八月三十日
【山行】ハンノキ尾根から鶏冠山-柳沢峠
8月頭の大菩薩嶺への山行から一月と経たず、今度は計画中登山地図で気になっていた、大菩薩嶺の北側、鶏冠山へ向うことにした。
『山と高原地図 大菩薩嶺』コースガイドに記載されている鶏冠山のモデルコース通り歩けば、コースタイム3時間40分の短い行程。
山上からの見晴らしを楽しみたくも決まって週末に天候が悪くなるこの夏。午前中は快晴で夕方から雨予報のこの日、短い時間でも眺望を求めるにはうってつけの行程だった。(下記リンク先登山計画)
塩山駅から柳沢峠方面落合行のバスへ乗り、柳沢峠-落合の自由乗降区間内にある鶏冠山登山口前で降ろしてもらう。あまり利用する人がいないようで、この日の運転手は場所を知らなかったようだけれど、柳沢峠で一度声をかけてから、GPSを追いながらなんとか位置を知らせることができた。
【START】鶏冠山登山口前 9:39
明るい道から林内へ入り登山道へ。
樹々の合間から光が差し込み、朝露に濡れた苔を照らす。
少し進むと影が濃くなり、苔むした岩や倒木が転がる山中へ。
斜面を巻いて眺めのある道では、動物の痕跡らしきものも。サルナシの実が動物達にも気に入られていそう。
以降は両側とも樹々に覆われた樹林帯の中、ゆるい傾斜を進みゆっくりと高度を上げていく。
しばらく進むと、聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。
初め一頭だけかと思ったが、奥から子鹿が現れ、どうやら親子のようだった。ずっとこちらを見続け、こちらが立ち去るまで鳴き続けていた。警戒させてしまったかな、ごめんなさい。
母鹿に追い立てられて、足元の緑が濃くなってゆく道を進む。
針葉樹が多いという印象は特別受けなかったけれど、亜高山帯は苔が多いのか。苔の道はとても気に入って、度々撮影に立ち止まった。
鶏冠山山頂への分岐の先は岩場になっていて、がらりと雰囲気が変わる。
メボソムシクイのさえずり。姿もはっきり見えたけれど、収めることができなかった。
謎の小ピーク。事前に調べていなかったらここを山頂と勘違いしてしまいそう。目指すはもう少し岩を乗り越えた先。
12:06 鶏冠山山頂(1700m)
意外な程切り立った岩峰の鶏冠山山頂。
丁寧に作られているようで、味のあるお社。
待望の眺めもとても良く、山座同定はできないけれど、南側の大菩薩連嶺と思われる山々の姿が綺麗に連なっていた。やはり見晴らしの良い山頂は気持ちが良い。
岩肌の質感や眺める山々の組み合わせが愉しく、ゆっくり休憩したいところだったが、ここまであまり現れなかったアブがこの山頂で集まってきた(大菩薩嶺の時も開けた場所でたくさん寄ってきていた)ため、調理は諦め、行動食の羊羹を食べて足早に山頂を離れた。
分岐まで戻り、見晴台を往復した後は、標高1470mの柳沢峠までかなり緩やかに下っていく。
単調な道のりが続いてきたが、六本木峠を過ぎたあたりから、今回最大の苔ポイントへ差し掛かった。
日が翳り暗い林内でも眩しいほどの緑の絨毯。出会えて幸いな景色だった。
シカ柵を抜けると、東京都水道局が管理する「水源地ふれあいのみち」として整備された広い道へ出る。バスの時間には間に合いそうなので、多摩川源流の山々を望む展望台へ立ち寄り。
15:20 柳沢峠【GOAL】
もうひとつシカ柵を抜け少し進めば柳沢峠へ到着。
峠の茶屋で和風ソフトクリームをいただき、15:40発のバスで塩山駅へ戻る。
帰りの車中で雨が強く降り出し、大菩薩峠登山口のあたりでは雷雨となっていて、下山者たちが急いで乗り込んできた。
この雷雨も麓に着く頃には上がっているという、夕立なのかどうか、めまぐるしい天気だった。
雨上がりでまだ明るい塩山駅ではツバメの雛(といってももう立派な体つき)の合唱がお出迎え。改札口のコンビニで買ったワンカップのワインを楽しみながら、ホームで各駅停車の列車を待った。
《山行を振り返って》
5時間40分、山頂での休憩もほとんどなかったことを考えると、コースタイムより2時間遅れとかなりゆっくりの歩みだったけれど、観察や撮影をじっくり楽しむことができて、充足感の大きい山歩きだった。
長い距離を歩くのも満たされるけれど、時間に追われる場面が多くなってしまいがちで、今回のように余裕が充分にあるのんびり山行もまた気持ちの良いものだと実感した。交通手段が自前になれば、もっと時間と気持ちにゆとりを持って楽しむことができるだろう。
また、今回は下りの距離も標高差もないため、右脚の状態にも響くことなく無事に回ることができたが、果たして今どのような状態なのかは気になる。