第1章 女に生まれたかった
第1話 そもそものきっかけ
翔は物心ついた頃から、人には言えないある願望があった。
それは「男ではなく、女の子に生まれたかった」という願望である。
幼い頃はすごく単純だった。翔は男友達と遊ぶよりも、女の子とおままごとをする方が楽しかったのだ。
でも、厳格な翔の父は、そんな翔に「もっと男同士で遊びなさい」と勧めてくる。
また、動物が好きなので、キティやミッフィーのぬいぐるみをたくさん持っていたのだが、これも「男ならそんな物よりプラモデルとかやらないのか」と言われてしまう。
(僕が女の子だったらそんな事言われないのに)
こんなかわいらしい願望からスタートした。
成長するにつれ、色々な知識が入ってくると、この願望にも様々な変化が生じて来た。
まず最初の変化は、一時的に願望がなくなってしまった事だ。
なぜなくなったのか。きっかけは出産に関する誤った知識である。
翔が幼い頃、学校でこんな会話がされた。
「子供を産むのって女だけなんだよね」
小学校の友人、三島健司が翔に話しかけた。
「そうそう」
「で、子供産む時って、お腹切るんだって」
「えーっ!」
「だからさ、男に生まれて良かったと思わない?」
「うんうん、お腹切るなんて絶対嫌だからね」
健司の両親は、彼に本当の事を言わなかったのだ。出産はすべて帝王切開だみたいな嘘を教えていた。
そのため、これを聞いた翔もまた、男に生まれて良かったと思い直したのである。
でも、その勘違いはすぐに解消される事になる。というのも、翔は動物好きで、犬を飼っていた。その犬の出産や、その前に交尾をするという事を知っており、同じ動物である人間だけが違うのはおかしいと考えたからだ。
この頃の翔はすごく変な話であるが、動物のメスに生まれたかったみたいな願望を持った事があった。犬をきっかけに他にも動物の出産や産卵について色々な本を読んで興味を持ったのだ。
例えば馬。あるドラマで、人間が数人で赤ちゃん馬の脚を引っ張っても出てこないという超難産のシーンが放映された。
馬自身はもちろんとても苦しんでいるのだが、これが翔の秘められたサディスティックな本能を刺激したのだろうか。とても興奮しながら見ていたのである。
他にも象もかなりの難産である。象の破水はまるで洪水のように大量の羊水がアソコから噴き出してくる。
産卵で興味を持ったのはカメやヘビ。翔は爬虫類や両生類も好きだった。
まずはウミガメ。ふだんは大海原を優雅に泳ぎ回っているその姿からは、想像も出来ない姿をさらして産卵する。
ウミガメは陸の上では上手く動き回る事が出来ない。だからゆっくりと這《は》うようにして進んでいく。そして後ろ足で大きな穴を掘り、そこに卵を産み落とす。それも一度に百個以上も。
ウミガメは産卵中に涙を流す事は良く知られている。これがあたかも陣痛に苦しんでいるかのように見えるのだ。実際はそうではなく体内の塩分を排出するためなのであるが。
ウミガメのアソコはまるで人間の男性のアソコのように細長く伸びており、そこから卵を産むのであるが、これがまたとても苦しそうに見える。
次にヘビ。ヘビはまず交尾が狂おしい。あの長い体をお互いにぐるぐる巻きつけてエッチするのだ。人間でなくても興奮してくるぐらい熱い抱擁である。
産卵も壮絶。産卵直前のヘビは細い体が大きく膨らむ。普段の体よりも幅のある卵を産むから、アソコの広がり方は人間の比ではない。
まあ、さすがにある程度成長してからは、人間の女性にしか興味はなくなったけれども。
また、翔の母は変わった人で、トイレで大きい方をするたびに家族の前でこんな事を言うのだ。
「あ~スッキリした。今日は安産だった」
