研修医指導の際の心構え.02「安心感」

研修医指導を行う上で、安心感を持たせてあげることが大切だと思っている。これは、「自分で考えなくても手取り足取り教えてもらえるから安心」というものでも、「何をやっても研修医は守られるから安心」というものでもない。

私の研修施設は野戦病院というタイプではなく、必ず学年の近い上級医が上に付くいわゆる「屋根瓦方式」の教育スタイルであった。必ず上級医の目が入り、適切なフィードバックを受けられる。そういう意味では手厚い教育を受けてきたと思う。

私が初期研修医だったころ、絶大な支持を得ていた医師がいた。総合診療をベースとした感染症科医だった。この指導医は、いつ声をかけてもしっかりと研修医の話を聞いてくれる。どんなに忙しくても、話を聞かずに突っぱねることもない。感情の起伏がなく、ニュートラルであった。声をかけやすい雰囲気を作り出してくれていた。

何よりも、エビデンスとエキスパートオピニオンを、個々の患者に適応させることが非常にうまく、グレーゾーンな領域のマネージメントはいつも腑に落ちるものであった。ものすごくバランスの取れた医師であり、自分も研修医に対してこの医師のようでありたいと今でも思っている。

研修医の成長段階に応じて対応を使い分けなければならないが、基本的には自分で決断をくだすということをしなければ成長もせず、自信もつかない。だから、ある程度放任しなければならない。

ただ

「間違った方向に進んでいたら適切に軌道修正してくれる」
「自分の手に負えなくなったら、必ずサポートしてくれる」

このように思ってもらえなくてはならない。もちろん、患者さんが不利益を被ることのないように、ただ、研修医が最大限に実力を発揮できるように、微妙なバランスを維持していく必要がある。
ERで安全な診療が行われていくために、常に目を光らせておかなくてはならない。研修医の診療時の様子を担当看護師からも情報を得ておくことも、研修医の行動の「ウラ」を取る意味でも大切なことである。適度な距離感を保ちながらも、見守られている安心感を持ってもらえるような立ち居振る舞いが求められる。

ビクビクしながら診療を行うか、ノビノビと診療を行うか。どちらが好ましいかは言わずもがなである。

ノビノビと診療を行える安心感、雰囲気作りに努めなければならない。


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