ISO感度はオートがいいの?それともマニュアル?
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ところで、ISO感度はどういう設定にするのがベストなんだろう?って話になるとこれがまた一筋縄ではいかない。
GoogleとかBingとかで検索してみるとわかるが、ISO感度はオートがおすすめだと断言する人がいるかと思えば、その反対にオートは解除するべしと主張する人もいたりする。
で、それぞれの言い分を見るとどちらも筋はとおっている。間違ったことは言っていない。のはいいのだけれど、じゃあ、オレはいったいどうしたらいいんだ?という重大な問題はそのまんまどどんと残っているのである。
さて、どうしましょうかね。
というのを書いてみたい。
手ブレを起こしにくいシャッタースピードのこと
ISO感度の設定をどうするか、の前に「手ブレ限界」というのを知っておいたほうがいいように思う。
「手ブレ限界」とは、フィルム時代から伝わる手ブレを起こしにくいシャッタースピードのことだ。
手ブレを防ぐにはシャッタースピードを速くするといい(というのはたぶん前に書いたと思う)。シャッタースピードが速いほどブレにくくなり、遅いほどブレやすい。
で、これぐらいのシャッタースピードなら手ブレは抑えやすいだろう、という目安にされているのが「手ブレ限界」だ。
とは言え、実際のところはシャッタースピードが遅くなるに連れて手ブレを起こす率が高くなっていくのであって、あるシャッタースピードまではブレなくて、それより遅くなった途端にブレる、なんてことはない。
だから、本来は「限界」という言葉を使うのはへんてこなのだが、ワタシがカメラをいじりはじめたころは、手ブレ限界より速いシャッタースピードで撮って手ブレを起こすのは恥、みたいな風潮があったように思う。
さて、この手ブレ限界は、一般には「1/焦点距離」秒のシャッタースピードということになっている。
装着したレンズの焦点距離(ズームの場合は撮影する際に設定している焦点距離)が100mmであれば「1/100秒」が手ブレ限界となる。35mmのレンズなら「1/35秒」のはずだが、表示上その数字はないものだからそれより少し速めの「1/40秒」が手ブレ限界だ。
ただし、これはフルサイズのカメラでの話で、APS-Cサイズのカメラであれば焦点距離の数字を1.5倍(ソニー、シグマ、ニコン、フジフイルム、リコー/ペンタックスの場合)または1.6倍(キヤノンの場合)、マイクロフォーサーズなら2倍にしたフルサイズ換算の焦点距離を使う。
ので、たとえばソニーのAPS-Cサイズのカメラに50mmレンズを着けた場合は、「50×1.5=75」になるので、「1/75秒」より少し速い「1/80秒」ということになる。
ISOオートは手ブレを減らしたい人向け
ISO感度をオートにしておくと、暗いシーンで自動的に感度が高くなる。
このときの基準として使われるのが手ブレ限界だ。
たとえば、フルサイズのカメラに50mmのレンズを着けていて、ISO100で絞りF4、シャッタースピードが1/60秒だったときに、絞りをF5.6に絞るとどうなるか。
ISO感度が固定ならシャッタースピードは1/30秒に下がる。そうすると手ブレの危険性が増える。ので、シャッタースピードは手ブレ限界の1/50秒をキープする。
が、1/30秒にするべきところを1/50秒で撮るのだから露出が2/3段足りなくなる。その足りない分をISO感度を上げてカバーしよう。というわけだ。ので、ISO100から2/3段上のISO160にする。これで帳尻は合う。
ここでたとえば着けているレンズを焦点距離100mmのものに交換する(または100mmにズームする)。と、手ブレ限界は1/100秒。ので、カメラが設定するシャッタースピードも1/100秒に上がる。それをカバーするためにISO感度はISO320に上がる。
とまあこんなふうに、手ブレ限界をキープするようにISO感度を上げてくれる。ある意味、ISOオートは手ブレを起こしにくくするための方策である、とも言えるのである。
あ、逆に焦点距離の短い広角レンズに交換する(または広角側にズームする)とどうなるか。
焦点距離が24mmになったとすると、手ブレ限界は1/24秒に近い1/25秒になるが、これぐらいのシャッタースピードになると、カメラに慣れていないとブレやすかったりする。
ので、多くの場合は、広角レンズを使っても1/60秒とか1/30秒とかより遅いシャッタースピードにならないようにしてある。メーカーの人たちは心配性なのだ。
マニュアル設定は高画質で撮りたい人向け
ISOオートのよくないところは、高感度がいらないシーンでも感度が上がってしまうことだ。
強力な手ブレ補正を搭載していても、三脚に固定していてもおかまいなしに手ブレ限界基準でがんがん感度を上げる。
ISOオートで上がる感度の範囲にもかぎりはあるが、たいていの場合、その感度になると画質的にはだいぶ落ちる。
ので、たとえば日本三大夜景とかが目の前にあって、それをISOオートで撮ったらせっかくの美しい夜景がザラザラ画面になってしまう。
「でも、ブレてたら台無しだろ?それよかマシじゃん」
という考える人もいるだろう。
でも、三脚があればすむ話だし、三脚がなければテーブルとかにおいて撮るのでもいい。電柱やフェンスに押しつけるようにして撮るだけでもかなり手ブレを抑えられる。
それに、最近の手ブレ補正はおそろしく頼りになるのだ。カメラによってはシャッタースピードが数秒なんていう条件でもブレずに撮れたりする。
しかも、ISOオートは手ブレ限界を基準に感度を上げるくせに、手ブレ補正の効果は加味しない。手ブレ補正の効果が5段あるからといって、5段遅いシャッタースピードまでOKなことにはしてくれない。どうして?って思ってしまう。
そういうのも考えだすと、ISOオートのメリットもあやしくなってくる。
ので、ISO感度は手動で設定して、必要なシーンでだけ手動で上げ下げすればいい。ISOオートに比べれば手ブレの危険性は増えるけど、そこは枚数を多めに撮ることでカバーすればいい。ブレにくい高めの感度と画質のいい低めの感度の2枚撮っておいてきれいに撮れたほうを残せばいい。
ISOオートとマニュアルをどう使いわけるのが賢いの?
