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ニューヨークの難関1:家探し

2020年8月16日、私はニューヨークJFK空港に到着した。

5年間夢見たニューヨーク生活が始まるのである。
辞めた会社の同僚からも、幼馴染からも、大学のゼミの友達からも、

こんな時に挑戦できるなんてすごい!
輝いてる!
いつか情熱大陸でれるよ!
あなたならどこいっても大丈夫!

と、大層な太鼓判を押されて飛び立ったものの
私の心は絶望で溢れていた。

私はこれから大学院のミュージカル脚本・作詞コースに入学する。
でも、英語苦手だし今まで一度も脚本と作詞を書いたことない。
なぜこんなところに来てしまったんだ。

そして、絶望はさらに深まっていく。

コロナの影響で到着後2週間の隔離が必要なため、私は日本から写真だけ見て住む家を決めていた。多くの留学経験者からは「絶対に現地に行って家を見てから契約したほうがいい」とアドバイスをもらったが、写真綺麗だから大丈夫でしょ、と甘く見ていた。

ついた家の入り口では、ホームレスが座って門番をしてくれていた。
そして、マリファナの匂いが充満していた。
エレベータのない3階まで2年分の日用品を詰め込んだスーツケースを持って登り、殺人現場のように薄暗い廊下を通ってたどり着いたのは、蜘蛛の巣が張り巡らされたアパートの一室。

どこにいっても大丈夫なはずのアラサーは、ホームシックで泣き崩れ
そのまま眠りにつき、深夜に腕に痒みを感じて目を覚ます。

腕にはタダレが。

「あぁ、ベッドバグスプレー買わないと、、、」

これが、5年間夢見たニューヨーク生活1日目。

つづく


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