手はちかく
除夜詣火の粉はとほく手はちかく
去年今年灰の変はらず積もれるを
その顔で信号の色知る霜夜
山茶花さざんくわ夜道まつすぐならざれど
江ノ電を追ひ越し初日へと駆けよ
喉仏なぞる白息まざりあふ
けだものら毛を恥じあひて初寝覚
書初は骨這ふ筆の湿りてより
いかのぼり頭蓋の芯に墨匂ふ
雪が降りさう白髪抜きあふえいえん
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近くて遠いものについて、ときどき考える。
いちばん身近なそれは手だと思う。自分の手、誰かの手。
とりわけ、誰かの手に触れること。
親密な相手であっても、その手に触れることは暴力的なあやうさを孕んでいる。ひとたび手を触れあわせることになっても、そしてその手をどれだけ握り続けたとしても、己の衝動と情感を満たし、それを相手に伝え尽くすことは叶わない。
互いの心身を隔てるうっすらとした膜のようなもの。その存在ゆえに起こるコップの中の嵐。こういったものを表現してみたいといつも思っている。
さて、今回の十句ですが、諸事情あってBL句会に出さなかった句などをまとめたものです。
年末から新年にかけての二人の様子を、どこかに残しておきたくてここに記してみました。