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エッセイ『ドラクエの日々からトルネコの日々へ』

スーファミのドラクエをやり続けて1週間ほどが経つが、主人公が強くなり過ぎて早くも飽きが訪れてしまった。まだ2週間以上も外出自粛期間があるというのにエライこっちゃ!?どないしよ!?と、ひとり頭を抱えているところに突如として現れたのが『トルネコの大冒険』である。

実はこのゲーム、子供の頃から家にあって何度もチャレンジしたが、当時の僕には難しすぎて開始30分で断念せざるを得ないほどの激むずコンテンツなのだ。

そんな幼少期のトラウマがあるので敬遠していたのだが、税金もキチンと支払っている立派な大人に成長した今の僕ならもしかすると意外と簡単にクリア出来るのではないか?という思いから再度購入を決断しプレイしてみることにした。

この考えは甘かった。

トラウマを受けた幼少期から20年以上の歳月が経ったにも関わらず、何ら変わらずの激むずコンテンツに少々面食らってしまった。

ダンジョンで機嫌良く歩いていたら突如足元のトラップに引っかかって抜け出せなくなり、その間にモンスター達に囲まれてボコボコにされて息絶えてしまう。お腹が減ったら死んでしまうので持参したパンを大切に持っていたら悪魔みたいな奴にパンを盗まれ、取り返そうと追いかけたら突如落とし穴があり下の階に落ち、そこに待ち構えていたモンスター達に囲まれてボコボコにされて息絶える。

道具を拾ってはリンチに遭い、金を拾ってはリンチに遭いを繰り返す、まるで都会のホームレスのような壮絶な主人公の中年男性に、大人になったはずの僕のストレスはどんどん溜まり、挙げ句の果てにリセットボタンを押すという暴挙に出たりするのだ。

クソゲーだ!クソゲーッ!こんなもん“ 運 ”次第ではないかっ!と絶叫してもこのゲームが簡単になるわけもなく、それでも何とか攻略の糸口が見つからないものか、とスマートフォンを駆使して攻略方法を調べてみた。

便利な時代になったもので、昔のゲームの攻略方法は全てインターネット上にわかりやすく載っている。昔のように近所の本屋にわざわざ攻略本を立ち読みしに行く必要なんてないのだ。これのお陰でドラクエVでは随分と助けられたものだ。またその恩恵を受けようと『トルネコの大冒険』の攻略法を調べたのだが、驚くことに一切攻略する方法など見つからなかったのだ。

このゲームは『注意深く慎重に頑張る』しか他に方法はないのだそうだ。

【1時間で終わるところを3〜4時間かけてやってみてごらん?その先にきっと光が見えてくるから】

と、このゲームのヘビーユーザーが公にアドバイスをしてくれているだけであった。

「くだらねえ!なんだその無意味な助言は!」と怒り心頭でソフトそのものを窓から放り投げかけたが、モノは試しに一度その腐れアドバイスを意識した上でトライしてみようではないか、と半信半疑でやってみた。

するとビックリ慎重に慎重に時間をかけて押し進めることで、主人公『へろいん』は序盤に息絶えることなく、先のステージへ進むことに成功したのだ!

あんなに嫌いで悪口ばかり言っていたのに今ではトルネコの事ばかり考え、寝る前にトルネコ、目覚めとともにトルネコと、まんまとトルネコの虜となってしまった。←※この文章に “と“ が11個もあるよ!

石橋を叩いて渡る、とはよく言ったもので単純で難しいものほど落ち着いて慎重に冷静にチャレンジしなくては攻略など到底できない。一回二回で成功してやろう、という浅はかな考えは捨て、失敗から多くを学び、根気強く一歩一歩進んでいけば必ず目標に近づくことができる。そう、それこそが人生、それこそが我々の日々の生活そのものではないか。今こそ世界が、人類が一丸となって憎きコロナウイルスとやらにこの方法で立ち向かう必要があるのではないだろうか!

まさか『トルネコの大冒険』から自分の人生観を見直す機会を与えられるとは夢にも思わなかった。

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