最近の体育教師は生徒指導をしない? ~これからの生徒指導~
体育科の先生に生徒指導を押し付けてきたこれまでの現場もどうかと思うのですが、それはさておき。
「体育教師さえ生徒指導を避けるようになった」近年の学校教育の経緯について考えを述べます。
1.どうして「鬼体育教師」が生まれるのか
「鬼体育教師」が生まれるのは、戦前の日本の「気質」がスポーツの世界に長く息づいているからです。
戦前の日本の学校制度においては、中等教育(中学・高校)の教員養成を目的とした学校として、高校師範学校がありました。
戦前の日本ですから、それはもうバリバリの昔気質の教育でした。
ちょっと昔のマンガなんかでは、よく立たせたり殴ったりして「指導」してましたよね。高等師範学校は、そうした気質があったのです。
そうした気質を受け継いでいるのが、スポーツの世界です。
スポーツした人は身に染みていると思いますが、スポーツの世界では監督や上級生は「神」です。
ひとつ上の先輩には、理不尽にもボコボコに指導されますが、彼らは言葉を交わすことができるのでまだ「人間」です。ところがもっと上の先輩となると、直接言葉を交わすことも許されない「殿上人」あるいは「神」となります。
……ちょっと話が逸れました。
とにかく、それだけ上下関係の厳しい、リベラルとは程遠い世界がスポーツ界には現存するのです。
体育教師の多くは、そうしたスポーツの世界で小学校から大学卒業までを過ごし、そのまま学校教員となります。
必然的に、体育教師はスポーツ界に残る高等師範学校の「気質」を受け継ぐこととなります。「鬼体育教師」の誕生です。
2.消えゆく高等師範学校の「気質」
ところが、最近はそうした指導は体罰であるとして厳しく取り締まられています。生徒の気持ち、事情に寄り添った指導をするようになってきています。
問題は、これが行きすぎて、保護者の意向に添わない指導に対して訴えを起こす「モンスターペアレント」が問題となっていることですが……。
こうした流れは、学校はもちろんスポーツ界でも生じていて、その結果、高等師範学校の「気質」が薄れてきています。
スポーツ界から「神」が消え、教育界からは厳しい指導をする「鬼体育教師」がいなくなってきているわけです。
これには一長一短あります。
教師が生徒の気持ちや事情に寄り添った対応をすることは良い事です。
問題は、生徒指導をする教師がいなくなることです。
3.生徒指導は難しい
近年、生徒指導はどんどん難しくなってきいます。
我が子可愛さに、子どもをあらゆる苦労から遠ざけたいと思う保護者さんがいます。
その結果、子ども同士の喧嘩に親が介入したり、子どもの怠業を咎める教師の指導を非難したりして、子どもの成長を妨げる結果につながっています。
もちろん、いつも教師が100%正しいわけではありません。
けれども、正当な指導を妨げる保護者が増えてきているのも確かです。生徒指導はどんどん困難になってきています。
その結果、教員個人は生徒指導に二の足を踏むようになりますし、また学校組織としても積極的な生徒指導を避けるようになります。
これまで、生徒指導の最前線に立ってたのは、前述の高等師範学校の「気質」を受け継いだ体育教師でした。
実際、体育科の先生方は「生徒指導は体育科の仕事だから」と言っていました。そうした意識を持っていたのです。
現場の教員にとって体育科の先生方は頼もしい存在です。話をするのが難しいきかんぼうの生徒にも、常に最前線で体当たりで関わってくれます。
ところが若い世代では、そうした体育教師が減ってきているようなのです。
4.最近の体育教師は生徒指導をしない
最近、ベテランの体育の先生とお話をしました。
その先生が言うには、最近の若い体育教師は、
1.生徒指導をしない。生徒が校則違反をしていても見過ごす。
2.運動場の管理をしない。体育館の管理をしない。
とのことです。
ここで私が感じたのは、先述の高等師範学校の「気質」を持っていないということです。さらには、最近のリベラルな風潮に染まった「いまどき」の体育教師が増えてきたように思います。
校則違反や怠業は見逃して、面倒な生徒指導は避ける。生徒の為にはならないが、知ったこっちゃない。
運動場や体育館の管理など、「若手の体育教員が進んで引き受けていた雑務」もしない。だって教員は皆平等なんだから。
※実際、組織としては、教頭や主幹教諭のような役職のない教員はみな平等です。
そう考える現代的な人間が、高倍率の教採競争を勝ち抜いて正式に採用されたというのが、私には驚きでした。
もちろん、生徒指導は全教員が一丸となって行うものです。矢面に立つのは生徒課の教員であっても、全教員が同じことを言って、同じように指導するする必要があります。また、授業者や部活顧問は、直接その場で生徒を指導する必要があります。
でも、そうした当たり前の指導が難しくなって、体育科の教員までも膝を折るようになった。それが驚きで、いっとう恐ろしく感じられました。
そんな現代教育の向かう末とはいったい……。
5.これからの生徒指導
ひとつ言えるのは、これからは「生徒に寄り添った生徒指導」が求められるということです。
こうした時代の変化に合わせて、私自身も成長していかねばと思う次第です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?