フードデリバリー業界の市場構造を「確率思考の戦略論」の考え方で予測してみた
カイトです。企業でマーケティング担当者をしています。このnoteではコロナによって需要が大きく変わったと考えられるデリバリー業界の市場を構造を把握しようとしてみました。分析とそのアウトプットの場が欲しくnoteを書き始めました。
忙しい人向けに
このコロナ禍で様々な業界にダメージがあった中、おうち時間が増えたことによって注目を浴びた業界がフードデリバリー業界です。急速に認知や必要性を獲得したデリバリー業界の市場構造を森岡毅著「確率思考の戦略論」で紹介された方法を用いて把握しようと試みました。結果は20代がライトユーザーになりやすい一方で男性では40代がヘビーユーザーになりやすい傾向があるようです。新興のデリバリーアプリがこれからも増えるということでデリバリー業界の市場は今後も複雑化することが考えられます。
はじめに
日本でのデリバリー(出前)の歴史は江戸時代中頃まで遡るとも言われていて、天秤式の岡持ちを持った蕎麦屋が描かれている版画が残っているそうです(wikipediaより)。故に現在あるサービスの中でもかなりアナログなサービスに分類されるといえます。
そんなデリバリーサービスですがコロナ前まではピザチェーン店や回転寿司店などが自社配送するイメージが強くあったかと思います。しかしこのコロナ禍において急速に認知を浴びるようになったのがデリバリーアプリではないでしょうか。
UberEats、出前館、楽天デリバリー、フードパンダなどまずは都心エリアを中心にサービスを展開してたものが全国的に拡大してきています。
グーグルトレンドで各種デリバリーサービスを検索、比較したらこのような結果になっていました。
最近だとウーバーイーツと出前館の2強の構図のようです。ウーバーイーツはアルファベット表記でも検索されているためウーバーの方が検索されているかもしれません。20年4月の緊急事態宣言時に爆発的に検索数(認知)は増えているようですがその後下降。しかし以降もじわじわと検索数を伸ばしてきているようです。menuは一時期オードリーのcmもよくみましたがそれでもやはりウーバーと出前館の双璧には届いていないようです。
このようにこの1年で著しく認知が向上されることになったデリバリーアプリですが果たしてその市場は今現在どのようになっているのでしょうか。
今回あくまで個人のアウトプットの場と趣味レベルでわかる範囲で調べて考察してみました。参考になればなんてたいそれたことは全く思いませんので優しい目でお付き合いいただけますと幸いです。
方法
今回、タイトルに「市場構造の理解」とつけていますがまずはその定義から決めていければと思います。
USJの売り上げをV字回復させたことで有名な森岡毅著の「確率思考思考の戦略論」では「NBDモデル」を用いて売上の伸び代などを数学的に分析したと記載がありました。NBDモデルは下記のような数式で表されます。
詳細は本著を見ていただくか参考文献に記載しているこちらにとてもわかりやすく説明されていました。余談ですがかなり人気の本のためこの動画はもっと伸びてもいいと個人的には思います。単に読み物としても面白いので数式部分には興味がない方が多いのでしょうか。。
世の中の購買活動をNBDモデルで説明できると本書では述べられており、その際、計算に使うのはプリファレンスと呼ばれる変数M(総購入数/全人数)です。
このMがわかればどれくらいの人が何回購入したか数式から算出できるというのがNBDモデルです。このNBDモデルを用いて購入回数に対する人数を把握することをこのnoteでも市場構造を理解するということで定義します。
もともとはアンドリューアレンバーグ教授という方が論文にまとめていた理論を森岡さんも展開されていたようです。実際に歯磨き粉の例で調べられているようですがかなり実測値と近いようで応用範囲も広いようです。
※NBDとはNegative Binomial Distribution(負の二項分布)の略です
USJのようなテーマパークの市場把握にも使われたことから、いかに市場構造を把握することがマーケティングにとって重要か考えさせられます。
このモデル式を使うには上記のMと分布のばらつきを示す変数Kが必要になります。Kは一言で言ってしまうと分布の形を決定する変数です。Kは購入されない確率とMを用いて算出できるので、実質MがわかればNBDモデルは使用することができます。
今回はデリバリー業界のMを把握するということでググったところ下記のようなデリバリーの利用頻度を性別、年代別に調査したアンケート結果がありました。株式会社日本政策金融公庫というところが出しているようです。調べてみたところ、財務省管轄の会社のようで適当なアンケートではなさそうです。20年10月の調査結果のようなので緊急事態宣言が解除された後のデータなので参考にしました。
