七七21句 ー2022年の七夕にー
空回りなら桑の実のなか
Veni Vidi Viciと梅雨戻り来ぬ
するめが胸を漏れて端居す
我慢がまんと鼻の涼しさ
犬のふりして花火にさはる
星雲を掻き抱く生御魂
海月あまたの口吸ふ旅へ
線香花火落ちるアガペー
ドーナツ壊れ夏の日の砂
崖の鳥みな輪郭を捨て
合鍵を抜く湖のやさしさ
アイスクリンのはんぶん記憶
鵜を極めたら透明な貌
茄子ひらひらになるまで義賊
揚げ油にほんたうの西日
見知つたピーマンだ窶れたな
口は要らない抱く蛸に似て
烏賊を照らせば擬音の衣
いづれ麦酒は深海のこゑ
ボルヘスの書の滴りやまず
爪赤すぎてダムになつてる
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昨年も七夕に七七句を作ってTwitterに放流したのだが、今年はずいぶん夜遅くなってから七七句の日だと思い出したので、49句あるいは77句まで到達できなかったのが心残りである。
やはり七七はふだんの句作と異なるだけに、定型とは、という問いについて考えさせてくれる。
七七の韻律でなくてはならない詩を、どこまで作れただろうか。翻って、五七五でなくてはならない詩とは如何なるものなのだろうか。
ともあれ、来月の旧暦七七句の日は忘れないようにしなくては。