ご当地VTuberと某議連の騒動について。創作者として考えると、かなりの重大事なのでは⁈【第2回 #きたりエッセイ】
第2回目のエッセイ執筆となります。
今回もお付き合い頂ければ幸いです。
↓ 前回の記事はこちら ↓
さて。
タイトルで大体察せられるかと思いますが、話題は「某ご当地VTuberとフェミニスト議連を巡る騒動」についてです。
この手の話題、私はなるべく発信を控えるようにしており、今回もずっと静観していました。
特にTwitterでは文字数が足りず、誤解や曲解を生みかねないからです。
しかし先日行われた議連の記者会見を見て、「あ。全然だめだこりゃ」と感じ、思わず筆を取った次第です。
(記者会見についての参考:東京新聞Web、Yahooニュース)
今回のフェミニスト議連の行動や認識について、私は非常に問題があると考えています。
創作者の端くれとして、危機感すら抱いています。
必ずしも共感を求める訳ではありませんが、この記事を通して「世の中にはこういった考え方もあるのだ」と、少しでも誰かに届けばいいなと思います。
【1】まずはじめに ※必読※
今回の騒動全体を俯瞰すると、論点がかなり散らばっている印象を受けます。
これは、お互いの立場で問題意識として置いているところが全く違うことが1つの原因かと思います。
なので、まずは私が今回伝えたい事がなるべくそのまま伝わるように、前提条件を述べていきます。
少々まどろっこしいかもしれませんが、誤解を少しでも避けるために必要だと思いますので、どうかお付き合いください。
①ジェンダー論には極力触れません。
私が今回語りたいことは、性差別とは全く別の部分です。
ですので、本題にジェンダー論が関りないという事をご承知ください。
②批判的な表現を含みます。
今回は「全国フェミニスト議員連盟」を主に批判する意見の発信になります。
強い表現になりすぎないようにしておりますが、そういった論調そのものが苦手な方は、ブラウザバックをお勧めします。
③「フェミニスト」「フェミニズム」全体を批判するものではありません。
いわゆる「ツイフェミ」などといった呼称などを用いて、あたかもフェミニズム全体を危ない思想かのように発言する方もおりますが、私は今回議員連盟のみを問題視しています。
また、フェミニズムの捉え方自体も個人差が大きいと思いますが、本記事の内容には関わりません。
無用な分断を生みたくないので、努々混同されぬようお願いいたします。
④騒動の全容をすでに知っている人向けの記事です。
騒動の内容や経緯の詳細などを書くと、本題まで時間がかかるので今回は割愛させていただきます。
全国フェミニスト議員連盟やVTuber戸定梨香さんの個別情報についても、同様です。
以上の事をあらかじめご認識頂いたうえで、次項からの本題をお読みいただきますよう、切にお願い申し上げます。
【2】何を問題点だと思ったか。
前置きが長くなりましたが、私が思う問題点を明確にしておきます。
それは――
「議員(連盟)という肩書き」を掲げて
動画の「削除」を求めている
さらに、それを議員連盟側が「重大である」と認識していない
という点です。
……いやいやいやいや。
これ、めちゃくちゃヤバくないですか?
フェミニズムへの賛否とか、女性蔑視がどうとか、それ以前です。
しかも、よりにもよって、民意の代弁者である議員が一方の見識のみを押し付けて、削除と謝罪を求める。(そもそも何に対しての謝罪……?)
――こんなのが、多様性の受容が声高に叫ばれる現代で、まかり通っていいはずがありません。
市井から怒りの声が上がって当たり前だと思うんです。
こんなやり方が普通になってしまったら……創作物は衰退しますよ?
我々創作者は、危機感を持って然るべきかと。
次項からは、この提示した問題点について、順番に切り分けて深掘りしていきます。
【3】肩書きの重要性を忘れている?