調査方法と対象者は下記です。
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査対象:日本に居住する、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する2020年1月以前、月に1回以上 外食をしていた20歳から69歳の男女
こちらのデータを用いて個人的に1ヶ月あたりのMとKを全体、年代別に算出、NBDモデルに当てはめ、利用頻度をまとめてみました。
結果
調査結果から全体及び各性別、年代ごとにMとKを算出しNBDモデルに当てはめてみた結果をグラフにしました。
左から男性群、女性群、全体というように分けています。男性および女性両方で20代の一番若い世代が最もデリバリーを利用されており、月に4回以上利用する割合も最も高かったです。基本的には1回も利用しない割合は年代を重ねていくに増えていくのですが男性だと40代、女性だと50代で月に4回以上利用するミドル〜ヘビーユーザーの割合が多いようでした。家庭を持っている割合も高いと思うので家族の食事をデリバリーで済ましている結果がこのような形で現れているのかもしれません。逆にいうと一度使ってしまえばハマりやすいのは40代という見方もできそうです。
考察
結果に書いたものは20年のデータものでした。他にも同様のアンケート結果がないか調べてみたところ、18年10月に性別、年代別に調べたアンケート結果を見つけました。こちらはリサーチプラスさんという民間企業がリサーチしたデータのようです。
こちらも同様にMとKを算出し、市場構造を調べてみました。
!!!!!!!??????
ここで問題発生しました。笑
Kを求めようとした結果、なんと男女ともに40代以降のMの値が小さすぎてKが求められないという結果に。。笑
仕方ないのでKを求めることができた20代と30代のみデータにしてみました。(この時点で市場構造がめちゃくちゃ変化していると理解してもらえれば。。笑)
結果を示します。
全世代の中でも比較的利用可能性が高い20代、30代でも1回も利用しない方が40%前後という結果でした。20代男性は25%近くが月に4回以上、週1位で利用するミドル〜ヘビーユーザーということも伺えます。つまりデリバリーを使う人と使わない人でかなり差があるのが20代男性のようです。この差はデリバリーアプリそのものの認知の違いかもしれません。逆に一度使ってしまえばその便利さに何度も利用してしまうとも考えられます(私の周りでもそういう方は多いです。一度便利なものを利用してしまうとついつい頼ってしまいますよね)。
最後に年度を別々のグラフにしては比較しづらいので20代と30代を同じグラフにまとめてみました。
こうしてみると男性では20代はライトユーザーが増加、30代は4回以上のミドル〜ヘビーユーザーが増加、女性では20代はミドルユーザーが増加、30代では意外にも使わないユーザーのの割合が上がっているとのことでした。
これは18年の女性30代ではKの値を求めることができましたがMの値が小さかったためKの値が大きくなり、あまり信頼できない値になってしまった可能性が高いです。
まとめると18年から20年で間違いなくデリバリーの認知が伸びており、ライトユーザーが増えたためばらつきも大きくなったと考えられます。
これからもまだまだデリバリーの需要や市場構造は加速すると思われます。実際、woltやfood nekoと言った新興のデリバリーサービスも次々と日本に上陸してきているようです。各デリバリーサービスはパイの奪い合いになりそうです。どのアプリがどの年齢層を狙うのかなども注目していくと面白いかもしれないですね。
出前感はCMにTVのゴールデンタイムに出演される機会の多い浜田雅功さんを起用しています(デ、デ、出前館〜♪)。狙いとしては出前館は単価もあげやすいく今回の結果でリピーターにもなりやすい40代男性やファミリーをターゲットにしているのかもしれません。フードパンダはTVではあまりみないですがインターネット広告で渡辺直美さんが起用されているのみたことがあります。まずはライトユーザーになりやすい若者や若い女性を狙っているのかもしれません。
後日談というか今回のオチ
今回の調査はネットに転がっていたアンケート調査をもとにしたものでした。内容は同様の調査でしたがアンケートを取った会社自体もちがうため調査方法も全く違うでしょう。そこからまとめたデータをドヤ顔で書くのはかなりまずかったなと反省しています。優しい目でみてください。どちらもネット上のアンケートですがデリバリーが普及しているエリアとそうでないエリアがあると思うので標本も違うと考えられます(おまけにサンプル数も違う)。完全に個人の趣味(どんな趣味だというツッコミは置いておいて)ですがこれを読んで100万人に1人でも参考にしてくれれば書いてよかったなと思います。
