職員室デジタライゼーション〜関 数男の悲劇②〜
確かに行事の計画は、前年度のうちに立てることができる。実施直後に反省を集約し、次年度の計画に活かした方が良い。また、「あらかじめ分掌ごとに役割を割り振っておく」ために「得点集計:4年生担任」「運動会BGM:音楽主任」としておくことも合理的かもしれない。
しかし、校務分掌というものは、そんなに予定調和で決められるものではない。仮に「4年生担任」と「音楽主任」が別人物であれば、一人一役の分担となる。しかし、「4年生担任が音楽主任」であったら、一人が二つの役割をしなければならない。
校務分掌は、校長の判断で、その時点での職員が最大効率を発揮できるように決められる。それは、個々の教員の得意・不得意や学級の実態を考慮して決められる。なので、新年度、分掌が発表されたら「4年生担任・音楽主任」というケースも存在する。
当然、そのような場合は、役割分担が均等になるように配慮しつつ、適材適所で役割分担を変更しなければならない。では、「得点集計:4年生担任」と「運動会BGM:音楽主任」を「得点集計:3年生担任」と「運動会BGM:音楽主任」と変更したとしよう。今度は、その修正案を職員で共有しなければならない。しかも、この修正案は、職員会議を経て更に変更になるかもしれない。そして、最も重要な点は、この完成案を全職員が共有しなければ、非常にややこしい事態に陥ってしまうおそれがあるのだ。
【教育計画に綴られた原案】
【主任が今年度に合わせた修正案】
【職員会議を経て出来上がった完成案】
「どうやって、最新かつ正確な情報を共有するか…。」と数男が思案していたところに明子が声をかける。
「職員会議が始まるから、会議室に案内するね。教育計画を忘れないでね。」
数男は、時計に目を向けた。時計は、8:40を指している。会議開始予定時刻より20分も早い。「この学校の会議室は、そんなに遠くにあるのか?」と訝しがりながら、数男は明子に従って、分厚いリングファイルをもって移動を始めた。春なのに冷え切った廊下を歩き、あっという間に辿り着いた会議室のドアを開けた数男の目に飛び込んできた光景は、想像を絶するものだった。