議員連盟の大きな問題点一つ。
国会議員だろうが、市議会議員だろうが、議員というのは「有権者の投票」によって選ばれる。
つまり、市民の声を一定程度背負っているわけです。
もちろん、選挙で語られることは彼らの理念のごく一部ですから、100%ではないでしょう。
でも、議員という看板には常にその意味が含まれているんです
そして、彼女らは「議員連盟」という肩書きをわざわざ文書の頭に記載して公開質問状を発しています。
だから、たとえ事の顛末が彼女らの求めるところに辿り着かなかったとしても、市民・国民に対して責任を持つ必要があると思うんです。
――しかし、動画削除があった後に批判の空気が膨らんでから、こんなことを言ったのです。
皆さん、議員にどれだけの力がおありとお思いか知らないですけど、まさか地方議員が警察に圧力かけて動画削除?
できるはずないでしょう。
[全国フェミニスト議員連盟 増田かおる氏Twitter より]
提出した文書は、公的機関としての認識を問うたものです。
当該動画の掲載も、削除も、ともに千葉県警によるものです。
[全国フェミニスト議員連盟 ホームページ より]
これを見て、皆様はどう感じたでしょうか?
私は、はっきり言って有権者を馬鹿にしていると思いました。
そりゃあ、ハッキングをしたわけでもないのだから、削除という行動をしたのは公開主である県警でしょうよ。(ポリシー違反でYoutube側が削除したのならともかく)
そんなこと、言われなくとも誰だってわかります。
議員連盟は公開質問状において、はっきりと「有権者の意を付託されている」「議員」の「肩書きを掲げて」「削除を求めて」いますよね?
それが、自分たちの行動には「力がない」?
「削除」したのは千葉県警だから関係ない?
本当に信念があって削除を求めたのであれば、自分たちの声が県警を動かしたのだと実績にするべきです。
それ自体の賛否は、その後に受け止める事でしょう。
でもこれは、どう見ても肩書きの軽視であり、責任の放棄です。
投票した市民の意思はどうでもよいと思っていることと同義です。
この点は、先日の会見でも同様の認識でいるようでしたので、非常に憤りを覚えたポイントの一つでした。
【4】「削除」の重大性
ここまでで、私がやたらと「削除」を強調しているのは、すでにお気づきかと思います。
私たちは、啓発動画に「松戸市ご当地 VTuber の戸定梨香」を採用した千葉県警、松戸警察署・松戸東警察署に 強く抗議し、当局の謝罪、ならびに動画の使用中止、削除を求めます。
[全国フェミニスト議員連盟 2021年8月26日付 公開質問状 より抜粋]
議員連盟は、公開質問状でこのように削除を求めています。
(そもそも「質問状」で書く内容か? というのは置いておいて)
この辺り、昨今各所にてしばしば起きる事ですが、「削除」って言葉以上にものすごく重たい措置ですよ?
議論の俎上にも載れず、この世から消えてしまうんですよ?
私は、声を上げること自体はとても良いことだと思うんです。
私は好きじゃない、私は不適切だと思う
そういう反対意見も、非常に大事です。
世の中の遍く人々の知識・意見・物の見方などを統合して、より良い未来を目指していく――
これこそが、発展した文明社会の在り方じゃないですか!
集合知バンザイ!!
公開された動画なら、低評価をつけるなり、動画をソースとして批判の論評を発信するなり、消させずともいくらでもやりようがあります。
議連が会見で言った通り戸定梨香さん自身を否定しないのであれば、フェミニストの立場で問題なく、かつ児童の心を集められる衣装デザインコンペを開くなどの手もあります。
いや。そのようでなければ、「議論」が始まりません。
また、程度問題ではありますが、「恐れがある」程度の物を全て子供の目へ触れぬようにしていくのは、現在の高度な情報社会では不可能です。
無理に行ったところで、どこかで必ず歪みや反動が来ます。
――では、どうやって防止していくか。
それこそが、教育の役割じゃないですか。
議員が使命に感じるのであれば、政治が主導して情報リテラシー教育・情操教育、性教育を拡充していく。
必要な価値観のアップデートを、世間に求めていくのです。
もし今回の事を省みず、この先同じやり方で、世の中が出来ない事を求め続けたとしても。
崇高な理念が広く共感される未来は、一生訪れないでしょうね。
そしてこれに関しては、フェミニスト議連に限らず、我々も気をつけるべき事だと思います。
進んで臭い物に蓋をしていくような世の中にするのは、避けなければなりません。
【5】理解には文脈が大事!
