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補助金の代理申請と、行政書士のはなし。
補助金申請は初デート前のラブレターのようなもの。
気になる相手(審査員)に、自分の魅力を知ってもらい、次のステップ(採択)へ進むための勝負の一手だ。適当に書けば読まれずに終わるし、熱意が足りなければ「他の人と付き合います」と、あっさり振られる。
大事なのは、「相手が何を求めているのかを理解すること」。好きな映画も知らずに「俺って最高だから!」と押し付けるのは逆効果。補助金も同じだ。国や自治体が何のために支援するのかを考えず、「お金が欲しいです!」と書いても、結果はお察しだろう。
だからこそ、申請書には計画性と誠意が必要だ。デートの誘い文句と同じで、「ただ会いたい」じゃなく「一緒に行きたい理由」が伝わるかどうかが分かれ道。補助金の審査員を**「なるほど、これは応援したい」と本気にさせられるか、それとも「まあ…他を見てみましょう」とスルーされるか。**
大切なのは、「期待させつつ、現実味を持たせること」。理想ばかり語るのもダメ、具体性がなさすぎるのもダメ。相手が「この人なら信じられる」と思ったとき、ようやく次のステージに進めるのだ。
補助金申請、それは恋の始まりと同じ。書類を送る前に、自分の「ラブレター」は相手の心をつかめる仕上がりになっているか、もう一度見直してみよう。
引用:民明書房刊「よくわかる補助金申請大全」
久しぶりの更新でございます。ご無沙汰をいたしておりました。
どうもキタゴウです。
はじめに
令和6年の補正予算が国会で可決されてから、各種補助金の情報がにわかに飛び交うようになりました。そして突然の事業再構築補助金・第13回募集スタート。まさに激動の2025年幕開け、といったところでしょうか。
補助金が盛り上がれば、当然それにまつわる情報量も増えてきます。同時に、怪しげな都市伝説や怪文書、さらには「ニセ事務局職員」「謎の元審査員」「元審査員の知り合い(?)」などが、雨後の筍のごとく現れるのもお決まりのパターンです。
とはいえ、補助金の話題は**「早ければいい」というものでもありません。
本当に知りたいなら、経産省など各省庁のリリースを待っても十分間に合います。実際、公募要領の公開数か月前にはリーフレットも発表されるため、焦る必要はないんですがね。
しかし、補助金政策は一貫性に欠けることが多いため、公式リリースを待つ余裕もなく「今すぐ確かな情報が欲しい!」という声が上がるのも無理はありません。そして、気がつけば「どうせこんな裏事情があるんだろう」と邪推モードに突入し、気づけばSNSの補助金陰謀論にハマってしまうなんてこともあってみてらんなくなります。
冷静に考えれば、「待てば分かることに振り回されるのは時間のムダ。」
ってことで、補助金は、焦らず、惑わされず、確実に正しい情報を手に入れて活用していきたいですね。
Jグランツに代理申請機能もリリースされる。
1月31日にJグランツ(補助金申請システム)に代理申請機能が実装されることになっています。(現在1月30日であるため予定としています)
これは行政書士や社会保険労務士など各士業が代理権に基づいて事業者の意思を受けて、申請の利便性向上を図るために実装される機能です。
あくまでこれは「申請代理」であって、「申請代行」ではありません。代理と代行を混同し、なんか知りませんが妙に誤解と論点が大幅にずれている投稿を各種SNSで散見されているので、ちょっとその話をします。
1. 「代行」と「代理」の違い
代行(Execution on behalf of):本来は事業者自身が行うべき申請手続きを、第三者が請け負って行うこと。
代理(Representation):事業者の意思に基づき、正式に代理人として申請を行うこと。
補助金制度において問題視されるのは「代行」だけをサービスとして提供するビジネスモデルであり、これは不適切行為とされる可能性が高いです。実際に、2020年ごろからの・・まぁ、こういっちゃなんなんですが、事業再構築補助金をはじめとした「補助金バブル」で、補助金が多く行われた一方、補助金依存の企業体制が生まれ、「補助金を通すため」にコンサルに「採択されやすい申請書」を依頼してしまう傾向がありました。
その結果、実体のない補助事業が行われ、不適切な「申請書作成から申請まで」の、いわゆる「代行」サービスが跋扈してしまったわけですね。
一方、「代理」は、適切な手続きを経ていればJグランツのような仕組みで認められる余地があります。これは、申請書作成は認定支援機関の助言を受け、行政書士が代理権に基づいて事業者の意思を反映し、申請手続きを進められるという点で大きな意味を持ちます。
