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「優先席」のこと
日本国内の電車・バスには、必ず「優先席」「ゆずりあいシート」などという名前の座席が設置されています。
優先席を必要とされる方が多い反面、それをめぐって、ちょっとしたトラブルも起きています。
私は、「優先席」という存在は「無意味なもの」と考えています。では、なぜそのように考えているのか、そもそも「優先席」とは何なのか、誰のためにあるのか、本当に必要なものなのか、いろいろと考えてみます。
「シルバーシート」の誕生
まず、「優先席」は、いつ誕生したのかについてから。
Wikipediaには、以下のように記載されていました。
日本で本格的に行われたのは、1973年9月15日(当時の敬老の日)より旧・日本国有鉄道(国鉄)により「シルバーシート」の名称で中央線快速を始めとして東京・大阪の国電区間に順次導入され、私鉄でも同日に伊豆箱根鉄道駿豆線・大雄山線両線で、シンボルマークのデザイン等を流用して同名の「シルバーシート」として使用開始されたのが始まりである。
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「シルバーシート」という名称になったのは、座席を区別するために、当時の本社旅客局営業課長の提案で、新幹線の座席に使う布地の予備を使ったからと言われているそう。それがたまたま「シルバー色」だったから「シルバーシート」。単純かつ分かりやすい理由です。
ただ、設定当初、利用対象を「高齢者」としていたことから「シルバー」という言葉が、いつからか「高齢者」を指す言葉になってしまいました。
私は1975年生まれ…物心ついたときには、すでに「シルバーシート」という名称が定着しており、「シルバーシート=お年寄りのための優先席」というイメージを持っていました。後に、それが誤りだとわかるのは、名称が変わってからでした。
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人型のピクトグラムで表示されるのが一般的
いまのように、身体障害者や妊婦、子ども連れの人も利用対象とされたのは、1990年代後半ごろから。その頃に、名称が「優先席」「優先座席」などといったものに変えられました。いまの若い人に「シルバーシート」と言っても、「国鉄」「電電公社」「専売公社」などと同様、通じないかもしれません。
しかし…こうでもしないとマナー向上につながらなかったほど、「シルバーシート」導入以前が、いかに酷かったかというのは、容易に想像ができます。当時はゴミのポイ捨ても当たり前に行われてしまっていたようですし…。
優先席の「マナー」
これについて、Wikipediaには、以下のように記されています。
日本では「若者が優先席対象者に優先席を譲らない」という事態が日常的に起こっているとされている。これについて、多くの日本人が持つとされる「誰かに迷惑を掛けてはいけない」という心が起因しているとの指摘がある。即ち、若者は「譲ったら『私はまだ席を譲ってもらう程歳を取ってはいない』と怒られてしまうかもしれない」と忖度し、譲られた側は「周囲に迷惑を掛けたくない」「若い人は仕事で疲れているのだから座らせてあげよう。私はすぐ降りるのだから」と考えている、とのことである。また、「周りの誰も譲ろうとしないのだから」という集団心理もあるとの指摘もある。
また優先席が設けられたことで、それ以外の席の前に席を必要とする者が立っていても「優先席があるのだから、座りたければそっちへ行けばいい」と席を譲らない者が増えたとの指摘もある。
なるほど、いかにも日本人らしい理由だなと思いました。日本人は「右に倣え」の精神が叩き込まれてしまっています。それ故のことなのかもしれません。これを、よしとするのか否かは、ケースバイケースである反面、倣い過ぎたところで、何もならないのではないかとも思います。
全席優先席にしてみたら…
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(Wikipediaから Photo by MaedaAkihiko)
過去、横浜市営地下鉄が「全ての車両、全ての座席を優先席にした」ということがありました。
2003年(平成15年)、横浜市交通局は、地下鉄の全席を優先席にすると発表。しかし「浸透してきたので続けて欲しい」という声がある一方で「席を譲ってもらえない」という声が多く寄せられたため、見直しを迫られることに。
結局、その9年後の2012年(平成24年)に「ゆずりあいシート」という名称をつけた上で、もとに戻されました。つまり「全席優先席にすることは、9年間やってみたけど無意味だった」という結果になったのです。
先述の「集団心理」が働く環境では、安易に「全席優先席にする」というのは、難しいことだったのかもしれません。
「優先席」の必要性は?
「優先席」というものが、なぜ存在するのか。私の考えとしては、それは「自分のことしか頭にない人がいるから。そのために、本来、不必要なものを作らざるを得なかった」ということに尽きると思います。
元路線バス乗務員の立場で言わせて貰えば、特に路線バスでは、基本的に、安全のため、空いていたら「どの座席でもいいから着席してもらいたい」と思っています。
バスは、他車や歩行者が、いつ不可解な動きをするかがわからず、常に「危険」を予知しながら運行しています。それでも、どうしても事故に繋がりかねない状況になってしまうことが、多々あります。そのため、いつ急ブレーキを踏まれたり、急ハンドルをかけられたりしても、着席することによって、ある程度は身を守ることができます。立席よりは、遥かに安全なのです。
(もちろん、座ることで何かしら身体に支障があるというかたは、この限りではありません。また、座席が空いておらず、やむなく立席となることもありますが、その場合は、つり革・手すりに“必ず”つかまることが必要です。立席でスマホ操作などしていては、我が身を守ることができませんので、やめましょう。)
したがって、優先席も、そこが空いていたら、身体がなんともない人でも、別に座ってもいいのです。若い人が優先席に座ってはいけないなどという法律はありません。「近くに座席を必要とする人が居れば、譲ってくださいね」という話…それならば、その席が優先席である必要はないはずです。
これは、電車でも同じことが言えます。
今日もどこかで「分断」が起きている
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その人が心身に障害を持っていたり、妊娠していたりしていても、例え「ヘルプマーク」「マタニティマーク」を所持していても、「若いから」という理由だけで「優先席に座るな」と言う人がいます。
これは明らかな「差別」。自分の誤った認識によって、他人を傷つけていいはずなどありません。しかし、こういう人は、令和の今になっても、残念ながら、まだまだ多く存在します。
自身の考え方を、時代に合わせてアップデートしていかなければ、間違いなく孤立することになるでしょう。そうならないように「自分の考え方が世間の常識だ」とする、とんでもない考え方は排除すべきです。
以上の理由から、私は、優先席そのものを「無意味なもの」と考えています。そんな無意味なものによって、きょうもまた、分断が起きているのです。
分断が起こるくらいなら、「優先席」なんてくだらないものなど、本来、無い方が良いと考えます。しかし、こういうものを作らないと、本当に座席を必要とする人の存在があるということを理解できない、わかろうとしない人も多いわけで…。難しいです。
とにかく、外に出たら「自分中心で物事を考えないこと」、「周囲の人を最優先に考えること」。これができれば、どんなトラブルも減るはずです。