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八月二日
【山行】大菩薩嶺-大菩薩峠-丹波大菩薩道
7:38甲斐大和駅着、駅を出るとすぐ待ち構えていたバスに意表を突かれ(8:10の予定だったが、臨時便が出ていたようだ)、周囲を見渡す間も無く乗り込む。巻いた道を力強く登るバスに揺さぶられながら、標高1580mの上日川峠へ向かう。
久し振りの山梨、そして今回は大菩薩嶺、初めて日本百名山のひとつを目指す。
【登山計画】
上日川峠BS 9:00 -9:25 福ちゃん荘- 10:45 雷岩 -10:50 大菩薩嶺
-11:45 賽ノ河原 (休憩1h) 12:45 -12:55 大菩薩峠
-13:35 フルコンバ -14:35 ノーメダワ -15:35 追分-16:40 藤タワ
-17:30 高尾天平登山口 - 17:40 丹波役場前BS
上日川峠バス停の目の前に構える「ロッヂ長兵衛」。山小屋を見るのは初めて。小屋の前ではちょうど旬の桃が売られていた。少し傷んだ訳あり品だが、1個100円。手で皮をむきかぶりつくと、甘く爽やかな果汁が溢れる。桃まるごとなんて何年振りだろう。
そんな訳で予定よりも早く着き巻いた時間は桃によって相殺され、ロッヂ長兵衛の脇の登山口から、予定通りの9時頃からスタート。
【START】上日川峠登山口 8:58
舗装路と並んだ歩きやすい道を進む。はじめは少し日が差していたけれど、すぐに翳ってきた。空が雲に覆われるというより、木立を見上げると段々と霧が降りてくるような光景で、高所ならではの景色なのか。
9:26 福ちゃん荘
程なく福ちゃん荘へ到着。ここの分岐で唐松尾根へ進路をとる。
進むにつれて石の目立つ道となり、景色が開けるとささやかだがお花畑が現れた。
ほとんどはこのコウリンカがお花畑を作っているようだった。シカが食べないから残っているのだとか。
僅かに見られたアヤメ。ポピュラーな園芸種のある花が山中で堂々と咲く様子を見かけるのは、なんとも不思議な気持ちになる。
キバナノヤマオダマキ。こちらも特徴的だけれど、野の花のイメージらしい生き残り方だった。
少し登れば雷岩へ到着。
10:37 雷岩
天気が良ければ見晴らしが気持ち良さそう。
ケルンの上で休むヒカゲチョウを撮っている最中、「あっ、シカ!」と声がして振り向くと、注目を浴びながらも飄々と近くを歩く姿が。
山でシカと出会ったのは初めてで嬉しい。釣られて大菩薩嶺の方へ足をのばす。山頂へはすぐ着いた。
10:58 大菩薩嶺(2057m)
この山域の最高峰大菩薩嶺へ登頂。展望もなく小さなピークに「日本百名山」「山梨百名山」の標識がぽつんと建っている。
頂上までは峠から四十分位で達せられる。この連嶺の最高峰である。「嶺」という字は「とうげ」と読まれて、以前は大菩薩嶺とは大菩薩峠を指す名称であったらしいが、今はその名は最高峰に移されて、ハイカーの間では略して「れい」と呼ばれている。
『日本百名山』深田久弥 新潮文庫 p368
雷岩方面へ折り返し、主稜線を進む。
また音もなく現れたシカは獣道を登り消えていった。
シカが食べない花畑をアブの監視下で鑑賞しながら進み、休憩予定地点の賽ノ河原へ到着。
一層濃い霧に覆われ、ロープの外にはまたシカの姿が。
説話を彷彿とさせる石積みの広場の一角で荷を下ろし、昼食休憩とする。
1膳分の米に鮭の中骨水煮缶を1つあけ、ティースプーン2杯分の顆粒梅昆布茶と乾燥葱を加え温める。鮭の出汁がかなり濃くて驚いた。