更に、便秘でなかなか出なかったりすると、
「今日はすごく難産だった」
翔は気になって聞いてみた。
「母さん、その『あんざん』とか『なんざん』って何?」
「出産が軽いか重いかだよ。軽いのが安産で、重いのが難産」
「そうなんだ。でもなんでトイレから出て来た時にそんな事言うの?」
「だって出産とトイレって似てるから。赤ちゃんはここから出てくるんだよ」
翔の母親は自分の股の間を指しながら言った。
翔は目が点になって固まってしまった。
とはいえ、よくよく考えてみたら母親の言っている事の方が、正しいような気もする。なぜなら犬等の動物と全く同じだからだ。人間だって動物なのだから。
そこで翔は健司から聞いた事を伝えてみた。
「赤ちゃんって、お腹を切って産まれるんだって学校の友達が言ってたけど」
「それは帝王切開って言って、赤ちゃんの頭が大きすぎたり、なにか異常があってお母さんか赤ちゃんのどっちかが危険になる時だけだよ。普通は下から産むの」
なるほど。
翔は次の日に書店に行って「妊娠と出産の本」というのを読んでみた。
小学生の男の子がこんな本を立ち読みするなんて、普通ならあり得ない光景であるに違いない。って言うかそれ以前に恥ずかしくてとてもそんな事は出来ない。
でも、あの母親にしてこの子あり。翔はそんな事は全く気にせず、となりの妊婦らしき女性がドン引きしているのもかまわず、真剣に読み続けていた。
母親の言う通りだった。
翔はいわば腹痛フェチで、お腹が痛くてうんちする時にかなりの快感を得ていたのだ。これを激しくした出産をぜひしてみたいと思った。
(やっぱり赤ちゃん産みたい)
かくして、翔の女に生まれたいという願望が復活した。
幸か不幸か、この時に翔が読んでいた本には、陣痛の痛みがいかに過酷なものであるかについての記載がされていなかったのである。
もちろん出産の入門書だから、陣痛については書かれていた。でもこんな感じだ。
「1 陣痛のしくみ
陣痛は、子宮が収縮する事によって起こります。自分の中から湧き起こる内臓の痛み。外から傷つけられるような痛みと違って自然な痛みなのです。赤ちゃんが生まれたら嘘のように消え去ってしまいます。
だから、いたずらに不安や恐怖を持たないように、お産に関する正しい知識を持つ事が大事なのです。
本を読んだり母親学級に積極的に参加してください。
2 どんな痛み?
『長期に渡って便秘していたのがやっと出る感じ』
『下痢でお腹がいたいけどうんちが出ない感じ』
『人によってはかなりお産が進んでもあまり痛みを感じなくて、お腹が張る感じ、腰が重苦しい感じ』
陣痛はずっと痛いのではありません。1分痛みがあってから痛みが消えたら、しばらく痛みがない間欠期が来ます。だんだん痛みは強く、続く時間も長くなります。
どんなにつらい痛みでも、赤ちゃんが生まれるまでです。終りのある痛みなのです。
赤ちゃんが生まれた途端に赤ちゃんを産んだしあわせでいっぱいになってしまいます。
もう次は男か女か、なんていう気の早い人もいます。
3 どうしても痛くてがまんできない時は?
大丈夫です。呼吸法やマッサージでかなり緩和することが出来ます。案ずるより産むがやすしです。」
こんな甘々の建前だらけの記載では、かえって翔の願望を強めるだけである事は言うまでもない。
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
次の第2話は、翔の女性に生まれたかったという願望が、更に加速するきっかけとなった、誰もが子供の頃に経験するであろうお話です。いったいどうなるのでしょうか? お楽しみに!
