孤星に脳みそ破壊された
アークナイツってご存知です?
知ってなきゃ読みに来ないでしょ? と思わんでもないが私の悲鳴だけを摂取しにくる物好きもいるとのことなので。
アークナイツは疫病・差別・戦争なシナリオのタワーオフェンスだ。基本的に暗いし何かを成し遂げても世界の抱える問題に大きな変化はない感じがする。でもゲームとしてめちゃくちゃ楽しい。そんな感じのゲームである。
個人的にはシナリオを読むのがクッソ激烈にしんどいゲームなのだが、孤星ばかりは脳みそ破壊されたので遺骨の回収をして弔っていただきたくクソnoteを書き始めた次第だ。
ちなみに孤星はイベント名である。私のnoteを見ても絶対全貌がわからないので気になる人はYouTubeで解説動画かなんかを調べてほしい。これは断末魔なのでわかりやすくはしない、てか無理できない。
異世界ゲーだったんですね?
孤星のシナリオは有人飛行機械を作った科学者夫婦が墜落死したところから始まる。ここで「それ飛行機でしょ」と思ったときに気付いた。あれ? アークナイツに飛行機出てきたことなくね?
異世界の表現方法は多岐にわたる。貨幣の単位とか異能力者とか異種族とか文明レベルとか。私は小学生の頃狂ったように空想科学大全を読んでいたのだが、その中にONE PIECEの世界はどの程度の文明レベルなのかを蛍光灯があるシーンから推測する話があったりした。文明レベル、学問の発展度合いはオレツエーなろう小説でもよく利用されているらしく、その世界より高水準のものをもってきて「オレなんかやっちゃいました?」するのがトレンドらしい。
でもまさか4年くらいやってたゲームで飛行機が存在してないことに今気付くなんて思わなかった。だってアークナイツは都市ごとキャタピラの上に乗っけて移動してるんだから、当然文明レベルは同程度だと思い込んでた。そのため、あぁそういえば異世界だ、と改めて認識させられた。
じゃあなんで飛行機なかったんだ、と考えて思い出した。そういえばモンハンコラボのエンディングで飛び立ったリオレウスが突然落ちて死んだ。あれはてっきり飛び立ってそこが命の終わる瞬間だったんだって思ってたけど、もしかして壁かなんかにぶつかったのでは? つまり、アークナイツの世界であるテラには天球がある、スノードームみたいに。
テラの住人はそれを理解しているので空に目を向けない、要するにこの世界には上に向かう学問、航空力学がない。航空力学がないということは、天文学もない。空に関する職業で出てきたのは占星術師だった。ならばテラの住人は宇宙の存在を知らない。
イベント冒頭のムービーで映ったのは明らかにロケットの打ち上げシーンだった。てことは飛行機がない、航空力学がない、天文学もない世界でクリステン・ライトさんは宇宙に旅立つ。なるほどなこれはやべー話だ。冒頭から脳みそが吹き飛んだ。
凡人は天才の礎
このイベントに至るまでライン生命はなかなかホットな組織だった。最初はサリアとサイレンスっていう婦妻が離婚調停してイフリータの親権はサイレンスが取ったとかふざけて言ってたんだけども、公式Web漫画でそれがあながち間違いでもなかったことが判明したりしてた。
実際はどんな組織だったかというと、天才クリステン・ライトに惚れ込んで集まった科学者集団だ。ただこの科学者達、成功のために手段を選ばない。人体実験だってモリモリやっちゃう。だってそれが効率いいから。そろいもそろって科学RTA勢なわけだ。そんでもってその成果を惜しみなくクリステンに捧げて協力してしまう。なんでそんなことするのか? 簡単な話、クリステンが天才だから。
私が大学の工学部に入学したとき、学科長に言われたことがある。
「この学科は1%の天才のための場所です。学科の人数は100人ですからたったひとりの天才のための場所になります。残りの99人はその礎です」
なんてこと言うんだ学科長。新入生に対して夢も希望もない。でも本当に天才はいた。本当にたったひとりだけ天才がいた。そのたったひとりの天才はマジですごかった。頭おかしいって思うくらいすごかった。なので凡人の私は思ってしまった。
「こいつの礎になれたら光栄だ。だってすごいことしてくれそうだし」
多分クリステンが「テラの外にあるところまで飛ぶ」って言ったとき、協力者一同は私と同じことを思ったんじゃなかろうか。そんでもってそんなとんでもないテーマを与えられた科学者は止まらない。テーマがでかけりゃでかいほど科学者は止まらない。