「ぴゃっ」と声のした方へ振り向くと、すぐ近くにこちらをじっと見るシカが。興味を持っているのかな。シカをこれ程近くで見られるとは思っても見なかったし、とても可愛らしかった。
霧の濃かったこともあってか、アブもほとんど寄ってくることなく休憩できた賽ノ河原を発ち、大菩薩峠まではすぐだった。
12:34 大菩薩峠(1897m)
好天ならば大展望が楽しめるのだろうけれど、天候が崩れないでいるだけでありがたい。
近くの山小屋「介山荘」でピンバッジを買い、東側の細い脇道から奥多摩方面へ下山する。
細くもよく整備されている様子で歩きやすい。先程までの賑わいはこの道に入るだけで全く遠のき、道中誰一人とも出会うことはなかった。
半透明で不思議なきのこ。裏側が針状になっていて、ニカワハリタケというらしい。
雲の中に入ったのか、一層濃い霧に包まれる。幻想的な光景に思わず息を呑む。この景色の中をひとり歩いていることが普段の現実感から大分離れており、静かに胸が高鳴った。
コマドリの囀り。姿は見ることができなかったけれど、初めて耳にした。
13:56 フルコンバ
コースタイム35分のところ、倍の時間をかけてフルコンバへ到着。
素晴らしい時間を過ごせたのは確かだが、4時間半以上かかる下山ルート、タイムリミットも気にかかる。
ここから左手へ入り、丹波大菩薩道で丹波山村方面へ下る。
丹波大菩薩道への入口に咲いていたキバナノヤマオダマキ。
この先もしばらく霧の中を進む。
甘い匂いを漂わせていたリョウブの花。
14:54 ノーメダワ
ノーメダワに到着。手前あたりで霧はなくなり、雲の中を抜けた模様。
この時点で15時、コースタイムで3時間残る距離、巻いていかなければ。
斜面に取り付けられた細い道を渡り、いくつか沢を跨いでいく。
ミヤマママコナというらしい。変わったツートンの花。
15:35 追分
10分程巻いて追分着。この道は約1時間の間に分岐や開けた場所が現れ、ペースがとりやすい。
16時頃、空が暗くなり始めてからの沢沿いの道、渡渉する箇所もあり。道迷いが怖い状況であったけれど、ピンクテープを辿ると無事沢から離れて、また斜面のトラバースとなった。
16:34 藤タワ
藤タワ着。中央の道から高尾天平へ少し登り返す。
これまでになく広く開けた道で、高尾天平まではすぐ。
広場のような高尾天平から30分で300mを下る。
見たときは猛毒のベニテングタケかと思っていたけれど、調べるとどうやら美味しいタマゴタケらしい。
17:38 高尾天平登山口
山中は大分暗くなってしまったけれど、山を出ればまだ明るい。登りで使うには狭く判りにくそうな登山口。
17:56 丹波役場前BS【GOAL】
丹波山村の集落を抜け、役場前バス停へ到着。18:20のバスで奥多摩駅へ。
9時間17kmの道のり、大菩薩の見所の大展望は得られなかったけれど、ガスに包まれた亜高山帯の幻想的な景色が美しく、初の2000m級、百名山の一座への山行を静かに愉しむことができ、またとても印象深いものとなった。
経験を積み綿密に計画し、更に山深い山域へ旅に出たい。
《山行を振り返って》
・右脚の怪我の状態
高尾天平からの下りの途中から、6月御前山からの下りで痛めてしまった右脚がまた痛み出し、舗装路でもびっこを引いて進むような状態になってしまった。
全体としては緩やかなものの、全長17kmの負荷が最後の少し傾斜のある下りで限界を超えてしまったのか。2ヶ月経って、テーピングを施して臨んだけれど、まだまだ慎重にいかなければならないようだ。
再発した痛みは1日経てば収まり、日常生活には影響はない。なるべく下りの標高差や行動時間が短いコースを選び、徐々に戻していきたい。