第2話 願望は加速する
翔は、男のくせに出産したいというもの好きな願望を持つ事と前後して、幼馴染の角田美紅とのお医者さんごっこで、女性の性感が男よりもずっと強く、続けて何度でも気持ち良くなれる事を知った。
美紅はすごいオマセさんだった。物心ついた頃からひとりエッチをしていたのだ。
翔と一緒に登り棒で遊んだり、一輪車に乗って激しく感じていた。
「あ……ン……」
翔はまだこの頃は精通しておらず、知識もあまりなかった。そのため、美紅は感じているのではなく、病気か何かではないのかと勘違いしていた。
「美紅ちゃんどうしたの。苦しそうな顔してるけど」
「ううん、気持ちいいとこういう顔になるの」
美紅は、翔にこんな事を言ってきた。
「ねぇ翔も自分でしてるとこ私に見せて」
「してるって……何を?」
「知ってるくせに。自分で自分を気持ちよくする事」
「知らない。何それ?」
「おち×んちんいじると気持ちいいでしょ」
翔は書籍で一応知識は少しあったので、ためしに触ってみた事があった。しかし気持ちいいどころか、すごく痛かったのでそれ以後は触った事がなかった。
「気持ちよくないよ。先っちょにさわるだけで痛い」
美紅は不思議そうな顔をして首をかしげ、少し考え込んだ。そしてある事を思い出した。かつて自分も敏感な突起を初めて触った時は痛かったという事を。
その後身体が疼いた時に股間から分泌される、ぬるぬるしたものをまぶして触る事により、痛くなくなったのだという事を思い出した。
「ちょっと待ってね」
美紅はスカートの中に手を入れ、股の間をいじり始めた。
「……ン……」
美紅の表情はやはり翔には苦しんでいるように見えた。本当は感じていたのだが。
「美紅ちゃん大丈夫?」
「うん、すごく気持ちいいの」
美紅の手はぬるぬるした液体でまみれていた。
「この手で触ると痛くないはずだよ」
「えーっ?」
「大丈夫だから。ちょっと触らせて」
「美紅ちゃんがそう言うなら」
翔は美紅の愛液まみれの手でソフトに触られて、今まで感じた事のない不思議な感覚に襲われた。痛くない。大丈夫だ。
美紅が手を動かすと、とても切ない感覚が翔を襲って来て思わず声が漏れた。
そして翔のおち×ちんから透明な液体がほとばしり出た。まだ精通していなかったから精液ではない。
「アッ……」
翔は喜びの声をあげた。精通していなくても一人前の快感はあるのだ。
「すごい……こんなの初めて。ありがとう美紅ちゃん」
「今度は翔が私のここ触ってくれる?」
美紅は自分の股間を指さして、翔の手をとって持って行った。
「いいよ」
「ン……」
美紅の息遣いが激しくなる。
「手がヌルヌルして来たでしょ」
「そうだね」
「それで自分でして見せて」
「わかった」
先ほど美紅の手でしてもらった時に気持ちよかったので、自分でこすっても気持ちよくなれそうだ。
でも、翔はすぐには気持ちよくなれなかった。男は一度達するとしばらく感じなくなる。いわゆる「賢者タイム」だ。
「美紅ちゃん、あまり気持ちよくない。おち×ちん大きくならないし」
「そうなの? 私はすぐ何度でも出来るけど。男の子は違うんだ」
この、女の子が男のように性欲が途切れる事がないのを知り、いいなと思った。
少し時間が経つと下半身が復活した。翔は再び美紅のアソコをまさぐって愛液を手にまぶし、自分のモノをしごく。
「……あ……」
翔が自分でしている所を見た美紅も、激しく興奮したのか自分の股間を弄び始めた。
「う~ん」
2人はほぼ同時に絶頂を迎えた。
「あ~気持ちよかったね。これからも一緒にしよ」
「うん」
翔と美紅は、こうしてお互いのオナニーの見せっこをするようになった。
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
次の第3話は、翔と美紅が更に関係を深めて行きます。いったいどうなるのでしょうか? お楽しみに!