このようなアンケート結果をどこかの調査会社がや大手の飲食チェーン店などの事業会社が毎月データを取っていけばいつ、どのユーザーに伸び代があるのか分析することはできるでしょう。デリバリー業態自体の市場構造を把握して各店舗で対策を取っていけば売上にアップが期待できます。
番外編①飲食店目線でマーケティングするなら
ガバガバなデータということは重々承知ですが今回のデータをもとにもし自分が飲食店でデリバリーを展開しているとすればこのようなデータからどのような打ち手があるか考えてみました。(飲食店の方は仕込み、調理、接客、会計、作業など日常業務でおそらく忙しくかつマーケティングに時間を割いている時間はないと思います。)
まずは自店のユーザーニーズを明らかにしてみると思います。例えばどのようなメニューを展開しているかである程度ターゲット年齢も絞れるかと思います。普段の外食のデータから自店舗がどの世代に受け入れやすいのかを把握してみるとデリバリー上での対策も見えてくるかもしれません。もし今の商材で20代が狙いにくいのであればデリバリーのみで営業するゴーストレストランを副業的にしてみるのも手かと思います。その際、近隣エリアで人気の店舗の商材などを意識されてみてもいいと思います。
外食のような定点観測でもある程度、世代の需要は把握できると思いますがデリバリーに加盟している店舗は購入者のデータは観れるのでしょうか。もしできないのであればデリバリー上でアンケートとして下記のような0円メニューを作成してみて実際に調べてみるのも面白いかもしれません。
例:【アンケート】男性20代の方はこちらを一緒にカートに追加 0円
上記のようなものを性別、年齢ごとに用意すればもしかしたら自店のデリバリーの立ち位置もわかるかもしれません。もしデリバリーの市場構造を乖離があるようでしたら上記のゴーストレストランを改めて考えてみるといいと思います。
番外編②デリバリー運営側目線でマーケティングするなら
先ほど記入したようにデリバリーアプリはまさに今、戦国時代に突入していると言えるでしょう。そのような状態の中で書くデリバリー運営企業が施策を打っていくのであればしっかりとした市場調査は間違いなく重要になってくると思います。
もしデリバリー運営企業だったら上記のようなデリバリーの市場規模を定期的に取得して運営アプリの利用ユーザーが市場構造とマッチしているのか調べてみるといいかもしれません。アプリのインストール時に年齢、性別など記入するようにすると簡単にわかると思うのですがそういうの設定させるとまずいのでしょうか。。?
一方でこのnoteを書いていて実はデリバリーの競合は外食ではないかもしれないと考えています。デリバリーのメリットは食事ではなく、食事の手間といった切り口でみるとコンビニや薬局の可能性もあるので市場調査でコンビニでご飯を購入する頻度や時期などで調査しても伸び代が見つかるかもしれません。コンビニや薬局で食品を買うユーザーにデリバリーアプリの利便性をリーチできればアプリ自体の伸び代はもっとあるかもしれません。
所感
久しぶりに数千字の文字を久しぶりに書きました。学生時代からレポートがあまり得意ではなかったのですがこうやって興味のあることを調べてみるのはおもしろいですね。他の業界でも同様のアンケート結果などがあればシリーズ化してやってみるのもいいかもしれません(需要があれば)。事業会社やマーケティングリサーチ会社の調査などはもっとアンケートの聞き方など工夫されているかと思います。P&Gなどはこの辺りが得意だから森岡さんや今西さんのような優れたマーケティング従事者が多いのかもしれません。
以前、USJに行った時にゲートの向こうにアンケートをしているスタッフの方がいたのを覚えています。おそらくマーケティング部の市場調査をしているのでしょう。確率思考の戦略論では消費者調査の聞き方についていくつか見識が述べられていましたが(答えがはい/いいえでになる質問、〇〇といえば?というwhat型の質問など)具体的にどのように調査しているのかは記載がなかったように思います。
学生時代はアンケートよりも出遅れないようにアトラクションに真っ先にむかっていたのですが今度はそのアンケートに答えるのも楽しみの1つです。ワクチン接種が可能になり、気軽に遊びにいける世の中になることが楽しみです。
参考文献
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