さよなら、ロックスター

チバユウスケがこの世を去っていたことが公に発表されてしまった。
チバユウスケといえば「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」「ROSSO」「The Birthday」にて活躍してきたヴォーカリスト。二十代の頃ミッシェルに出会った私にとっては、やはり彼はミッシェルのチバだ。
今までの自分の人生の中で最も周囲を取り巻く環境が激変した二十代。色々なバンドの歌に寄り添われ勇気づけられてきたが、ミッシェルの音楽はまるで戦友だった。不慣れな環境に弱音を吐きそうになる自分を叱咤し、肩を並べて共に戦ってくれるような音楽だった。
実は解散後のチバのキャリアに私はほとんど触れていない。がむしゃらだった私の生活もだんだんと穏やかさを取り戻し、共にある音楽も少しずつ変わっていったからだ。私にとっていつしかチバの歌声はたまに懐かしく振り返るものになっていた。ちょうど良い思い出と共に別れた昔の男のような存在になった。
チバががんと闘病する旨が知らされた際も大変なショックを受けたが、彼はたいそう強い男だと思っていたので絶対に戻ってくると思っていたし、この世からいなくなるイメージなんて微塵も持っていなかった。
だけど現実は非情だった。
彼の死の知らせを目にした時にはとにかく「嘘だ」の二文字しか浮かばなかった。午前中に訃報を知ってからというもの、丸一日何も手につかなくなってしまった。チバと交流のあったアーティストたち、音楽業界の人たち、そしてファン。みんなが口々に語るチバとの思い出を見るうちにやっぱり現実なのだと思い知らされ、後から後から悲しくなってしまった。
自分にとってチバはもはや遠いところにいる存在とばかり思っていたけれど、心の深いところで今も瑞々しい思い出として根付いていたのだなあと気付かされた。それもそうだ、つらい時それでも前に進ませてくれた音楽を忘れるはずがない。あの頃聞いていた歌たちはどれも特別で、きっとこれからどのバンドの誰がいなくなっても自分は泣いてしまうだろう。これから別れの可能性が高くなっていくばかりなのだと思うと悲しい。
それにしたって早すぎる、チバ……。


みんなが語る思い出の全てがいちいちかっこよくて、チバらしいなあと嬉しくなった。周囲にはファンがいないので、ネット上に色んな人が抱えた思い出を分かち合える場があるのがありがたかった。
ミュージシャンの訃報を聞くたびに昔フレディ・マーキュリーが亡くなった際一人で泣いていた母のことを思い出す。もしもタイムマシンがあったなら、あの日の母と悲しみを分かち合うことができるのになと思う。当時の私は子供すぎてそれができなかった。
音楽は生活の色々な場面の中にあるものだから、ロックスターの喪失は本当に重大でつらい。
今はせめて、チバがあの世でアベや偉大なロックスターたちと楽しくプレイしてたらいいなと祈るばかりだ。
今まで死後の世界なんて信じていなかったけれど、いつか豪華メンバーのフェスが見られるのなら、どうかあの世があってほしいなと、今はそう思う。

あ、あと!
ウエノとクハラは絶対に長生きしてくれ!
本当に頼むよ……。

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