第3話 大人のお医者さんごっこから初体験へ
翔と美紅は中学校も同じ学校に通い、毎日のようにひとりエッチの見せっこをしていた。
「ねぇ美紅ちゃん、いつも君とこういう事するのなぜだと思う?」
「気持ちいいからでしょ」
「それだけじゃないよ。だって美紅ちゃん以外の他の女の子としたいと思わないからさ」
「私も」
「好きなんだ。だから僕の彼女になってよ」
「いいよ。私も翔の事が好き」
こうして2人は、中学1年生の時に恋人同士になった。
でもセックスはしないで、やはりオナニーの見せっこばかりしていた。
とても気持ちよくて楽しい反面、自分よりもはるかに気持ちよさそうな美紅の表情や声、それに一度イってもすぐに次が出来る事、更に何度イっても際限なく繰り返せる事をとても羨ましく感じていた。いつも翔が先にギブアップしてしまうのだ。
「ゴメン美紅。もう今日はスッカラカンになっちゃった。これ以上出来ないよ」
恋人同士になってから、翔は美紅を呼び捨てで呼ぶようになっていた。
「えーもうダメなの。私まだまだ全然満足出来ない。あと3回はしたいな~」
「無理」
「じゃあ翔、私が一人でしてるとこ見てて」
「いいよ」
既に数回達しているというのに、なんてタフな娘なんだろう。
「くぅっ……」
最近はうめき声にも磨きがかかってきている。それでも翔はタンクが空であるため何もする事が出来ず、ただ美紅の艶姿を凝視するしかなかった。
「ねぇ美紅、そんなに気持ちいいの?」
「うん。体中がびくびくして、天国にいきそうな感じ。何度イっても気持ちいいからやめられないの」
「それ羨ましい。男はさ、何度もイクとだんだん気持ちよさが減って、最後は全く出来なくなるから」
「そうなんだ。私はイケばイク程もっと気持ち良くなるよ。女に生まれてよかった」
出産する事を魅力に感じていた事に加えて、底の見えない女の性感が羨ましくて仕方なかったのである。
決して男が好きという訳ではなく、女である美紅を深く愛していた。翔は自分の性欲が枯渇した状態であるにもかかわらず、ただ目の前で美紅がこの世のものとも思えないような深い快楽を得ている姿を見ているだけで幸せを感じていた。
そんな美紅が愛しくてたまらなかった。
それだけに、余計女に生まれたかった。そのような願望が日増しに強くなったのだ。
翔はある日とんでもない事に気づいた。自分と美紅は、恋人同士であるにもかかわらず、セックスは一度もした事がなかった。つまり翔は童貞で、美紅は処女だ。しかもなんとキスもまだ。こんなカップル見た事ない。
「ねぇ美紅、恋人同士がする事してみない?」
「とっくにしてんじゃん」
「いつものひとりエッチの見せっこじゃなくて、チューしたりセックスしたり」
「そだねー」
「何か軽いノリだなあ。僕は美紅、君の事が大好きだからしたいんだけど君はどうなのさ」
「もちろん翔の事大好きだよ」
「じゃあ決まりだね」
翔は美紅をじっと見つめ、顔を近づける。美紅は目を閉じて唇を突き出し応える。
美紅の唇はとても柔らかかった。はじめてのキス。翔はとろけそうな甘さを感じた。
何秒経っただろうか。あまりの胸の苦しさにずっとこのままでいたいと思ったが、さすがに息が続かなくなって一度離す。
美紅は目をあけてこちらを見つめている。翔は目で「もう一回」とおねだりする。
2人は再び唇を重ね、ごく自然に舌を絡ませていた。いつもの見せっこのような強烈な快感こそないものの、溶けてしまうような断続的な切なさに襲われ、きつく抱きしめ合う2人。
お互いに顔は赤く染まっている。血流が増してきたのだろう。翔の下半身は大きくなり、美紅のそれは洪水のように蜜を溢れさせる。
「愛してるよ」
「私も……」
翔は美紅の服を脱がせにかかった。シャツの袖をつかんでまくり上げる。真っ白なブラジャーに覆われた胸があらわに。
小さいけれどとても中学生とは思えない形の良いオッパイだ。美紅は思わず胸を手で覆う。恥ずかしいのだ。あれだけエッチな事をした間柄なのに、翔はまだ美紅の裸を見た事がなかった。
いつも服を着たままひとりエッチの見せっこばかりしていたからだ。
いつものエッチな美紅ではなかった。その表情はなにか怖がっているように見える。
「翔、私初めてなの。やさしくしてね」
翔は知識としては知っていた。処女には膣に処女膜という物があって、初体験の時に敗れてすごく痛い思いをするという事を。しかし美紅の性に奔放なふるまいから経験豊富だろうというイメージを持っていたのだ。