行政書士は、法的に認められた代理権を有するため、単なる「作業代行」ではなく、事業者に代わって正式に申請手続きを行うことが可能です。 これは、行政書士法 第1条の2 において、行政書士が「官公署に提出する書類」の作成および「その提出手続の代理」を業務として認められていることに基づいています。
行政書士法 第1条の2
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(電磁的記録を含む。)その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。
2. 前項の書類を官公署に提出する手続について代理することができる。
この法的根拠により、行政書士が事業者の意思を反映しながら、補助金申請の手続きを代理することが可能となるわけです。
・・とまぁ、こんなことを書くとどっかの界隈から批判も来そうですが、代行と代理をしっかり区別する意味でも、まぁ、お目こぼしください。
2. 経産省の意図:補助金事業の本来の目的
事業計画策定の支援はOK(事業者が主体的に取り組む前提)。
申請代行のみを主業務とするのはNG(事業者の主体性がない)。
事業者が自ら計画を策定し、認定支援機関がその策定をサポートするのは認められる。
ちょっと補足をしてまとめますと、上記のような形になります。
Jグランツに代理申請機能が付いたことで、「デジタル庁と、経産省は申請代行を認めているのでは?」という誤解が生じているようですが、Jグランツの意図としては、単に「申請の利便性向上」を図るものであり、「第三者による申請代行ビジネスを認める」わけではないと考えるのが妥当です。
というわけで、ここに矛盾はなく、Jグランツの代理申請機能は、あくまで適正な「代理」を制度化するためのものであり、申請代行ビジネスを公認する意図はないと考えるのが妥当です。
補助金事業の本来の目的は、事業者が主体的に事業計画を策定し、それを実行することで経済を活性化させることにあります。そのため、「事業計画策定の支援」は認められるが、「申請代行のみを行うビジネスモデル」は不適切とされる可能性が高いわけです。
Jグランツの導入により、手続きの利便性は向上しましたが、だからといって補助金制度の根本的な考え方が変わったわけではありません。経産省の意図としては、あくまで「事業者自身が計画を考え、申請の意思決定を行う」ことが前提であり、単なる代行業務が拡大することは本意ではないでしょう。
つまり、「代理」は正当な手続きを踏めば認められるが、「代行ビジネス」は補助金制度の趣旨と相容れない、という点を押さえておくことが重要ですね。
3.行政書士は「代理」として無暗に「使われない」ことが肝要。
と、いうわけで、行政書士(だけではないかもしれません。診断士なども対象になるかもしれません)は、これから補助金の申請代理について、より高いリテラシーを持つこと、高いコンプラ意識を持つことが重要になります。
その心は、ずばり「不正申請」の温床になってしまうこともあり得るからです。
上記も話たとおり、補助金バブルの残り香にすがる悪徳なコンサル会社も少なくなく、まだまだ補助金申請代行を不正だと経産省が呼びかけているにも関わらず堂々と行う連中もいます。
補助金申請の代理は、単なる「作業」ではなく、事業者の実態を正しく反映し、適正な手続きを進める責任ある業務です。しかし、補助金バブルの余波にすがる悪徳コンサルが未だに存在し、「書類はこちらで全部用意するので、行政書士の名前だけ貸してください」といった依頼が舞い込む可能性があります。
これは非常に危険です。事業者の意思も確認せず……というより、事業者と面談すらせずに申請を引き受けることは、不正申請のリスクを高めるだけでなく、行政書士自身の信用にも関わる問題になりかねません。
これを安易に受けてしまうと、行政書士自身が不正申請の共犯と見なされるリスクがあり、最悪の場合、業務停止や廃業勧告の可能性すらあります。経産省もたびたび「補助金の適正な運用」を呼びかけており、今後も不正申請に対する取り締まりが強化されることは間違いありません。
「代理」は「代行」ではない。
行政書士として、「ただの申請代行屋」に成り下がるのではなく、事業者の真の支援者として、適正な申請をサポートする姿勢が求められるのです。
したがって、補助金代理申請に携わる行政書士は、
✅ 事業者と直接面談を行い、意思を確認すること
✅ 事業計画の実態をしっかり把握すること
✅ 怪しい案件や不明確な依頼は断る勇気を持つこと
✅ 補助金制度の趣旨を理解し、コンプライアンスを徹底すること
これらを意識しながら、「正しく使われる」ではなく、「正しく活用される」代理人であることが、これからの行政書士に求められる重要な役割となるでしょう。