【超繁忙期!】春の繁殖シーズン②種付け編
こんにちは。
20代後半で脱OLし、
競走馬の生産牧場に転職して
夫と出会い、競走馬の生産牧場を夫婦で営んでいる
北のいち牧婦のゆきじです。
(元はただの競馬ファンでした。笑)
前回の春の繁殖シーズン①出産編では、馬の出産、仔馬のお外デビューのところまでお話ししました。
前回よりだいぶ日が空いてしまい、種付けシーズンもとっくに終わっていますが、
続きをお話ししたいと思います。
(何ならもう来季の種付け種牡馬が決まっていたら予約しちゃう時期です。)
今回は種付け編ということで、繁殖牝馬の発情から種付け、受胎確認までお話ししたいと思います。
🐴繁殖牝馬の発情を見極めろ
母馬はお産後10日前後で発情します。
しっぽを上げて腰を落としながらおしっこしたり、しばらく尻尾をあげていようなる仕草をしだしたら、ほぼ間違いなく発情しています。
分かりやすい馬もいれば、分かりにくい馬もいます。
発情を逃してしまったら種付けができません。
もちろん、種付けできなかったら仔馬が産まれません。汗
しっかり観察して、獣医さんに直腸検査をしてもらい、交配に適した日を見立ててもらいます。
排卵日の予測をしてもらったら、種馬場(スタリオン)に連絡して種付け日の予約を入れます。
混んでいると、希望している種馬が人気種牡馬だった場合、申し込みが殺到しているので希望日に種付けさせてもらえないことがあります。
この場合は第二希望の種牡馬に変更してもらうこともあります。
直腸検査:馬の肛門から腕を入れて直腸の下に位置する卵巣を触って 卵胞の大きさや
卵の有無を確認する検査です。
ちなみに、獣医さんは肩までの長ーいポリ手袋をはめて手を入れます。
種付け:種牡馬(しゅぼば)と繁殖牝馬(はんしょくひんば)を交配(交尾)させること。
種馬場:スタリオンステーション(SS)ともいう。競走馬は、種馬場に現役競争馬を引退した馬が
種牡馬として在籍していて、そこに繁殖牝馬を連れて行って交配をする。人工授精はしない。
🐴母馬が発情したら仔馬が下痢をする??
また、発情下痢といって、母馬が発情する頃に仔馬が下痢をします。
しかし、発情と下痢は因果関係がないとされています。
母親がいない仔馬も同じ頃に下痢をするようです。
固形物を食べるようになったり、親の糞を食べたりすることによる消化管の変化によるものだと考えられています。
仔馬にとって、親の糞を食糞することは当たり前のことであり、
腸内細菌叢を摂取するための行動です。
食べた草を消化するのを助けてもらうために必要な菌です。
バッチいと思うかもしれませんが、馬にとってはフツーのことです。
病気というわけではないので、下痢しても特に悪臭はしません。
お尻が濡れちゃって可哀想だな…というくらいです。
でも余程酷くない限り拭きません。自然に乾いて綺麗になるからです。
🐴種付けへGO!
種付け日が決まったら、種付けに行きます。
私は、種牡馬に会える種付けはワクワクします。
現役時代に活躍した名馬がほとんどですからね^^
社台スタリオンステーションはサンデーサイレンスをはじめ
ディープインパクトが在籍していた所で、まさに名馬の宝庫ですね。
人気種牡馬はめちゃ種付け料高いですw
ちなみに、ディープインパクトは4000万(!)と世界一です。
種付け当日は、種付けの時間に合わせた作業の流れになります。
いよいよ出発時間が近くなったら、繁殖牝馬を手入れして綺麗にします。
おめかしして行くのよ♪(冗談です。リボンとかはしません)
馬運車に積み込んで、種馬場へ向かいます。
馬を乗せている馬運車の後ろを走っていると、ごくたまにおしっこが飛んでくるので車間距離に気をつけてください。笑
種馬場に到着したら、順番を待って繁殖牝馬(と仔馬)を連れて行きます。
最初にアテ馬をあてがい、発情の有無を確認します。
この時、発情していたら脚を開くし、発情していないか弱かったら怒って蹴ろうとします。(気性がきつい馬は発情してても蹴ります。。)
アテ馬:牝馬の発情を確認することが仕事の馬。サラブレッドではない馬が務めている。
ちょっとかわいそうな役割。
発情を確認したら、繁殖牝馬を枠場に入れて陰部を洗浄し、種付けしやすいようにしっぽをラップで纏めてもらいます。
(サランラップとかのラップではなく、テーピングテープの下に巻くようなラップです。念のため。)
🐴いよいよ種牡馬と対面
枠場を出たら、種付けをする建物に入り、交配相手の種馬と対面しますが、
ここでも準備が必要です。
繁殖牝馬の耳や鼻を鼻ねじでねじり、
後肢にゴムの靴を履かせます。
万が一、種牡馬が蹴られて怪我しないようにするためです。
種牡馬は一頭でウン億とかウン千万とか稼ぐので、怪我でもしたりして
種付けできなくなったら大きな損失です。
競馬界の損失にもなりかねません。
種付けの仕方も、馬によって様々です。
仕事がめちゃ早い種馬もいれば、
めちゃめちゃ時間をかける種馬もいます。
仔馬もいる場合、仔馬を持つ人間は「早く終わってくれ」と祈りながら
鳴いて暴れる仔馬と格闘しています。(終わった時にはクタクタです。)
🐴妊娠鑑定(エコー)
種付けが終わったら帰ってきます。
17日後を目処に、獣医さんにエコーで妊娠鑑定をしてもらいます。
その後も間隔をおいてエコーをし、胎児が確認できたら受胎確定です。
途中で消えてしまうこともあるので、心臓が確認できるまでエコーをします。
受胎した繁殖牝馬は身体つきがふっくらしてきます。
そして、来年のお産を楽しみにしながら日常に戻ります。
・・・と言いたいところですが、出産、種付けシーズンがやっと終わった頃に
一歳馬のセリと一番牧草の収穫が始まります。
春から秋まで休みなしで忙しいんですよね。。
また、草刈りもしなきゃなりません。
以上、ざっくりと(詳しく?)お話ししてみました。
初めて牧場に入り、生産に携わるようになった時は色々と衝撃を受けました。
牧場の仕事って面白い!!って思いました。
何でもありです。嬉しいことも、悲しいことも。
馬が大好きな人は一度は牧場に就職してみたら?!と言いたいくらいです。
産まれた仔馬はもうほわほわで好奇心旺盛で愛くるしいんです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。