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年初来高値を更新した日本株式市場の行方、「賃上げ」が継続してデフレに戻らなければ日経平均3万円も
国内株式が年初来高値を更新する堅調な値動きになっている。日経平均株価は4月18日に2万8658円となり、年初来高値を更新。昨年末からの上昇率は9.8%になった。これは、米国のNASDAQ総合指数の16.1%高やドイツのDAX指数の14.1%高には及ばないものの、中国の上海総合指数の9.8%高に匹敵し、米国S&P500の8.2%高を凌駕している。全世界株式(MSCI ACWI)が19.8%安となった2022年の市場から、2023年は一転して戻り歩調になっている。順調に下値を切り上げてきた日本の株価の今後の見通しについて、4月19日にメディア向けに「グローバル経済・市場の見通しと投資戦略」と題して勉強会を開催した日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジストの神山直樹氏は、「想定されるリスクが低下してきている。国内での賃金上昇が2024年も継続すれば、日本株は2024年に向けて日経平均で2万9500円を超えるような思いの外に強い相場が期待できるのではないか」と見通していた。
神山氏は、日興アセットマネジメントが四半期ごとにまとめている世界経済見通し「グローバル・フォーサイト」の内容に基づいて、当面の市況の見通しについて語った。株式市場が前年末比でプラス圏で推移している背景について、(1)米国の景気後退はない、(2)米国は2023年10月-12月期に利下げに転じるという見方が支えていると解説した。2023年3月には、米国でシリコンバレー銀行など中堅銀行が相次いで破たんし、欧州のクレディ・スイスが同業のUBSに買収されるという金融システム不安が台頭する場面もあったが、「その後、不安の連鎖がみられない」ため、市場の警戒感は徐々に和らいできている。「米FRBが2023年を通して政策金利を高い水準で据え置くような姿勢を続けたり、ロシアのウクライナ侵攻に匹敵するような地政学的なリスクが勃発しなければ、米国経済はマイナス成長に陥ることなく、それが日本経済にもプラスの影響をもたらして株価の堅調につながっていくだろう」(神山氏)とした。
米FRBは現在、過度なインフレを抑制する必要があるとして利上げの継続姿勢を崩していない。神山氏は、「インフレ要因といえる米国の消費(小売売上高)は、トランプ大統領時代の財政支出によってトレンドラインを越えて想定外に加熱し、その好調過ぎる消費が雇用のひっ迫、そして、賃金上昇につながり、高い賃金を背景とした旺盛な個人消費が小売売上高を引き上げるという循環が働いていた。ようやく消費も雇用もピークを越えたような動きになっている。特に、賃金上昇率が前年同月比で5.5%を超えていたものが、現在は4%そこそこに低下し、2~3カ月の間に3.0%~3.5%の水準に落ちてくる見通しになっている。米国はインフレ率を目標とする年2.0%程度の水準に落とし、中立的な政策金利である2.5%水準、そして、3.0%~3.5%程度の賃金上昇率の水準をめざしており、賃金上昇率が前年同月比3%台に落ち着いてくれば、『インフレが再燃しないか?』と経済指標に目を凝らしているFRBの利上げ堅持の理由がなくなる。インフレ再燃の懸念がなくなれば、年5%台に引き上げている政策金利を中立金利とされる2.5%に向けて引き下げるのは意外と早いと考えられる」と語っていた。米国政策金利の見通しは、2023年9月末に5.25%だが、2024年3月末には4.25%に低下するとしている。
このような雇用情勢や金利見通しのもとで、米国の経済成長率は2022年の2.1%成長から2023年は1.2%成長に減速すると見通している。そして、米国の経済成長が「横ばい」の水準をキープできれば、「リーマンショック前の水準にまで回復している日本の実質輸出(数量効果)の水準が維持され、リーマンショック後に長らく輸出の低迷で『余剰』を抱えてきた輸出が、『不足』の状態をキープできることになり、インフレ状態の定着が期待される。輸出産業では設備投資の意欲も高まってこよう。一方、国内需要は、コロナ禍での行動制限が徐々に解除され、内需が回復する見通しだ。国内旅行がコロナ前の8割程度に回復してきたといわれるが、今後はビジネス出張も含めて人々の往来が活発化してくるだろう。外需が横ばいの中で、内需が拡大するという流れが確認できれば、国内の景気回復期待が一段と強まって株高につながる」(神山氏)と見通す。
そして、日本の株高の持続力については、インフレの状態が継続するかどうか、すなわち、賃金上昇が来年以降も継続するかということにかかっているとみている。神山氏は、「国内の人手不足が賃金の引き上げ要因になりうる」という立場だ。そして、「賃金上昇が継続することが確認され、デフレが本格的に終わる(デフレ経済には戻らない)という確信が持てれば、日経平均株価の3万円台が実現するだろう」とした。ただ、日興アセットのハウスビューでは、2024年3月末時点の国内10年債利回りの予想を0.5%としている。2024年以降も賃上げが続くと確信が持てれば、長期金利の水準はより高い水準になるところだが、3カ月前に発表された同社の見通しでは10年国債利回り0.75%だったところを0.5%に引き下げる判断をしている。また、同時点での日経平均株価の予想も2万9500円だ。長らく続いた国内経済がデフレから脱却すると判断するには、依然として慎重な見方が必要だということだろう。(グラフは、過去1年間のトータルリターンで「全世界株」や「米国株」を上回る「日本株」)
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