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狂宴

 某県某市の公立高校で集団自殺が発生した。
 現場は高校裏手の旧体育館。新体育館が校舎隣に新設されたことを受けて旧体育館は来週末にも取り壊しが決まっていた。
 第一発見者は取り壊しを請け負っている解体業者3名。その日は取り壊しの段取り確認のため午前9時頃に旧体育館内に入った。
 入って早々、体育館内中央に数人倒れているのを見つけた業者3人がすぐさま駆け寄ると、同高校の制服を着た十代の男女6人が焚き火の跡のように丸く黒焦げた床を囲むようにして息絶えていた。3人はすぐに警察と救急に通報。
 20分後に警察が到着。遅れて3分後に救急隊が到着し、その場で男女6人の死亡が確認される。
 後の解剖で死亡推定時刻は業者が来る9時間前、つまりは前日の午前0時と断定。また男女共に遺体から睡眠薬の成分が検出される。警察は現場の状況から男女6人が睡眠薬による集団自殺を図ったとして調べを進めている。

 本件において不可解な点が3つある。
 1つは旧体育館内の火災報知器が鳴らなかったこと。旧体育館は現在使用されていないものの、火災対策のため火災報知器は正常に動いていた。現場には焚き火の跡が確認されているため6人は何らかの理由で火をおこしたと考えられるが、火災報知器が作動した記録は残っていない。
 
 2つ目に監視カメラに6人の姿が映っていないこと。旧体育館へのルートは高校の正門から入って校舎を横切り部活棟を通って行く1ルートのみ。そのルートには計6カ所監視カメラがあるがそのどれにも6人の姿は無い。別のルートを使った可能性も考えられるがどんなルートを使おうとも6カ所目の旧体育館脇にある監視カメラに写るはずである。彼らがどうやって旧体育館に向かったかは謎のままだ。

 最後に3つ目。これが本件最大の謎なのだが、遺体で見つかった6人は高校の制服を着用しているものの、彼らが同高校に在籍する、また在籍していた記録はない。身元を示す物的証拠がないため彼らが何者かは未だ分かっていない。

 警察は身元不明の6人がどういった経緯で、またどういった理由で集団自殺を行ったのかについて慎重に調べを進めている。

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