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関数男物語〜インターミッション05〜

 延々と二時間弱、ビール片手に流田はGoogleの魅力を語り続けた。好きなものについてとことん語りたい。その気持ちが痛いほどわかる数男は、聞き手に徹していた。そして、その流田の話の内容は、数男にとって刺激的すぎた。あっという間に時間が過ぎていく。

「正直、Googleドキュメントとか、スプレッドシートってやつは、MicrosoftのWordやExcelの下位互換的なものだと思っていたよ。」

 数男は、正直に打ち明けた。以前、スマホでもWordの文書を作成したり、Excelを操作したりすることはできないかと試したことがあるのだ。その時は、モバイル版のMicrosoftアプリを試してみた。
 しかし、思ったよりも操作や機能が不十分で、結局、使うことを諦めた。そして、その時に、アプリの候補としてGoogleドキュメントやスプレッドシートも見た気がする。
 そんな経験から、数男は、勝手に下位互換だと決めつけてしまい、手も出していなかった。かれこれ5年以上前の話だ。

「確かに、WordやExcelに慣れていると、一部の機能が使えなくて不便かもしれませんね。でも、先輩のスマホ、Androidですよね。そんで、学校や家ではWindowsを使ってますよね。」

 流田の質問に答えようとして、数男は、iPadを購入したことを伝えそびれていたことを思い出した。

「そういえば、最近、iPad miniを買っちゃったよ。」

 数男の言葉を聞いて、流田は、目を丸くする。そして、

「だったら、絶対、Googleアプリは使い勝手いいってことを実感できますよ。今、持ってます?インストールしちゃいましょう。」

 と言って、数男のiPadにアプリを何個かインストールさせた。作業をしながら、流田は続ける。

「先輩、Pages、Keynote、Numbersって使ってます?」

 と唐突に質問してくる。それぞれ、文章作成、プレゼン作成、表計算のアプリだということは知っていた。実際に、連休中に少し試してみたりもした。しかし、家庭や職場のWindowsPCとの互換性はあるものの、連携させづらいと感じていた。これが、MacユーザーでiPhoneユーザーなら別なのだろうが、数男の現状にはマッチしていなかったのだ。
 ということを流田に伝えると、流田は、ニヤリと笑みを浮かべながら、とんでもないことを言った。

「Googleアプリなら、Androidスマホ、WindowsPC、iPadのどこからアクセスしても、ほぼ同じ使い勝手ですよ。」

 数男の酔いは、一気に醒めてしまいそうだった。そして、この日から、数男は、3種類のOSを行き来するチグハグユーザーとしての道を歩んでゆくことになった。

 その道の先に、校務効率化改革地獄が待ち受けていることを数男はまだ知らない。

 初夏の穏やかな夜の中を数男は、帰路についた。

第一部 完

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