たしかに快感を得る事に関して言えば、もうとっくに非処女並みの経験があったに違いなかった。なにせ物心ついた頃から絶頂感をずっと味わってきたのだから。でも、男の物を受け入れた事はなかったのだ。当然怖いだろう。
翔は美紅のショートパンツを脱がせるとその下のショーツが姿を現した。ブラと同じ純白だ。やはり下着は白に限る。どちらも極薄の生地でとてもセクシーだ。うっすらと茂みが透けて見えていた。
ブラをはずそうとしたその時だ。
「明かりを消して。お願い」
やはり裸を見られるのは恥ずかしいのか。いつもの美紅との違いにとまどう翔。でもそんな美紅をとても愛おしく感じていた。
翔は背中に手をまわし、ブラのホックをはずし、剝ぎ取った。そのすぐ後に腕を胸の前で交差させ、隠す美紅。こんなに恥ずかしがり屋だったなんて。翔はやさしく美紅の手をとってキスしながら「見せて」とささやき、手をどかせた。
うす暗い部屋の中でかすかに見える胸。残念ながら色までは良く見えなかったが形のいい乳首を堪能する。さらに濃いキスを交えながら左手で胸を愛撫しつつ、右手をさりげなく美紅の股間にすべり込ませる。
「あっ」
美紅は声にならない声をあげ、アソコは蜜が染み出して翔の指を濡らす。
「美紅、痛くない?」
「うん。大丈夫」
ついに最後の一枚だ。ショーツを脱がすと美紅は手で股間を押さえ、脚をぎゅっと閉じた。
今美紅は生まれたままの姿なのだ。翔は明かりをつけてその裸体を堪能したかったが仕方がない。
「入れてもいい?」
「待って、そのまま入れたら赤ちゃん出来ちゃう」
「そっか。コンドーム持ってるから付けないとな」
翔は事前にセックスマニュアルで知識を得ていたのだ。大きくなった下半身に被せて準備完了。
「行くよ」
「怖いけどがまんする」
翔は美紅の脚を広げてアソコに自分の武器を押し当てる。
「痛っ……」
苦痛の表情を見せる美紅。
「大丈夫? 痛かったらやめるけど」
「大丈夫」
美紅のほほに一筋の涙が。我慢しているのだ。
「本当は痛いんでしょ。痛かったら痛いって言って」
「ちょっと。でも大丈夫だから。来て」
先端が少し穴に入った感じがしたが、それ以上どうしても入らない。何度もつついていると、そのたびに美紅の表情が痛そうに変わり、小さな悲鳴が漏れる。翔はいったん体を離し、秘密の場所を手で広げて場所を確認する。あまりの恥ずかしさに美紅は手で顔を覆う。
翔は意を決して再び下半身の肉棒を突き立てた。すると遂に先っちょが入口を通り抜けた感覚があり、その瞬間に美紅は歯をくいしばって声にならない声を上げた。
「んんん……」
感じているのかと勘違いした翔は腰を前後に動かそうとした。すると……
「あん……痛い!」
「ごめん」
「あまり激しく動かさないで。お願い」
「わかった」
翔はピストン運動はあきらめて、入れたまま美紅を強く抱きしめた。
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
次の第4話は、幸せの絶頂にいた2人に襲い掛かる残酷な運命! いったいどうなるのでしょうか? お楽しみに!
第4話 突然の別れ ※ウツ展開ですが、後で1000倍返しあります
初体験後、さすがにもう美紅は痛がる事はなくなったが、どうもあまりセックスで気持ち良くなる事がないみたいだ。
「私、中って全然感じないみたい。クリちゃんをいじる方がずっと気持ちいい」
「そしたらクンニしてあげよっか」
「お願い」
翔はその舌で美紅の最も敏感な突起をひらすら舐め続けた。しかし……
いくら翔ががんばっても、美紅は表情も息遣いもいま一つであった。
「う~ん。なんかツボがはずれちゃってるっていうか……」
「それって気持ちよくないって事?」
「そういう事になるかな」
「ゴメン、俺下手なのかな?」
「そんな事ないよ。人の感覚なんて分からなくて当然だから。ちょっといじり方にコツがあるんだよね。自分でした方が気持ちいい。やっぱり一人エッチの見せっこしようよ」
「美紅がそう言うなら」
美紅とセックスしたものの、お互いに見せっこの方がいいという結論に達する事になった。
翔は少し心配になって、歳の離れた姉の杏奈に相談してみた。
「姉ちゃん、僕の友だちの話なんだけど、彼女とセックスしてなくて、ひとりエッチの見せっこばっかりしてるんだって。どう思う?」
翔もさすがに自分の事だとは言えなかった。
「いいんじゃない。妊娠しないし」
「そうかな」