ISOオートには手ブレを防ぎやすくする効果があるし、一方、マニュアル設定には高画質で撮れるチャンスが増えるメリットがある。
では、それをどういうふうに使いわけるのがいいのかを考えてみる。
いちばんに考えないといけないのは、使っているカメラの高感度耐性。どのぐらいの高感度までなら許容できる画質が得られるのか?ということだ。
メーカーの基準では常用感度が普段使ってもらって大丈夫な範囲、拡張感度はちょっと難あり画質だけど非常時には使ってね的な範囲、というような区分けになっているわけだが、実際にどのへんまで気にせず使えるのか、というのは個人の感覚に大きく左右される。
どの程度のノイズ量なら問題ない、とかの統一的な指標や基準はない。あくまで使う人自身が「このへんまでならOKかなぁ」というのを決めないといけないのである。
ワタシ個人は2つの尺度で考えることにしている。ひとつは「ベース感度で撮ったのと比べてそんなに見劣りしない画質で撮れる範囲」。もうひとつは「高感度で撮る必要があるのがわかる条件でなら我慢できる画質で撮れる範囲」だ。
ひとつめのは安心してISO感度を上げ下げできる範囲で、ようはワタシ個人にとっての常用感度である。カメラによってはJPEGとRAWの差が大きいケースもあるので、どちらをメインにするかでも範囲は変わってくる。
カメラメーカーの純正RAW現像ソフトだとJPEGとRAWの差はそんなに出ないこともあるが、サードパーティー製RAW現像ソフトには高感度ノイズの処理が上手いものもあって、RAWのほうが感度1段分ぐらいきれいに仕上がるケースもある。ので、そのへんもにらみつつ決める必要がある。
もうひとつのがワタシ的拡張感度なわけで、たとえば室内だとか夜に動くものを撮るときとかにだけ使う。「高感度じゃなきゃ撮れないよ」と思えるシーンなら多少ノイズが出ていてもまあしょうがないねと割り切れる。そういう感覚で線引きをしている。
高感度の画質と手ブレ補正の強さのかねあいで決める
自分の中での常用と拡張の線引きをしたら、次は手ブレ補正の強さを考える。
たとえば、常用感度の上限があまり高くなくて、なおかつ手ブレ補正が強力なカメラであれば、ISOオートは捨ててしまってもいい。
多くのマイクロフォーサーズ機はベース感度がISO200と高めで、ワタシ的常用感度の上限はISO1600ぐらい。なので、ISOオートでいける範囲がけっこう狭い。それに総じて手ブレ補正が強力だ(ボディに内蔵していないものはそれほどでもないが)。
そういうタイプならマニュアル設定オンリーでいいと思う。手ブレ補正に頑張ってもらって、その分感度は抑えめにして画質をなるべくキープするのがベターだと思う。あ、動きものは撮らないという前提での話だけどね。
反対に高感度の画質がよくて手ブレ補正が弱めのカメラの場合は、感度はアゲアゲでいくのがよさそうだ。
最近のフルサイズ機ならだいたいは高感度に強いので、画質劣化よりもブレないことを優先したほうが手っ取り早い。
ぶっちゃけ、どんなに画質がよくてもブレていたらそれでアウトというのは少なくない。と言うより、「ブレていても表情がいい」とか「ブレが味になってる」とかのほうがイレギュラーなのだ。
手ブレ補正がない、または弱いならISOオートのほうがらくちん。手ブレ補正が強力で、撮るのが動かないものであれば、シーン次第でマニュアル設定に切り替えるのがおすすめ。ISOオートで確実にブレてないのを1枚、ISOオートの感度よりも2、3段下げたのも1枚撮るとかすると成功率を上げやすい(もっと多めに撮っておいたほうが安心だけどね)。
一方、室内スポーツや夜間にストロボを使わずに人物撮影をするようなシーンは多少ザラツキが出たとしても許容できるし、むしろブレ防止に重点を置くべきなので、シャッタースピードを速めに設定したい。
ISOオートの低速限界(感度を上げはじめるシャッタースピード)を使うレンズの手ブレ限界よりも速めにするぐらいのほうが失敗しにくい気がする。
まとめ
とまあ、長々と書いてしまったけれど、つまるところ、オートとマニュアルのどちらが正しいとかではなくて、カメラによっても使う人の許容範囲によっても被写体や撮るシーンによっても対応は違ってくるので一概にはなんにも言えないのだ。
なんか丸投げっぽくてちょっと申しわけないんだけど、いちばん大事なのは自分にとっての常用感度と拡張感度の上限を把握しておくことだと思う。
それさえつかんでおけば、あとはその場その場で考えればOK、ということでよろしくお願いしたい。
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