ムジカノートと廉価ケーブルの一方的コラボ
共感する点の多いムジカノート
非常にエッジの立ったモノづくりを展開されているムジカノートの山本雄一代表が、noteでも情報を発信しておられる。ローコストで高音質のシステムを構築するための、自作やオペアンプ交換を含めた提案が進んでいる。ご本業でもいろいろ面白い機器を開発なさっているし、その上noteまでとは、本当にフットワークの軽い人だと敬服するところだ。
MusicaNote 山本雄一
https://note.com/musicanote707
そんな山本代表の最新作は、本社スタジオで使用中のケーブルについてだ。文字通り非常にローコストだが要を得たケーブル作りに、僭越ながら「分かってるなぁ」と、読んでいて声が出た。詳しくはぜひ本文をお読みいただきたい。
Low Cost but HighEnd Sound Systemの構築~その5 RCAケーブル、スピーカーケーブル
https://note.com/musicanote707/n/n09f4ddd2fe41?rt=email&sub_rt=daily_report_followee_notes
しかし、ローコストでケーブルを作り、システムへ導入することにかけては、私も決して負けてはいないつもりだ。しかも、山本代表と全然考え方の違うケーブルを多く用いているから、これは一つ、一方的ながらコラボ企画的に当方の廉価ケーブル、自作が中心だが完成品も晒してしまおうと考えた。
電力線と廉価プラグで大量製作
RCAのインターコネクト・ケーブルは、2024年の2月まで担当していた衛星ラジオ・ミュージックバードの「オーディオ実験工房」で、それはそれはたくさん作り、音質を電波へ乗せたものだ。凝ったもの作りは専ら相棒の「オーディオみじんこ」こと荒川敬さんが担当し、私はホームセンターで購入できる電力線やスピーカーケーブルを用いた製作品が中心だったが、それでも「こんな程度でも結構ちゃんと鳴るんだな」とわれながら感心したケーブルを、リファレンス・システムのいろいろなところへ仕込んでいる。
そんな中でも、一番音が素直で扱いやすく感じているのが、1.25スケアの2芯平行線VCTF-Kコードを用いたインコネである。その辺の市販コンセントでもよく似たものが使われている、最もありふれた電力線だ。これにトモカの廉価なRCAプラグを組み合わせたものが、番組でも鳴らした実験ケーブルである。現在はこれを、ディスクプレーヤーとプリアンプの間で使っている。
また、2芯ツイスト線の1.25スケアと0.75スケアのVCTFを使ったRCAケーブルも自作しており、こちらは1.25スケアの方を、プリのREC OUTからサブシステムの小型PWMアンプへ信号を導くのに用いている。
捻じるのがいいか、平行線か
なぜ平行線のVCTF-Kがメインシステムで、ツイスト線のVCTFがサブシステムに採用されているかというと、平行線の方が高域が幾分伸びやかに聴こえたからだ。芯線を捻じり合わせるとノイズに強くなる半面、高域方向はインダクタンス成分によって若干なりとも阻害されるのかな、という気がしている。
一方、山本代表はモガミの2534という4芯シールド線を用いられ、+と-をスターカッド接続としてノイズを下げ、さらにシールド線をRCA両端のアース側へ接続されているという。最も厳重にノイズを排除する方式といってよいだろう。
シールドは状況次第で良し悪しに
個人的には、オーディオ用ケーブルはノンシールドの方が音質的に好ましいと考えている。実際に、VCTFのRCAケーブルに銅箔テープを巻き付けてシールドしてみたら、やはり高域の伸びやかさが若干ではあるが抑えられたような音になったものだ。しかし、実際にはノイズの飛び込みを抑え切れないことが多く、そういう場合には必要悪としてのシールドが大きな役割を発揮する。
ムジカノートのスタジオは、音楽ライブも行える大きさと機材がそろっており、そういう意味ではわが家のようなごく普通のホームオーディオより、ノイズ的に厳しい環境であろうことは容易に推測ができる。単純な2芯の撚り合わせよりずっと効果の高いスターカッド構造で、なおかつシールド線まで完全に導通させておられるのは、その環境の厳しさゆえなのであろう。
一方、ムジカノート・スタジオのスピーカーケーブルは、まさにスタジオユースの定番というべきカナレの4S8Gが採用されている。芯線の太さは2スケアで、山本代表の実験によるとこの太さが最もバランスが良かったのだとか。
導体断面積は音質に大きく影響する
あまり知られていないが、全く同じ導体と被覆で導体断面積の違うケーブルを作ったら、太いほど低域が豊かになる半面高域が曇り、細いほど高域が伸びるが低域が寂しくなる。その実験が実に行いやすいのは、私がインコネでも使っている電力線だ。特にVCTは2.0~5.5スケア、VCTFは0.75~2.0スケアまでそろっており、しかも廉価だからいろいろと実験しやすい。
それらで散々実験した結果、わが家では3.5スケアのVCTが最もウェルバランスのような気がして、電源ケーブルにもスピーカーケーブルにも使っている。もっとも、メインシステムのスピーカーケーブルはゾノトーンの高級品を使っており、VCTでつないでいるのはサブシステムだが。
ここで山本代表が2.0スケアをセレクトされたことを悪くいうものではない。そうやっていろいろな太さを試し、自分の装置や音楽と合うものを確かめる、その営為こそが尊いものだと、個人的には考える次第だ。
バナナだけは新しいものを!
