臼蓋形成不全と変形性股関節症の関係
今日も柔道整復師、理学療法士、整体師の方、新人の方に向けて、僕の実際行っていることについて書いていきます
今日は変形性股関節症の病態についてです
変形性股関節症の原因について
人間が四足歩行から二足歩行に進化したことにより股関節は上肢の体重を支持する役割を担っています
そのため、臼蓋が深くなっており、可動性を犠牲にして高い支持性を獲得したとの記載があります
そのため、臼蓋が浅く発達が悪いような、臼蓋形成不全では、支持性が低下することになります
★臼蓋形成不全の影響
臼蓋が大腿骨頭を包み込む比率を骨頭被覆率といいます
臼蓋は前外下方に開いて、大腿骨頭は前内上方を向いている構造で
股関節は前方の被覆率が低い構造になっています
臼蓋形成不全であれば、臼蓋自体が浅いので更に被覆率が低下することが予想されます
臼蓋形成不全患者の股関節で起きること
臼蓋形成不全の場合は、骨頭被覆率、体重の支持性が低下しています
その状態で生活をしていると身体では、代償が起こります
そのため無意識に骨頭前方の被覆率を高める姿勢になることが多いです
これを理解することが重要だと思います
どんな代償(安定性を高める姿勢になる)が起こるのか書いていきます
①骨盤前傾(腰椎の前弯増強)
腰椎の前弯が増すことにより、椎間関節には圧縮ストレスがかかるので、
★椎間関節性腰痛が引き起こりやすい
②股関節屈曲、内転、内旋位
運動連鎖で骨盤前傾になれば、大腿骨が内旋しますので股関節屈曲、内転、内旋位となります
変形性股関節症で起こる可動域制限の原因
①骨
関節面が狭くなることにより可動域制限が生じる
②関節包
変形性股関節になると深層の滑膜に炎症が生じる
炎症修復過程で関節包の短縮が起こり可動域が制限される
③靭帯
腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯いずれかの肥厚、短縮により制限される
この靭帯で屈曲以外の全ての運動を制動しているため、問題があると制限が起こりやすい
変形性股関節症でアプローチするべき筋
①外旋筋群の筋出力低下
伸張位になるため、筋出力が発揮しにくい
骨頭の求心を保つ作用があるので、筋力低下では骨頭が不安定となりやすい
特に梨状筋の緊張が取れると、股関節屈曲時の骨頭の後方すべりが生じやすくなる関係で前面の疼痛が改善されることもある
②中臀筋、小臀筋の筋力低下
中臀筋(特に後部線維)・小臀筋の過活動や筋力低下で
外旋筋の筋力低下に伴い、片脚立位での骨盤制御が困難になり、結果、中臀筋や小臀筋の過活動となりやすい
②大腰筋の筋萎縮
腸腰筋は大腿骨頭を前方から押さえることで臼蓋と大腿骨頭の安定性を向上させる作用がある
また大腰筋は骨盤前後傾に対して、正常位に戻す役割を担っている
過度の骨盤前傾例では、腸腰筋の筋活動が得られにくく筋萎縮になりやすい
腸腰筋の遠心性収縮機能の低下が生じる
③内転筋群の攣縮
中臀筋や小臀筋の筋力低下があり骨盤を支持できない場合に、内転筋群が骨盤を大腿骨に引きつけることにより支持する
この状態が続くと内転筋群に攣縮が起こる
⑤大臀筋の筋出力低下
大臀筋の筋出力が低下した例では、骨頭が前方偏位を生じるとされています
股関節伸展の際に、ハムストリングスと起立筋の筋活動を抑制して、大臀筋の出力をあげる必要がある
まとめ
臨床上、遭遇する機会も多い病態なので考え方やどのような代償動作が起こって、どのような痛みが出やすいのかを理解するようにしています
変形性股関節の患者は腰痛持ちが多いのも説明がつきますね
捕捉ですが、股関節外転動作で、股関節後方に痛みが生じる場合には、大腿方形筋と外閉鎖筋の短縮が原因だそうです
外旋筋ですが、内外転軸の下方を通過する筋なので、外旋+内転作用も有しています
屈曲、内転、内旋位になりやすい変形性股関節症ですので、内転作用のある大腿方形筋と外閉鎖筋も短縮するということでしょうか
よって外転で大腿方形筋と外閉鎖筋が伸張されます
股関節外転で、股関節後方に痛みが生じるケースも説明がつきそうです
知るって楽しいですね
明日も臨床頑張りましょう
ではまた
参考文献 結果の出せる整形外科理学療法
参考文献 運動器のなぜがわかる臨床解剖学
参考文献 変形性股関節症患者の臼蓋形成不全は腸腰筋の筋萎縮と関連する