でもそんなの倫理がなさすぎる。そのRTA必要ないでしょ、犠牲が多すぎる。サイレンスが必死に叫んでたのはそれである。人体実験をゴリゴリやって得た成果でクリステンが大偉業を成し遂げたらみんなそれに続いちゃうから、そんなのダメだ、科学は人の手にある必要がある、制御できる科学であれ、というのがサイレンスの主張だ。
腹立たしいほどに優等生で夢物語だと思ってしまった。うるせえ宇宙いくぞ! と外野の私は思ってしまう。でもサイレンスの願いって本当にテラに生きてる凡人そのものなんだよな。
ライン生命度し難いジジイ達
ライン生命の構成員の中で今回最も度し難いと思われてるのはローキャンとパルヴィスだと思う。ロリに厳しいジジイは嫌われるって古事記にも書いてあるから仕方ない。こいつらがなんで度し難いことやりまくったのかの理由はそもそも倫理観がオワットルこととか手段選ばない覚悟完了しすぎてるとかもあるだろうけどその中に命の終わりが近いからってのもあると思われる。人生の時間は有限だ。何もしないには長すぎるのに何かをするには短すぎる。
先ほど思い出していた大学入学時に学科長が言った夢も希望もない話、あの夢も希望もないワードには続きがある。
「それでも君たちは理系の道を選んだのなら、世界に何かしら自分の作り出したもの、名前、生きた証拠を知的な何らかの形で残したいと思っているに違いない」
私個人は本当にそうで、ホモサピエンスという生物として子孫を残したということより、私という人間が何かを成したことを残したいと願ってしまう。知的活動を止めたくない、脳みそがギチギチになるくらい沢山知りたい覚えてたい。そんなことを思っている。なのでパルヴィスのこともローキャンのこともなんとなく理解できる。
パルヴィスの考えてたことはシンプルだ。身体の寿命の前に脳の寿命がきてしまったからことを早く進めたい。そのためなら何でもする。だから何でもして、最終的には伝達物質の中に自分の思考を溶かしてしまった。パルヴィスが不幸だったのは宇宙を見られなかったことだ。一方幸運だったのは悲願だった電子化された人格が地下にいたことを知らずに死ねたことだ。パルヴィスはクリステンの計画を正しく進めるために死ねたのかもしれない。でも完成された先行研究のある科学者は科学者として死ぬ。多分パルヴィスが科学者として死んでることを知ってるのはクリステンだけだろう。正直現実的な話でめっちゃ怖い。
ローキャンは投獄されていて、研究の一切を一度取り上げられている。生命維持装置はなんとか完成させたけど、恐らくそこにローキャンの名前は残らない。名も無き研究者が作った装置として伝えられるだろう、だって犯罪者が作ったとか汚点だし。なのでロスモンティスに罪人として残ろうとした。科学者として名を残せないなら罪人として残ろう、だって罪人なら罪の内容も残るから、自分がしたことも残る、みたいな理屈だと思う。結局それをロスモンティスに気づかれてただのローキャンとして生涯を終えた。ローキャンは何も残せなかった。
ジジイ達は生物的にも科学者的に死んだ。その反対に生き残ったのがジャスティンとフェルディナンドだ。ジャスティンはクリステンの思想に乗りつつ科学者達には肩入れしないで、はーオタクくん達はバカばっか、とうまく立ち回っていたのがよかったのだろう。フェルディナンドはライン生命のこともクルビアの発展のことも考えてて実はかなりすごい人だ。発見した公式を広めて使ってもらってたりするので、教科書に名前が載るタイプの人だと思う。宇宙ステーションからクリステンのやろうとしたエネルギー関連の技術を持ち帰ったため、これもかなり評価されるだろう。確かに色々やらかしはしたが、それでもおつりがくるくらいの功績はある。なんだかんだでフェルディナンドは省みられる人なのだ。活動家に寄り添うシーンはなかなか胸熱だった。
禁忌って侵すためにあって
中学生のときに導きの星というSF小説を読んだ。コールドスリープを重ねながら別の惑星の文明の発達を見守りつつサポートして宇宙進出をさせようという物語だ。この作品には禁忌がある。曰く、オーバーテクノロジーを与えてはならない。ところがその禁忌を保存者くんはさっくり破ってくれた。
この度ドクターくんと保存者くんが異世界人だということが明らかになってしまったわけだが、保存者くんは散々やらかしてくれている。だってクリステンの脳に瞳を授けちゃったんだもん。二番の大罪は宇宙の存在を教えたこと。三番の大罪はクソバカエネルギーをポンと与えたこと。でも一番の大罪はそれをクリステンがかわいかったからやったこと。おまけにそのかわいかったに娘に似てるってのが含まれてるのがよぉ! やってることが完全に導きの星である。イエーイ小川一水センセーイベントやったー?