正当な批判をするには、まず初めに相手の「文脈」を考えることが必要になる
――と私は考えています。
作家系の人間として「文脈」という言葉を使いましたが、「意図」「背景」「バックストーリー」「至る過程・理由」などなど、いかように言い換えても良いでしょう。
何にせよ、表面だけで判断するなんて言語道断。
それこそ相手を型に嵌めて見る、差別そのものではないですか?
「私にはこう見えるのだから、しょうがない」
うん。一意見としては、それも良いでしょう。
重ねて言いますが、声を上げること自体はとても良いことです。
しかしそもそも、表現において「すべての人に強く受け入れられるもの」なんて、ありません。
大事なのは、想定したターゲットへ刺さるべく作るよう努めることではないでしょうか。
その点、県警とVTuber側は今回の動画作成にあたって、綿密な打ち合わせを持って作成に当たっており(各インタビュー等でも明言されています)、「地域の子供向けに啓発したい」とコンセプトもターゲットも明確に示されています。
また、選任された戸定梨香さんは、すでにご当地PRの活動が実績としてあり、キャラクターデザインから地域を意識したものになっています。
つまり、彼女が選ばれた理由にも妥当性があり、ストーリーがある――文脈があるわけです。
では、果たしてフェミニスト議連は今回、松戸県警及び作成動画の「文脈」を理解しようとしたのでしょうか?
――非常に疑問です。
議連側は、性的消費である、公的機関の表現にそぐわない、子供に悪影響などと色々述べていますが、その基準は曖昧かつ見方も一面的であり、感じ方の個人差がある部分ばかり。
少なくとも、私にはそう思えました。
こう見ることもできる。だから、世間にもこのように伝わるはずなのだ。
これは、非常に乱暴で危険な発想だと思うんです。
しかも、今回の動画の作りはメッセージも意図も比較的明快。
もしかしたら、議連側は文脈を意図的に無視しているのかもしれません。
もし、相手の「文脈」を理解していたのであれば。
なおさら、このような形での発信をするべきではありません。
このことからも、議連側の一連の発信は相互理解をするための行動ではなく、ただ自分たちの意見を押し通したい物と見えてしまいました。
声を上げるのも大事。しかし同時に、意見を受け取ってもらう声の上げ方もちゃんと考えなければなりません。
個人的には、今回のことは受け手側の教育の範疇だと思います。
フェミニスト議連が本当にすべきことは、女性を守る見方の啓蒙、あるいは声の上げ方の提示ではないでしょうか。
【6】さいごに
今回はだいぶ長くなってしまいましたね。
最期までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
最後に一つだけ。
今回の騒動で、双方に対して誹謗中傷や脅迫まがいのメールなども見受けられるようです。
そのようなことは、絶対にやめてください!
全く意味がないどころか伝えたいことも伝わらず、誰にとってもマイナスな行為です。
本記事も、双方の分断を意図するものではありません。
読者の方々も、くれぐれも心に留めてください。
以上をまとめます。
・「肩書き」を使った責任は、最後まで持つべき。
・「削除」を求めることの重大性を軽視してはいけない。
・相互理解したいのであれば、まず「文脈」を理解する努力が大事である。
・誹謗中傷はダメ絶対!!
中でも創作者としては、簡単に「削除」を求める社会になって良いのか? というところを一番に問いかけたいです。
今回の騒動における議連のやり方・考え方は、ジェンダー論を除いても、あらゆる創作者にとって非常に大きな影響があるものだと、私は思います。
皆様は、どう感じましたでしょうか。
さて。
ちなみに私は、「たいあっぷ」というWEB小説サイトで、性別や思想どころか生物の壁を超える「ペンギンと人間のSF青春ラブ(?)コメ」を書いています。
気になったら、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
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