちがいかにアメリカに染まれていないところを感じさせ、またいい。
しばらく、ボケーっと景色を眺め、各々物思いに耽った。
私にも、アメリカで友達ができるんだなぁ、とおにぎりを食べる2人の背中を見て私は嬉しかった。
夜は、みんなで餃子を作った。
餃子をわざわざ作るなんて、もう何年ぶりだろう。
冷凍餃子を買った方が安いし、早いのに、私たちはせっかくお泊まりするなら、みんなで餃子を作ろう!と張り切っていた。
この計画は大成功だった。
大学生の時に友人の家で餃子パーティーをしたことがあり、あれはあれで良かったが、30を超えて金銭的余裕をもって行う餃子パーティーもなかなかいい。
広いアイランドキッチンを囲み、ちょっとだけいい挽肉を餃子の皮に詰めていく。あいさんとのんちゃんはワインを飲みながら、みんなでワイワイ焼いて、今日の紅葉の美しさや、インスパイアポイントまで行かなくて本当に良かったことや、道端で開かれているアンティーク家具のガレッジセールが気になったこと、なんでもないこと、をべらべらしゃべり、
あぁ、もう1週間はここにいたい!
と口々に唱えながら、私たちは各自のペースで眠りについた。
翌日、最終日の日曜日。
昨日とは打って変わって、私たちは洗濯をし、簡単に掃除をし、ゴミを出してAirBnBを後にすると、あいさんは午後から公演のリハーサルがあると、昼には駅でお別れをした。
私とのんちゃんは、近くのダイナーに入り、そこで2時間ほどパソコンを開いて、金夜から土曜にかけてやらなかった、仕事を片付ける。
ここまできて、仕事なんて…とも思うが、結局みんな仕事が好きなのだ。
マンハッタンに戻ると、アパートの木の先っちょだけ紅葉が始まっていた。アップステートから少し、秋の風を運んでこれた気がした。