多分保存者くんはプレイヤーサイドの文明レベルの持ち主だ。てことは我々はアークナイツの世界に対して異世界人であり上位者になってしまう。私がついさっきまで抱えていた「宇宙いいじゃんどんどんいけいけ」と思ってたのは余計なお世話なのだ。いやー気付いたときショックだったな!
でも保存者くんの気持ちもわからんでもない。仕事なんもかんもうまくいかなくて1万年も生きてて自死もできなくてってとこに娘に似た賢い現地人来ていろいろ聞いてきたらかわいくてかわいくてたまらなくてなんでもしてあげてしまう。幸か不幸かクリステンはその教えを理解できるほどに賢かったし人脈が揃っていた。結果空に向けて天球破壊ビームが撃てちゃった。やったぜ。やっちまった。ついでに保存者くん宇宙ステーションの形2001年宇宙の旅のやつにしたでしょ、孤星のメインメニューのアングルが2001年宇宙の旅のポスターになっちまってるぞどうすんだ。
明日に進むクリステンと昨日を目指すホルハイヤ
アークナイツはCV沢城みゆきを出してくれたので神。
ホルハイヤは種族がククルカンというバチクソ珍しい女である。ククルカン、別名ケツァルコアトル。最近よく見る。ムーチョムーチョだったり神のお姉さんだったり。だが声はナイチンゲール、モードレッド、ラーマ、アルテミス。
ククルカンの悲願は先祖返りしてつよつよだったあの頃に、である。その方法を見つけるためには禁術も惜しまない徹底ぶり。ホルハイヤは禁術で400年分の同胞の集めた知識と執念にさらに知識と執念を積み重ねてる。徹底的に過去を求めている。しかし短命である。多分寿命は42年。
対してクリステンは未来に生きている。何も省みず、自分が死ぬかもしれないのにそれでも構わないと先だけ見てる。ホルハイヤにとっては衝撃だったと思う。自分と真反対なわけだから。
さらにクリステンはホルハイヤのアイデンティティを揺さぶってしまった。「ククルカン」という種族の意志で先祖返りを目指していたのに「ホルハイヤ」個人はどうしたいのかを問われてしまった。おめーなんてことしやがると思っちゃったよね!
だってホルハイヤは今までずっと種族の悲願のために生きてきたのにそこで突然ホルハイヤ自身のこと聞かれても答えられないよ、物心つく前に禁術で400年分の執念インプットされちゃったら種族と個人の境界がなくなっちゃうのよ。ククルカンは過去を求めるしかないのにクリステンはやれ未来を目指せやら保存者くんはやれテラの外に有人の惑星があるやら好き勝手言ってきて。おまけに保存者くんは娘との思い出無限ループに入っちゃうし。
さて、ホルハイヤはロドスに身を寄せてから先祖返りの追求をやめるんだけど、なんであんなに求めてたことをあっさりやめちゃったのか。多分だけどククルカンが占星術を専門としてたからだと思う。同時に、テラって今まで天動説だったんじゃなかろうか。なのでククルカンの占星術も天動説の下に存在してた。でもホルハイヤはテラが惑星で、テラの他にも星があって、ということを知ってしまった。ククルカンの信仰していた学問が根底から覆ってしまったわけだ。そうなるともう、やってらんねえになるわけだ。またやり直しになる。でもそれだけ圧倒的質量の未来を叩きつけられてしまった。どれくらいの質料かというと、ホルハイヤの中で過去に憧れることがばかばかしくなるくらい。だからホルハイヤはククルカンに戻ることをやめたのかな。
ところで保存者くんの前で自分がどうなっちゃうのかそわそわしてるホルハイヤかわいいね。
ドクターくんさぁ……
トンチキ種族にニューフェイス「エルフ」がエントリー! エルフといえば長命だね!