「でもあまりひとりエッチばかりしてると、セックス出来なくなるから気を付けるように言ってあげな」
「え~っ! 本当に?」
「そうだよ」
更に悪友の三木匠と電話で話す。
「匠さー、女の子とオナニーの見せっこってした事ある?」
「ああ、あるよ。前の彼女が大好きで良く一緒にしてた。でも俺はあまり好きじゃない。断然セックスの方がいいな」
「そうなんだ。僕はセックスより気に入ってしまって。幼馴染の娘、美紅って言うんだけど、見せっこが大好きでさ、僕も好きになった」
「翔らしいな。お前オマ×コ見るの大好きみたいだからな」
「そうかもね」
「でも気を付けた方がいいぞ。あまりオナニーばっかりしてるとセックス出来なくなるから」
「えーそうなのか?」
杏奈の言う事と匠の言う事が一致していたのは偶然ではなかった。翔は本当にセックス出来ない身体になってしまったからだ。
翔は埼玉県さいたま市(出生時は大宮市)で生まれ育った。
美紅の家は翔の家の3軒隣で、やや広めの県道に面していた。父親は自営業で、大宮駅から少し離れた所にある小さな工場を経営していた。
翔と美紅が出会ったきっかけは、いつも美紅の家の隣にあった駄菓子屋で、2人がお菓子を買ったり、「じじ焼き」と呼ばれていた「もんじゃ焼き」を更に薄くしたような食べ物を店内で食べていたからである。2人はその駄菓子屋で仲良くなったのだ。
ある日、かねてから経営不振だったらしい美紅の父親の経営する会社が倒産し、美紅の一家は夜逃げする事になってしまった。突然の別れだった。
翔が、美紅の家に行って玄関のチャイムを鳴らしても誰も出ない。中を覗いて見ると、中に誰もいる様子がない。
いつもであれば、美紅が出かけていても大抵は母親が家にいて、翔を出迎えてくれた。しかしこの日はその母親すらいなかった。
その後もやはり美紅の家には誰もいない日が続いていた。
そんな状況の中で、美紅の家が取り壊されてしまったのだ。美紅の家は木造2階建てのいわゆる日本家屋だった。しばらくは更地であったが、程なくして5階建ての鉄筋コンクリートのビルに建て替えられていた。
このビルに入居して来た人達を見て、翔とその家族、更に周囲の人達の暮らしが一変した。
なぜかというと、その人達は顔に傷があったり、パンチパーマをかけていたり、小指がなかったり、土佐犬を連れていたりしたからである。
つまり、暴力団が入居して来たのだ。
翔はおどろいて父親と母親に事情を聞いた。
「美紅ちゃんの家一体どうなったの?」
「美紅ちゃんのお父さんが経営していた工場が倒産したの。それで夜逃げしたんだって」
「そうだったのか」
美紅は翔に何も言わずに突然いなくなったのだ。この経験は翔にとってトラウマとなってしまった。
決して美紅が悪い訳ではないが、結果的に翔はセックス出来ない身体となり、オナニーの見せっこでしか達する事が出来なくなってしまった。
高校時代は男子校だった翔は、女の人と知り合う事もほとんどなかった。更に、愛する人が突然何の前触れもなく行方不明となり、心に深い傷を負っていた。だから恋に発展する事もなかったのだ。
女っ気のない高校時代に人一倍勉学に励んだ翔は、大学には現役で第一志望の東京の大学に合格した。女性と知り合う機会も多く、それなりに恋もした。
何度かベッドインのチャンスもあったが、既にセックス出来なくなっていた翔は、特定の女性と深い関係を築く事が出来なかった。
また、やはりどうしても美紅の事が忘れられず、積極的に好きな女性にアプローチする事も難しかった。
人生序盤の中学時代に幸福の絶頂に達しながら、その後暗黒の青春時代をおくる事になるとは、翔自身が一番予期していなかった結果だった。
時はあっという間に流れ、そんな状況で翔は大学を卒業する事となった。
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
もし、翔の波乱万丈な人生をもっと知りたいと思いましたら、ぜひ♡評価とフォローをお願いします。
よろしければ、私のもう一つの長編小説「ひとり遊びの華と罠~俺がセックス出来なくなった甘く切ない理由」もお読みいただけると嬉しいです。
https://kakuyomu.jp/works/16816700429286397392
次から第2章に入ります。一気に時は流れて第1話では翔が社会人になります。翔は持ち前のポジティブシンキングで、すごい勢いで青春を取り戻していきます。いったいどのようにして? お楽しみに!