2024年10月
すこし冷たい空気の中を金木犀の甘い香りが漂う。ついに秋がやってきた。金木犀、甘い香りも好きだけれど、花の形も結構好きだ。小さい星の集まりのような可愛らしいオレンジ。街中を甘く染め上げたかと思えばいつの間にかふっと消えてしまうところもいい。
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大学時代の友人の結婚式に行った。湖の見える式場で、窓の外に広がる青が美しかった。よく晴れた日だった。幸せそうな友人の姿を見てこちらも幸せな気持ちになる。本当に楽しそうにケーキ入刀するふたりの姿、とてもよかった。末永く幸せでありますように。生まれて初めて結婚式というものに出席したけれど、なかなか楽しかった。ごはんもおいしかった。大学を卒業してから会えていなかった友人たちにも会えていい時間だった。
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結婚。私にとってはどこか遠いもののように思える。好きな人が毎日一緒にいたら楽しいだろうか、とぼんやり思うことはある。どうにも家庭を持つことがとてもおそろしく感じてしまう。私は母親にはなりたくないと思っているから、結婚はきっとできないだろうな、と心のどこかで思っている。だけれど、先のことはわからない。誰にも。
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新しい仕事。事務職をしている。毎日新しいことをたくさんインプットしていてそろそろパンクしそうだ。楽しいことも全くないわけじゃなくて、それがなんとか支えになっている。もう少し慣れれば楽になってくるだろうか。耳からの情報を処理するのが昔から苦手で、電話があんまり得意ではない。電話に出ている間にさっきまでやっていた作業内容があやふやになるときがある。この仕事、自分には向いていないのではないかと不安になる。まだ1ヶ月、これからなんとかなると信じたい。
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過去のことがつらくて、ひとりで抱えきれなくなって、ついにカウンセリングに行った。ロン毛気味ですこしあやしい風貌の先生だったけれど、話を聞き出すのがうまくて思ったより話すことができた。つらかったことを話すとき、スラスラ話しているけれど、そこに感情が伴っていない、と言われた。当時の気持ちを言語化して一緒に話すことで押し込めた気持ちの抜けがよくなるから、言語化を頑張ってみるといいと言われた。難しい。自分の気持ちに強烈なブレーキがかかっているし、まだうまく言葉で気持ちを表せない時代の出来事だから漠然と苦しいままに自分の中にあって、言語化するとなると自分の中でつっかえる感覚がある。カウンセリングは2時間で、後半になるとすこし気持ちが言葉にうまく出てくるようになった。たくさん泣いて、ハンドタオルがびしょびしょになった。月1ペースで通うつもりなので来月も頑張りたい。
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前の職場の仲良しだった人たちと飲み会をした。久しぶりにみんなに会えてうれしかった。何も変わらず楽しく語り合えて楽しい時間だった。同期も元気そうでよかった。今の仕事は中途入社だから同期はいないけれど、前職では本当に同期に支えられていたなと改めて実感している。昼休みに一緒にごはんを食べながら、もう帰りたいですね、と言い合う時間は本当に貴重だった。お互いに弱音を吐けるというのは大きかった。飲み会、私は隣の市まで電車で帰らないといけなくて、終電の都合で一足先に抜けることになった。ちょっとさみしかったけれど、きっとまた会えるのを楽しみにしている。
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恋人に、共依存にならないためにもわざと一歩距離を取っている、と言われた。助けられるものも助けられなくなるから、と。ずっと一歩だけ届かなくて、触れても触れても遠い気がして、それがずっと怖かった。不安だった。私は誰のいちばんにもなれないのだと思っていた。私がいることが負担なのではないかと恐ろしかった。本当は言わないつもりだったけど、寂しい思いをさせているのは知っていたし、きっとわかってくれると思ったから言うことにした、と打ち明けられた。驚いたけれど、これまでのことが腑に落ちた。いつかこの手を離されるんじゃないかと心のどこかでずっと怖かったけれど、こんなぐちゃぐちゃな私を本気で支えてくれようとしていることにびっくりしてしまった。
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支えてくれる人たちに対して私にできることは病気とうまく付き合って、できるだけよくなることなのだろうけど、それができるかわからない。やれる限り自分の足で立って歩いていきたいけれど、もしもどこか壊れたままでも、もとのようにうまく進めなかったとしても、それでも生きていくしかないと思った。生きていくのはこわいけれど、ひとりではないのだとわかったから、やっていくしかない。いつかした、死にたいって言わない約束、まだ守っている。