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全ては、日曜朝8時のコメダ珈琲から
その日私と父は、モーニングセットを食べていた。
私は5年前から大企業に勤め、都内で一人暮らしを始めていた。そんな私が週末に突然実家を訪ね、大切な話があるから、と父と2人きりで車に乗り、郊外のコメダ珈琲に出かけていたのである。
父と私の間には、緊張した雰囲気が流れ、いつもと違って口数が少ない。
全てオーダーが揃ったところで、私は口を開いた。
「ニューヨークでエンターテイメントをもっと学ぶために大学院留学したいから2,000万円貸してほしい。」
父は答える。
「よかった、結婚するって言われるのかと思ったよ。」
その後、コメダ珈琲で父と私は留学とも結婚とも全く関係ない世間話をして久しぶりの父娘水いらずの時を過ごした。
そして、一緒に車に乗り込むと、世界で一番大切なものを失わずにすんだ父は、安堵のあまりつい口走ってしまったのだ。
「夢があることはいいことだから、頑張りなさい。パパにできることならなんでもするから。」
家について、父から話を聞いた母親は当然父に怒るのである。
「私に来るなって言うからそんなことだと思ったわ!2,000万円なんてウチのどこにあるのよ!いい加減、娘に格好つけるのやめなさい。」
こうして私に、アメリカ大学院留学の最難関お金の工面について、強力なスポンサーができ、夢への道がひらけたのである。
ちなみに、もう一つポイントは、私が"エンターテイメントを学ぶため"と言ったところである。エンターテイメントの大企業に勤める私が大学院に行きたいのであれば、当然MBA留学を考えていると父は勝手に思い込んでいた。だから、卒業後うまくいけば貸した分が回収できると甘く考えていた。
しかし、その5年後宣言通り私が入学するのは、卒業生のRobert De Niroですら「自分の孫は絶対に行かせない」と言う、学費が高く就職先はない、とある迷門芸術大学院なのである。
つづく