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逆噴射小説大賞2021ライナーノーツ②参加作品覚え書き

よくきたな。おれは逆噴射聡一郎ではなく文鳥的なカーカーポーてきな白い鳥だ。
大賞の応募締め切りから既に一か月たったがやっと時間によゆうが出来たのでおれの撃った三発の弾丸についてメモを残しておこうと思う。来年の自分のためにも。
(白い鳥類はだいぶ無理して逆噴射先生の文体をエミュレートしているので以下普段の口調に戻ります)


一発目「レディオ・タンデム・モーター・スペクター」

おっぱい。おっぱいです。(完)


だけでは流石に酷いのでもう少し詳しく書いていくと、今回三発それぞれ「もしもコミカライズされるとしたらどの雑誌に掲載されるか」という想定のもとに錬成している。何故ならば自分はどちらかというと小説よりも漫画をたらふく食って育ってきているので、特に作劇に関してのメンターはありとあらゆるジャンルの漫画たちだと思っているから……。
この作品は「少年漫画誌のちょっとエッチ担当作品、三大誌の中ではマガジンのアトモスフィア」というイメージのもと製作している。ジャンプ、マガジン、サンデーの中で一番マガジンがパルプぽいと思っているからだ。あくまで自分が持つガバガバのイメージの話。
初参加の一発目、正真正銘の第一作ということで、おっぱい・バイク・ロックミュージック・ゾンビと、自分がパルプ小説と聞いてまず思い浮かんだ要素を手当たり次第に掴んで放り入れた。映画ならポップコーン片手にガハハと笑って気楽に楽しめるやつだ。後から考えるともしかしなくてもこれ、ブーブスバンドの影響大だな!?
バイクに2ケツしながら逃走・そのうちイケてるベイブがシートに立ち上がって怪異と対決という絵面、後日読んだ漫画でそっくり似た感じのシーンが出てきて大変肝を冷やしたのは良い思い出。一応こちらのほうが世に出たのが早かったから良かったものの、自分は他人と被った時点で凡庸なネタと判断し躊躇なく捨ててしまうタイプなのであっちが先だったら多分これも書き直しだった。(マジルミエ、お仕事もののツボを押さえていて非常に信頼感あるので実際おすすめ漫画)
タイトルはTMGE、カワサキZ2はギターウルフのオマージュ。
もしも続きを書くなら色々ロックネタを散りばめたいところだが著作権の扱いとかどうなんだろう、歌詞そのままがアウトなのは知っているけどタイトルとか……。
ピックアップ等でとにかくおっぱいに言及があった話なのでなんだか申し訳ないのだけど、自分はキュッと程よく筋肉がついた脹脛を舐め回したい根っからの脚派である。

ミニ設定
名曲に彩られたディストーショナル・ガール・ミーツ・おっさんガンアクション。
主人公の泰親(ヤスチカ)はFのコードが押さえられずギタリストの夢絶たれた三十代のおっさん。社畜生活により自分がロックを好きなことすら忘れかけていた。リリィと出会うまでは。
二人は本当の親子。とある事故により十六年後の未来が並行世界として主人公の時代と接続した。バイクを通じ二つの世界はつながりバイクがそばにある時しか二人は互いを認識できない。
生まれた時の名前候補に「レイラ、ニニー、サリー、やよい」等があったらしいとリリィから聞かされたことで、ヤスチカは彼女が自分の実の娘であることを確信する。それらは彼が繰り返し聞いてきた楽曲の数々に登場するベイブたちの名だったからだ。
なおヤスチカは無駄に雅な雰囲気の自分の名前にコンプレックスを抱いている。