ミュルジスは翠玉で出てきてドクターに救出されてるシーンが印象的。何が印象的って、あードクターくんやっちゃったね感が半端ない。アークナイツではあんまりやっちゃったねをドクターに感じないんだけどね、二アール家イベントでグラベル加入の時のやり取り以来のあードクターくんやっちゃったね案件だわ。
地上6000mから落下してきたサリアを助けて疲労困憊のミュルジス。サリアと袂を分かって親友だと思っていたクリステンに着いていこうとしたのに宇宙ステーションから落とされて傷心のミュルジス。同じ種族の仲間がいない孤独を埋めていたのに全て失ってしまったミュルジス。を、引き返してまで迎えにいくドクターくん。極めつけに、「私もたった一人の種族になっちゃった」と伝えるドクターくん。
もう助からないぞ。一生ミュルジスの面倒見ろよ!
サリア! 揺れているぞ! サリア!
対戦車ライフルで撃たれても6000m落下しても死なない女、サリア。生命力キヴォトス人かー?
今回も今回とてもっとちゃんと話せやサリアのオンパレード。親からヴィーヴルの狂気を抑える方法は学んだのに対話の大切さを胎内に置いてきたらしいもっとちゃんと話せ。なんでサリアとクリステンは毎回毎回殴り合わないと話せないの、河川敷で殴り合う下町スクールボーイかお前ら。
サリアはもう誰にも犠牲になってほしくなかった。未来への歩みが遅くなってもいいからみんなで進みたかった。でもクリステンは待ってくれない。保存者くんに瞳授けられちゃったから止めらんない。自分の人生のテーマに指が届きそうになったら止められるわけがないのよ。現にクリステンは何も省みなかった。何も省みない代わりに、自分が死ぬこともわかってた。でもサリアもクリステンが死ぬことがわかってたわけで。
サリアとクリステンの差は宇宙の存在を確信してるかしてないかっていうわずかなものだった。クリステンはもう宇宙があることを聞いてて信じてたから何も恐れることはなかった。一方サリアは確信してはいないからクリステンを止めたかった。結局、サリアは必ずここに来るって信じてたクリステンのが一枚上手でサリアはメガトンコインしちゃったわけだけど。
殴り合いしながらだけどサリアはがんばって話した方だよ。もっと早くそうしてれば少しは、いや変わらないか、変わらないわ。クリステンが自分が生きてたと感じる瞬間をサリアに夢を語った時だけだったって話を、ひとりっきりになってから言うのは優しいけど寂しいよね。でもそれをサリアに言わなかったのは正解なんだろうね。
生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え
42!
銀河ヒッチハイクガイドってご存知です? SF界のボーボボである。42とは小見出しの問いかけに対する答えで、色んな作品に擦られている。5メガネみたいな言い回しだと思っといていい。
ホルハイヤの寿命が42年なのはここからきてるんじゃないのかなって思ってる。保存者くんに出会った現地人がクリステンとホルハイヤだけで、クリステンはエンディングで出てきたように上記に該当する問いかけを、そしてホルハイヤはその過程をすっ飛ばした答えだけを受け取ってる形になるのかなと思ってる。銀河ヒッチハイクガイドでも42を受け取った人はキレてたからね。
さて、クリステンだけど最初からテラに戻ってくるつもりはなかったはずだ。だからミュルジスもサリアも置いてった。二人にはテラで生きててほしいからだろうね。マジで独りよがりでズルいわ。でもいいよそういうの好き。勝手な女好き。
クリステンの種族が犬なのはモデルがライカだからだろうね。Exステージでカウントダウンと共にエントリーしてきて周回軌道上を回るようにぐるぐる歩くクリステンはなんかとても良かったよウソです二度とあのステージやりたくないです。
宇宙ステーションの電力を落としていって生命維持装置に入ってメッセージを遺して眠りにつくクリステン、穏やかでしんどかった。地上ではあんなにドタバタしてるのにここはこんなに静かだなって雰囲気でおしまい。
最後のここ好き
「未来。」