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「これこわくない?」
あなたはサンタクロースを信じますか?
『星の王子さま』のキツネは
「こころでみなくちゃ……かんじんなことは目にみえないんだよ」と言いました。
サンタクロースなんて科学的じゃありませんね。
でも天才科学者ニュートンは神を信じていました。
コペルニクスは「神が創りし宇宙はもっと美しいはずだ」と言って地動説を唱えました。
21世紀現在『天動説も地動説もどちらも正解』だという科学者がいます。
広がり続ける宇宙の中で絶対的に止まっていると決められる基準は何一つありません。
『止まっている』
それ自体が見ている人間に委ねられるのです。
生物は細胞から成り、その中で何が起きているのかは分かってきましたが人間はその細胞ひとつ創る術を知りません。
私達はドコから来てドコへ行くのか?
まだ何も分かっていないのです
何を信じ、何を大切にするのか
一人ひとりの
『かんじん』は
こころでみなくちゃ…
ー幼少期の記憶ー
もうすぐ大好きなクリスマスだというのに
三太は泣いていた。
毎年今頃はクラスのみんながキラキラしていた。
「サンタさんに何かお願いした?」
「わたし、サンタさんにお手紙書いたよ❤」
「えっ?ボク?三太だけど」
「ちがうよ〜三太くんじゃな〜い!!
サンタさんだよ!そんなわけない〜!」
「あっ、だよね!アハハハハ」
これが、いつもはみんなの話をただ聞いて、静かに笑っているだけの三太が自ら話題に入れる唯一の鉄板ネタだった……
春には五年生になる。今年は少し様子がおかしい
いつもクラスの中心にいた男の子が
「サンタなんか信じてるの?
サンタなんていないんだよ!」と言い始めたのだ。
クラスは二分された。
「いるよー!だってうちには毎年来るもん」
「それは、お前んちのお父さんだよ!」
「去年もきたよ!」
「サンタはいないの!お前んちマンションじゃん!どっから入って来るんだよ!」
「いるもん!!」
「サンタは絶~対にいない!!」
「ナイショだけど、こっそり起きてたらサンタさん来たもん!ちゃんと赤い服で白いおヒゲのサンタさんだったよ!起きたらプレゼントもあったから本物だよ!お父さんのおヒゲは黒くてチクチクするやつだから…」
「仮装だよ。ハロウィンでも仮装するだろ!
か・そ・お!サンタはいないんだって!!」
「私もいないとは思うけど。でも、プレゼント貰えるから信じてるフリしる」
「ダメだ!大人が嘘をついているという事だぞ!子どもには嘘をつくなというくせに!去年もサンタなんて来なかったし、別にプレゼントも欲しくないし、サンタなんていらない!」
「なんでそんな事、言うの?サンタさんは本当にいるもん!」と泣き出す子もいた
クラスがサンタがいる派、いない派に分裂した。
その事が三太には苦しかった。
「みんな仲良くしようよぉ」
そして、違うと分かっていても
「三太なんていらない!」と聞こえてショックだった。
目から何かが零れ落ちた。
視界がゆがんでよく見えなかったけど
誰かが背中を優しくトントンと叩いてくれていた事を覚えている。
その後、話す機会がないまま理由も知らされず五年生になる前にサンタはいらないと言った彼は引っ越して行った。
ーおもちゃ屋にてー
三太は4歳になる愛娘のクリスマスプレゼントを選んでいた。
仕事はあまり順調とは言えなかったが家族の事を考える時間は、ほんわかと幸せな気分になる。
普段はあまりおもちゃを与えないようにしている。
「サンタさんからのプレゼントならいいか」と
自分に言い訳をし娘の喜ぶ姿を想像してどうしてもニヤニヤしてしまう。
ふと、顔をあげるとぬいぐるみを手に同じくニヤニヤしている中年の男性と目が合った。
「かわいいですね。」
「え?」
「クマさん…」
「あ、そのうさぎさんもかわいいですね」
「あ、ありがとうございます。あ、いや…まだ買ってないんですけどね」
クリスマスシーズンでなければ警備員でも呼びたくなる光景だ。
中年の男が二人、クマさんとうさぎさんのぬいぐるみを大事そうに抱えて真っ赤になりながらかお互いに「かわいいですね」とニヤニヤと見つめ合っている。
恥ずかしさ紛れに話かけてしまったが、こういう場合は会釈してそっと立ち去るのが正解だった。
「お子さんにプレゼントですか?」
見りゃわかるだろ!店員か!と三太は自分自身にツッコミながら話しを続けてしまった。
「ええ、まあ」
「きっと喜びますよ、では失礼します。」
三太にしては上手く切り抜けた方だ。
「あの~、」
立ち去ろうとする三太をクマのぬいぐるみを抱えた男が呼び止めた。
「サンタ?」
「あ、ええ。お互い大変ですね」
「サンタだろ?」
「ええ、まあ」
ーそんな大きな声出さないで下さい。ー
「サンタだよな、サンタだ!!サンタじゃないか!」
ーやめてくれ~!みんなが見てるぅー
「三太だよな!小学校で一緒だったろ?何十年ぶりだ?」
「あ…!!」
サンタはいないと言っていた彼が三太を見つけたのだった。
ー帰宅後ー
娘を寝かしつけた後、幼なじみで同級生の妻に彼との再会を話した。
「サンタなんていないって言ってた彼がサンタになっていたよ」
「なんか、良かったね。彼、お父さんが借金作って逃げちゃってお母さんの実家に引っ越したって聞いてたから。みんな連絡先も聞いて無かったし、元気で良かった。」
「え?そうなの?」
ー知らなかったー
「あ、そうだ。これサンタさんへお手紙。」
手渡されたのはどう見ても手作りのうすいピンク色の規格外に小さな封筒
『さんたパパへ』
「幼稚園でわたしのパパは三太だと言って喧嘩になったそうよ。でも、泣かずに帰って来て『パパはパパだもん』って言ってたよ」
封筒を開けると娘の小さな字が不揃いに並んでいた
『いつも おしごと ありがとう パパだいすき』
パパはパパだもん…か
涙腺が崩壊した。
「こんなに小さく書く方が大変だろ…うぅ」
「大人にもサンタさんはプレゼントをくれるんだね」
気づくといつの間にか妻が背中を優しくトントンと叩いてくれていた。
才の祭への応募作品でした。
いつもフザケた事しか考えていない私が割と真面目に書きました。
感想をいただけると嬉しいです。
はてさて、大蛇に呑み込まれたとうちゃんきりん二世はどうなるのでしょう?