シン・チラシノウラ
二次創作イベントに初めてサークル参加してから、早いもので一週間が経った。即売会イベントへのサークル参加自体は昨年既にデビューを果たしていたのだけれども、そちらは一次創作・しかもネット上で交流のあるサークルさんもほぼいないという完全なるチャレンジャーだったので逆に変に気負うことなく終始気楽にまったり参加することができていた。
が、今回は全く雰囲気が違って開始から撤収まで本当に怒涛の数時間だった。これについては初参加にも関わらず色々やりたいことを詰めすぎ作業が膨大になったことも大きいのだけど、それを差し引いてもネットで交流のある・もしくはそこまでいかずともこちらを認知してくれている人がスペースまで来るってこんなにヤバいことなのか……と今更ながら実感した。
二次創作ではこれまでオンラインのイベントにサークル参加した経験があるものの、あれともまた違う感じ。オンイベではスペースに立ち寄ってくれた人とあまり喋ったりしたこともなくて(なんでだろうな、Twitterでリプしたことあるような相手でもなんとなくきっかけが掴めなくて話しかけられないんだよな……)ボードの書き込みが主なコミュニケーション手段だったし。
それが、リアルのスペースでは強制会話イベントが発生するの、凄くない?と、今思い返してもそう思うんですよ……。「新刊ください」「〜円です」だけの一往復でも、実際に電車乗って会場まで来てその一言を発する労力、凄くない?と。しかも相手は肩からかけたタオルで必死に汗を拭う怪しいおばちゃんなのである……!(最高気温16度はもはや春なんだよ……)
もちろんうちだけでなく他のサークルさんやジャンルがお目当てなのが前提の話なんだけど、それでもその人の当日の目的の幾許かがうちの作ったものにリソース割り当てられてたんだなーと思うとなんだか不思議な感じ。
イベント後どっと疲れが出て、ホテル戻ってからはベッドに横になったきりしばらく一歩も動けなかったんだけど(体力おばけなので普段はハードめな旅程でもあまりこういうことはない)、人と会うってものすごくエネルギー使うことなんだな……。しばらく忘れてた感覚かもしれない。
エネルギーと引き換えにみんなの新刊やおいしいものや嬉しい言葉やイカすグッズなどを受け取って、「こ、こんなにパワーとパワーがぶつかり合うこと、ある??」と驚いてしまった。サークルとして遠征するからには来た人をもてなす心意気を持って臨んだつもりだったけれども、逆にもてなされて帰ってきたくらいの心境。
当日は本当に色々な人に会うことが出来たのだけど、中でも「二十年来の知人で互いの人となりや作品は知っているけど一度も顔を合わせたことはない」人とついに対面を果たすエピソードがやはりヤバかったなーと思う。インターネットじゃないと起こり得ないもんこんなこと……。
そこまで長い付き合いであるにもかかわらずこれまで何故会う機会がなかったかといえば、私が海を越えた北の地に暮らしており、同じジャンルで濃い交流があった当時は金銭的にも家庭の事情的にも内地まで出かけていくことが難しかったからだ。
彼女と知り合ったのは私のオタク人生の中で二つめのジャンルでのこと。一つめの漫画ジャンルにいた頃は私は主に絵を描いていて、小説メインの活動に移ったきっかけが次に移動したそのゲームジャンルだった。なので恐らく彼女は私の書くものを一番長く見てきた人ということになる。
幸いなことに彼女とは次のネトゲジャンルでも仲良くさせてもらっていて、以来私が書くことをふっつりやめてしまった後もTwitterを通じて互いの現況をゆるーく知っているような間柄であった。
十年くらいの中断を経て私が今のジャンルで二次創作活動に戻ってきた時、真っ先に反応してくれたのも彼女だった。おかげで復帰作が仮に他の誰の目に留まらなくても公開する意味は生まれていたと思うし、その時もらったリプライはスクショしていて今でも見返すことがある。
現ジャンルであるところの某コンシューマーゲームをたまたま彼女がプレイ済みだったのもまた僥倖と言うしかない。もちろん色々なケースがあるだろうけど、基本的に二次創作の原動力となるのは原作への強い気持ちだと思う。それだけに原作知識のない状態でファンの創作を味わうのはちょっと申し訳ない気持ちになったりもするからだ。
そういう事情も含めて、奇跡みたいなタイミングだったのだなあと思う。
別れ際、気がつけば私は彼女に「これからも書き続けてください」と声をかけていた。ほんとにポロッと出た感じの一言だった。まごう事なき本音だったのだと思う。
彼女は私が書くことから離れていた間もずっと作品を作り続けていた。私はそんな彼女を尊敬しているし、なにより彼女の書くものは昔と変わらず格好いいのだ。どのジャンルで生まれた作品も、上手く言えないがいつも背筋がピシッとしている。
彼女が書くことを続けていて、私が書くことを再開したからこそ、知り合ってから二十年後の今になって初めて対面の機会ができたのだなあと思うと、それだけで戻ってきて良かったなと思えるのだ。
多分ここまでは見ていないだろうから安心して書いている。このためのチラシの裏だ。見られている前提ならこんな恥ずかしい事平気で書けるわけがない。
何が回り回って影響するか分からないものだなーとつくづく思って、そういえば当日付けていたアイシャドウの色名が「バタフライエフェクト」だったなと、なんだか可笑しくなってしまった。
旧いご縁も新たなご縁も大事にしたいなと思ったので、忘れないようここにちゃんと書いておいてたまに見返しに来たい。
自分はわりと放っておいても勝手に何か作ってるタイプだとは思うけど、それはそれとして背中を見てくれている人は案外いるのだなあと嬉しくなったし、そういう気持ちは忘れたくないなと思ったのだ。