二発目「当世水境端姫噺」

タイトルにルビが振れないのでこれなんて読むんだろうと疑問に思った人も多かったのではないかと思う、読みは「とうせいみなざかいのはしひめばなし」。水境と書いてみずざかい・みつさかいと読む地名が実際にあるようなので被らないようみなざかいとしたが結果的に女子が主人公の話らしく柔らかい音になって良かったのではないかな。
これについては「ハルタ、もしくは昔のウイングスあたりに載ってそうな人情系現代ファンタジー」というイメージで作った。昔のガンガン系ぽさもあるかも。なんでいちいち昔のをつけるかといえば今のその辺の雰囲気知らないから……。ファンタジー系だと今は乙嫁やダン飯の掲載されてるハルタ(から派生した青騎士含む)が強い印象。まほよめとかランドリとか、作品単体で戦えるとこはあれど雑誌単位で強いのはあそこになるんじゃないかなー。
二発目は雰囲気を変えて地に足がついた感じのものに。
境界、地縁、治水等自分の好きなもの得意なものを詰めたので続きが読みたいという反応が多かったのが実はかなり嬉しかった。自分にとって無理なく作り続けられるタイプの話なのでこの続きは前向きに取り組んでみたいと思っている。というか既にプロットは作り始めている。とりあえず頭と終わりは決まったので来年あたりに二次創作と並行して気長にやれたらと思う。だいたい文庫一冊分くらいの長編を想定。

ミニ設定
少女とおっさんの絶対に恋愛に発展しないという保証つきバディもの。
ネタバレするともう一人の姫は四十代のおっさん。とはいえおっさんの里では端姫という役職はないので別に自ら姫を名乗る変態ではない。
神域である村から出た端姫たちはそのまま地域安定の要石として派遣された土地に骨を埋める事を定められており、二度と故郷には戻れぬ身。しかし全国の治水の要所に散らばった端姫同士は現代らしい手段で繋がっていたりもする。
人の形をした要石を管理する役割は国土交通省に置かれた専門の部署、境界管理課が担当。水脈の村とおっさんの村の担当地域がバッティングしないよう調整していたのもここの部署だが今回に限ってダブルブッキングとなったのは果たして何故か。
水郷と真波。二つの村はとある理由から互いに不干渉の姿勢を貫いており、特に水脈の故郷の水郷村の人間にはもう一つの村の存在すら知らされていない。
水脈の派遣先のモデル地域は北海道某所。


三発目「それゆえの獏」

漫画誌に例えると「アフタヌーン四季賞応募作にありそうな感じのシュールレアリズム不条理系夢物語」。アフタヌーンは一番長い間購読してた雑誌でありおそらく自分の好むものにも割と影響を与えているのではないかと思う。時期的にはむげにん、ヨコ出し、ディスコミ、BLAME!、なるたるあたりが連載されてた90年代からゼロ年代。個人的にこの辺アフタの黄金期だと思う。(懐古厨であることは認める)
今でも四季賞受賞作がTwitterのTLに流れてくるといいなーと感じるものが多々あるので多分自分の好みもあんまり変わってないと思われる。
二発目がいくらでも緻密に作れるタイプの話だったのと対照的にこっちは雰囲気勝負の五千字程度の短編をイメージして書いた。
おっさんを出さないと死ぬ病にかかっている。

ミニ設定
実は一人称を利用した叙述トリックを考えていた。とはいえミステリまで本格的なものではない。
主人公と親友、その妹はずっと一緒に育ってきた幼馴染。
おっさんの悩みは最近娘の夢の中に自分の知らない少年が出てくること。
雰囲気一発勝負なのでそもそも掘り下げる設定があまりなかった。


今年の応募作については以上で終わり。
だいたい漫画の話をしていた気がするがそういうこともある。自分が小説を書くとき何を最重要視しているかといえばひとえに読後面白かったと満足できるかの一点であり、それを判断するための基準として今まで読んできた漫画たちが血肉となっていると感じる場面が多い。小説も漫画も物語を描くという点で根っこは同じであり、多分二者は表現方法こそ違えどそうかけ離れたものでもないのかなという気はしている。

逆噴射小説大賞という個性的なレギュレーション・雰囲気を持つコンテストに参加したおかげで、書くことについて色々と知見を得たり思いがけない嬉しい言葉をもらったりしたので本当に良い経験になったと思う。そもそも自分の話作りのルーツが一次創作にあったことを数十年ぶりに思い出し、なんだか感極まってしまった。

来年はもっと破壊力のある弾を練れるよう力をつけ、また強者どもが集うMEXICOの荒野に立ちたいと思う。


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