関数男物語〜その手で変えてごらん06〜
空き時間になると、数男は、早速、運動会計画の修正に取り掛かった。手順は、簡単だった。これもまた、以前、KitaChannelの動画で見た「置換テクニック」を使うだけだった。
まず、「高木」の語句を検索対象にし、「教頭」を置換後の語句に指定し、置換する。これは、もともと高木も運動会の役割を担当していたからだ。次に、「渡辺」を検索対象にし、「高木」を置換後の語句に指定して置換した。
もし、「渡辺」を先に「高木」に置換してしまうと、高木の役割が非常に多くなってしまい、さらに「高木」を「教頭」に置換してしまうと、元々、高木が担当していた役割も含めて全て教頭の役割になってしまう。「置換テクニック」を組み合わせて使う場合には、どの順番で置換するかは重要である。
修正した計画を教頭に提出した後、数男は、市内のサポートデスクに電話をかけた。このサポートデスクというのは、市内で校務に使われているPCやPCルームでのトラブルなどに対応してくれる窓口である。
全くの偶然だったのだが、このサポートデスクで主戦力として働いている流田という男は、数男の大学の後輩だった。間黒市に縁もゆかりもない数男には、これ以上ない心強い存在だった。
「電子掲示板として、Googleチャットを導入したいと思っているんだけど、可能かな?」
数男は、単刀直入に流田に質問した。すると、流田は、
「へぇ、関さん、また面白そうなことを思いついたんですね。」
などと軽口を叩きながら続けた。
「多分、可能です。僕の方で、市教委の方には話を通してみますが、一応、申請書出してもらえますか?その方が話が早い。準備の方は、水面下で進めておきますんで。」
校務で使用しているPCは、自治体のホワイトリストに登録されたアプリしか使えない。そのホワイトリストに新規でアプリを追加したい場合、使用目的を明確にするために申請を出さなければならない。
数男は、「了解」と言って、電話を切り、申請書を作成する前に、教頭に話をしておいた。
「朝の話ですが、Googleチャットを使おうと思います。サポートデスクの方では、導入可能とのことでした。一応、申請書を作成しなければならないのですが、話を進めてもいいでしょうか?」
数男の提案を佐々木教頭は、快く承諾した。そこからは、話は、とんとん拍子に進んだ。一週間後には、職員分のGoogleアカウントが作成され、Googleチャットを使えるようになっていたのだ。