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光とジオメトリー展 -美しき幾何学の世界-

美術と数学。一見遠くに位置するように思えるこの2つの分野が交わった時、私達の感性を震わす美しさを創り出していることを、皆さんはご存じでしょうか。

秋が深まるこの季節、金沢工業大学では「光とジオメトリー展」が開催されました。この展示の元となったのは、毎年しいのき迎賓館前で開催される「月見光路」というイベントです。月見光路では、本学の学生が学年・学科を超えて連携し、「あかりオブジェ」と「メディアデザイン」の融合によって、金沢の街を色彩豊かに染め上げています。そんな月見光路において制作された光のオブジェや構造体、プロジェクションマッピングといった制作物の中から、特に幾何学的な特徴を持つものが紹介された展示が「光とジオメトリー展」です。本投稿では、この展示について、展示の企画や実際に展示物制作に携わった方々のお話を交えて、ご紹介していきたいと思います。

会場は本学のライブラリーセンター1階の展示室。入ってすぐ広がるのは、展示物の放つ柔らかな光と、様々な形状をした白色の造形物。球体や三角錐、立方体といった幾何学が飾られています。幻想的な空間でありながら、どの幾何学もシンプルな造形をしており、どこかで見たことがあるような身近さを感じさせます。

展示物をいくつかピックアップして紹介してみましょう。まず、展示室手前に位置するこちらの立体物。雪見大福のようなフォルムをしていて可愛らしいです。プラスチック段ボールという素材が使用されており、よく見ると中央が窪んでいます。なんと、これは椅子として使用することが出来、柔らかそうな見た目に反して、耐久性がしっかりとあります。ここに人が座ることで、落ち着いた雰囲気の展示室は一変し、人々が談笑する活気あるコミュニティの場にガラリと変わります。

次に、プロジェクションマッピングが投影された一際目を引くこちらの多面体。コラージュのように繋がれたイメージや、鳥と木葉が舞う情景に、銀河のイメージまで。様々な模様に変化するこちらは、ドイツから本学に来ている交換留学生2名によって製作されたグラフィックです。

テーマは「Symmetry」。シンメトリーとは対称を意味し、鏡映対称性の他に、回転対象、線対称、点対称などがこれに当たります。グラフィックが投影されている立体物は、正十二面体です。正十二面体は、立体物の中で最も球体に近い多面体です。十二面全てが繋がるプロジェクションマッピングを投影する為、1つの正三角形の面に投影するイメージが、鏡映対称性を成すよう制作されています。思わず見入ってしまうこの展示物には、そんな理工学的な工夫が施されているそう。ちなみに、本学のロゴマークとドイツの大学のロゴマークも取り入れられており、両校のコラボレーションも表現されていました。

展示の空間構成についても注目してみましょう。小さな展示物は前方に、大きな展示物は後方に配置されており、全ての展示物の顔が見えるだけでなく、空間の奥行きが強調され、展示室が広く感じられました。展示物と什器の色合いや、照明の位置、光量もリンクするよう調整されており、まとまりのある空間が演出されていることが分かります。展示を企画したデザインアートラボ/五十嵐威暢アーカイブの学芸員の方によると、今回の展示では、本来「月見光路」において平坦な場所や、丘のある場所で展示されていたものを一部屋に纏めている為、統一感のある空間にすることが重要だったそう。また、「幾何学」や「多面体」を想像した時、教科書に載っているような無機質な図形が思い浮かべる方も多いと思いますが、ここにある展示物からは温かみを感じました。糸や木材を素材として用いることで見かけにランダムさが生まれ、それが視覚的な抑揚に繋がっているようです。

ここまで「光とジオメトリー展」のご紹介をしてきましたが、いかがでしたでしょう。造形に数学的な視点を盛り込むことで感性と理論が融合した美しさが実現し、見る者に新鮮な驚きをもたらします。私達の身近にある様々なものに、幾何学は沢山隠れています。日常に潜む幾何学を見つけることで、新たな観点から物を見ることを楽しめるかもしれません。
(本投稿は、学生スタッフによって執筆されました)

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