ただ、山本代表に一つだけ、ご提言申し上げたい。お使いのバナナプラグは確かに一流メーカー製のものだが、少々開発の世代が古い製品とお見受けする。バナナプラグの品質は、近年劇的に向上しているから、廉価なものでももう少し開発年次が新しいものを使用なさるのがよいのではないか、と思うのだ。
なお、VCTケーブルにも4芯のものはあるが、私は2芯をずっと愛用している。若い頃は故・江川三郎氏がスターカッド接続を称揚されていたので、私も影響されて2スケア4芯のVCTFをスピーカーに使っていたが、ある時2芯の3.5スケアVCTを試しに買ってみたら、おやこっちの方が良いんじゃないかと気づき、以来ずっと2芯できている。
この件もどちらが正しい、間違っているではなく、やはりスタジオとホームの違いで選択が分かれている、と考えるのが妥当であろう。
例えば、メーカー製のケーブルでノンシールドの製品はほとんどない。これは、ユーザーがどんな環境で自社製品を使用するか分からない中、ノイズが乗って酷い再生音になるリスクを冒すことが難しいからであろう、と推測する。ノンシールドのケーブルを試すのは、ある意味で自作派の特権に近いところがあるのだ。その分、ノイズが出ても自己責任ということになるのだが。
デジタルケーブルはアンテナ線で
このほかで自作ケーブルというと、S/PDIFの同軸デジタルケーブルくらいか。こちらも簡易なもので、S-5C-FBの同軸線へ廉価なコレットチャック式プラグを取り付けたものである。メーカー製高級デジタルケーブルと比べれば、やはり音像が薄味になり、音場も若干は小ぢんまりするが、それでもそう捨てたものではないクオリティを有していると考えている。
お次は、完成品ケーブルで現用中の「ガマンできるレベル」の廉価品を晒していこうか。
わが第2リファレンスはマルチアンプ4ウェイで、膨大な量のインコネが必要になる。これらに全部、たとえ廉価品でもオーディオ関連メーカーのものを用いると、それだけで破産してしまいそうだ。なら自作するかといっても、膨大な時間がかかってしまうので断念せざるを得ない。
まぁまぁ使えたELPAのRCAケーブル
それで、家電量販店に吊るされている激安のRCAケーブルを片っ端から買い込んで音を聴き比べ、まぁこれなら使えるかというケーブルを大量購入して使っている。ELPA朝日電器のAD-100(50cm)である。
AD-100は、その後も「オーディオ実験工房」での実験などにいくつも買って使ったが、残念ながら近年いささかプラグなどの精度が落ちたように感じる。600円やそこいらで買えるケーブルだけに、無茶をいっては申し訳ないが、往年の精度と音質を取り戻していただけると嬉しい。
デジタルも短い方がやっぱりいい?
メーカー製のバカ安ケーブルといえば、これも外せない。秋葉原・千石電商のワゴンで購入したUSBケーブル(50cm)である。本当に何の工夫もされていないただのUSBケーブルだが、この短さが功を奏しているのか、そう捨てたものではないハイレゾ再生をものにする。
もっともその再生音は、パイオニア製のオントモムック付録「ドレッシング」APS-DR000Tを通しているから、という要素も大きいが、それはどんな高級USBケーブルでも同じことである。
同じくデジタル系でいえば、前に紹介したが、アマゾンベーシックの30cmLANケーブルもなかなかのクオリティだ。つないですぐは中~高域と低域で何だか別のケーブルが鳴っているような様相で、低域のみ水飴をかき混ぜるような抵抗感というか、音が鈍く伸びない傾向があったが、エージングが進むとそれも解消する。それこそ何でもないケーブルだが、十分に「ガマンできる」音質である。
データ用LANケーブルにご用心
一方、LANケーブルでとてもガマンならなかったのは、バッファローのカテゴリ6Aケーブルだ。だいぶ古い世代の製品だから、現行品も同じクオリティとは思わない方がいいだろうが、まぁ私が使っていた世代のものは音色が濁って音場は曇り、音楽を口先だけで歌うような惨憺たるケーブルだった。
あとは、自作スピーカーの内部配線などに赤黒のVFFケーブルを使っているくらいか。昔の「オマケ」スピーカーケーブルとよく似た電力線だが、これも比較的余計なキャラクターが付きにくく、いろいろと愛用している。
わが家の廉価ケーブルというと、大体こんなものである。誤解のないように申し添えるが、私は高級ケーブルに意義がないと考えているわけではない。現にゾノトーンやティグロン、オヤイデ、AET、コードカンパニーなどのケーブルがわが家で実働中だし、わがシステムの音作りへ大いに役立ってくれてもいる。
それでも、特に廉価なメーカー製ケーブルを試聴する際、あまり豪奢なケーブルと取り替えて音を聴くと、それはあからさまな「マイナス実験」となってしまう。それを避けるため、要所に配しているのが「ガマンできる」ケーブルである。上級オーディオマニアの皆さんへは何ら参考にならないかもしれぬが、限られた予算で頑張る入門~中級マニアなら、一定の意義を認めていただけるのではないか。
世の中、高級ケーブルがなければ愛器の性能が存分に発揮できないかというと、それほどでもない。ご予算いっぱいで機材を購入、廉価ケーブルを使いつつ、次にお金が貯まったらケーブルも上級品へ買い替える。そんな人生も楽しいのではないかと私は考えるが、皆さんはいかがだろうか。
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